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第十八話 神と悪魔の力を持つ者

 「貴様ら……今度こそ終わらせてくれる! 私に全力を出させるのだ、誇りにおもうがいい! ラマック! 獣化だ!」


 「よかろう」

 みるみるうちに剣が大きな立髪を持つ翼の生えた獅子へと変わる。


 「おいおい、あの剣––––いや、魔獣も魔力量が半端じゃないな。エステラだけでもギリギリなのにそれと同じレベルがもう一体は流石にキツくないか?」

 空気が冷たくなり吹雪が舞い始める。エステラが魔力を極限まで解放したのだ。


 「さぁ、氷華よ。咲き誇りその棘で奴らを貫け! 氷華乱撃(バレットローズ)!」

 吹雪の中にその獅子にも劣らない大きさで咲き誇る氷の薔薇の何本もの棘が荒れ狂う吹雪を進達目指して突き進む。


 さらにそれに乗じて翼獅子(ラマック)も進達に仕掛ける。


 「獅子皇(リエードロード)の咆哮を味わうがいい。咆哮波(ハウルウェーブ)

 ラマックの超強力な咆哮が進達を襲い、回避ができず棘が刺さってしまう。


 「だめだ! 防御できる威力じゃないしこのままじゃ負ける!」

 進の足には棘が刺さり血が流れていた。

 リーゼやライカも同様、棘が当たり顔に傷ができたり刺さったりして痛々しい姿であった。


 「クッッ……これが悪魔の力……」

 リーゼが膝をつく。


 「ちょっと厳しいかも……」

 ライカも血が滲んだ腹部を抑え膝をつく。


 「2人とも! 次が来るぞ!」

 進はアドラメレクの力で自己再生をするが、この能力は他人に使う事ができないのでかなり厳しい状況なのだ。

 ポーションなど回復アイテムが入ってるバックにリーゼが手を伸ばそうとすると、

 バリンッ! という音と共にバックに棘が突き刺さりポーションを破壊される。


 「な!?」


 「さて、お前らの魂の味がもうすぐ楽しめそうだ。フフフフ、憑依(ディペンデンス)をしても良いのですがそれでは味気ない。ここまで戦った栄誉を称えて喰ってあげる! 氷華乱撃(バレットローズ)!」

 再び吹雪の中を突き進む棘が進達を襲う。


 「魔力障壁!」

 かなり魔力をすでに消費しているので最後の魔力障壁となるであろう魔力の壁を出現させる。

 しかし……


 「そんなもので止められると思うなニンゲンよ」

 さらにラマックまでも進達に突進する。


 「な!?」

 進の魔力障壁は軽々と破られラマックによる突進と氷の棘が直撃する。


 「グハッッ」


 進達はラマックの突進により吹き飛ばされ、氷の棘が刺さり、満身創痍といった状態だった。


 「マ……マジかよ……クッッ……」

 進の回復能力も魔力が底を尽きかけているため機能せず、痛みに耐えるしかない。

 リーゼとライカはすでに気を失っていた。起きていて痛みと苦痛に耐えるよりは良かったかもしれないが、今は敵前。それは致命的となる。


 「さぁ。チェックメイトだ。ニンゲン」


 「クソ!」


 考えるんだ! 考えろ! せめて2人だけでも逃すために!


 (クフフフ。魔力も底を尽きかけています。しかし魔力進化を行えばあるいは勝てるかもしれません)

 悪魔はいつも通りの不敵な笑い声で言う。


 (簡単に言ってくれるけどそんなのどうやればいいんだよ!)


 (クフフフ。もうすでに、この世界に貴方が降り立った時にから、そのピースは貴方の手の中にあります)


 (どうゆう事だ!)


 (クフフフ。私の口からはそこまでは言えませんねぇ)


 ああ! クソ! この悪魔肝心な時に使えねぇ!


 「残すはお前1人。どうするニンゲン。最後まで抗うか、服従するか」

 無論エステラは進が服従を選んでも殺すつもりだった。

 ただ気になったのだ。このニンゲンがどういう選択をとるのか。


 「服従? ハッ、笑わせてくれるな悪魔エステラ。お前如きに服従? 知ってるか? 人が人として、人と生きる意味を。俺はわからない。でもな、それを俺は昔から探していたんだ。だからわかる。それはお前に服従して得られるものではない、それだけは確かだ!」

 進は再び–––意志が、生がある限り何度でも立ち上がる。誓いを、覚悟を裏切らないために。 すると、進の両手から光が漏れる。


 「な、なんだこれ……力がみなぎる感じがする……」

 進が自分の手から漏れ出る神聖な光に戸惑っていると、目を覚ましたリーゼが痛みに耐えながら言う。


 「進、あなたは……洞窟の奥……から…出てきたでしょ……つまりそれは……あなたが神から……祭壇に授け……られた……神の使い…………クッッ」


 「リーゼ!」

 進はリーゼの元へ痛みなど忘れて駆け寄る。いや、もはや痛みは治癒してしまったのかもしれない。この神聖なる力によって。

 そして進がリーゼに触れると、みるみるうちにリーゼの傷が癒えていく。


 「これは……「「傷が癒えた!」」

 2人は目の前で起きた出来事に思わず声をあげる。


 「早くライカも!」


 「ああ」

 リーゼの隣で倒れているライカもかなりの重症だった。

 氷の棘が刺さり、血を流し倒れていた。


 進が触れるとみるみるうちに氷の棘が取れ、傷が塞がっていく。

 しかし失われた血は戻らないようだ。


 ライカは傷が癒えたものの、未だ目覚めてはいない。

 この回復能力も万能ではないのかもしれない。


 「よし。リーゼはライカの側にいてあげてくれ。俺はあの野郎をぶん殴ってくる」

 進の今までで一番真剣な顔を見ると一緒に戦うとは言い出せなかった。


 「ええ。ライカのことは任せといて」

 そう言うしかなかった。明らかに自分の今の力では足を引っ張るのは理解していたからだ。

 その無力さには覚えがあった。

 リーゼは小さな声で「死なないで」と囁く。


 その声は届いてはいなかったが、リーゼの過去を聴いている進はリーゼが無力さを感じてるのは感じていた。

 だから安心させるように言った。

 「絶対に生きて帰るよ、だから待っててくれ」


 そして、神の力と悪魔の力を持った者とエステラとの戦いは最終局面へと入る


 



ついにプロローグ回収です。覚えている人がいる事を祈ります。

次回もよろしくお願いします。

その内プロローグとか自分で読んでて読みにくいなと思ったので改稿します。

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