第十七話 魔力進化
遅くなってすみません
リーゼは考えていた。この悪魔、エステラの討伐を本当に進に任せていいのかと。
エステラは元々自分の村の住民だ。ならばそのけじめは自分がつけるべきなのではないかと。
それにリーゼにもエステラが格段と強化されたのは感じられた。おそらく今の自分では歯がたたないだろう。
今の『衝羅翼王』では到底エステラに傷一つ付けられないだろう。
だが、それとこれは話が別なのだ。無力さは戦わない理由にはならない。それを逃げる理由にするのはリーゼのプライドが許さない。
「なら……やるべき事は一つ」
リーゼは死ぬ覚悟で立ち上がりエステラへ剣を向ける。
「あら? あなた如きの人間が私に剣を向けるの? 相手の強さもわからないのかしら? まぁいいわ。一瞬で片付けてあげる」
エステラがリーゼを向く。
「リーゼ! 下がってるんだ! こいつ……俺でも勝てるかどうか……」
「わかってる。私には歯がたたないかもしれない。でも、それは戦わない理由にはならない。この戦いから私が逃げるのは、悪魔から逃げていては、私が冒険者をしている意味がない。それに……私達は仲間でしょう? 一緒に戦うのは当たり前じゃない」
「リーゼ……」
「私も、怖気付いてるわけにはいかない。約束したんだもん」
「ライカ……そうだな。ここを乗り切ってデモゴルゴン討伐の足掛かりにするぞ!」
「デモゴルゴン様の討伐? あなた達で彼の方に勝てるとでも?」
「そうだな。確かに今のままじゃ厳しいかもしれないな。だからお前は俺達の強化素材になってもらう!」
「フン、自分達の愚かさを知るがいい。貫通銃撃」
全てを貫通する無数の弾丸が進達を襲う
(フフフフフ。直接魔力で壁を作れば防御できるでしょう。こんな豆粒、どうということもありません)
「魔力障壁!」
進が大規模な魔力の壁を生成しリーゼとライカも含めて防御する。
「な!? この貫通銃撃は全てを貫通するはず!」
「確かに物理的なものだったら何もかも貫通するかもしれないが、濃い魔力で作られたこの魔力の壁なら防御は可能だ」
まぁアドラメレクに言われた通りにやっただけなんだけどね。
「本当に鬱陶しいニンゲンどもめ……だがこれならどうだ! いでよ! 翼獅子!」
エステラが右手を横へ伸ばすとどこからか引き寄せた一振りの剣がエステラの手に収められる。
「シャルル––––いや、ラマック。このニンゲンどもを殲滅する。力を貸せ」
エステラが剣に話しかけると
「いいだろう。我が力、使うが良い」
なんと剣が喋ったのだ。
「剣が喋った!」
ライカが物欲しそうな眼差しを向ける。
緊張感なさすぎじゃないか?
(クフフフフ、あの剣は古の時代からある獣魔の剣ですね。獣化する事で自分自身で戦う事ができる聖剣級の剣です。クフフフフ、強そうですねぇ)
(つまり剣自身に意志があって自分を獣化する事で戦うこともできるってことか? 強すぎじゃね?)
(クフフフ、しかし弱点もあります。この剣は契約を結ぶ事で真の力を発揮しています。つまるところ剣にダメージが入ればエステラにダメージが入ります。逆も然り、エステラがダメージを追えば剣もダメージを負います)
(なるほどな)
あとはどれほどエステラが使いこなしてくるか……
「リーゼ、ライカ、あの剣は意志を持つ剣だ。しかもあの剣は獣化して戦うこともできる聖剣級の剣だ。用心しておこう」
「「わかった」」
「博識ですこと。そう––––この剣は古の時から生きる獣。それが剣となりなお意志を持つ聖剣級の武器。その剣も聖剣級みたいだけど、果たしてどちらが強いのかしら」
進の剣を見て、含み笑いと共に指をさす。
「のぞむところだ–––悪魔エステラ! いくぞ! リーゼ、ライカ!」
「ええ、殺す! エステラァ!」
「いっくよー! 私の双短剣で切り裂いてあげる!」
3人はエステラ目掛けて突き進む。
「愚かな。進化した私を殺す? 笑わせてくれる。ラマック!」
「ふむ。蹴散らしてくれよう。破壊の豊穣」
ラマックの刀身から禍々しい魔力が溢れ出て、それが衝撃派となり進達を劈く。
「魔力障壁で突っ走るぞ!」
「「了解!」」
魔力障壁で破壊の豊穣をなんとか防ぎつつエステラに斬りかかる。
「くらえ! 連闇ノ舞!!!」
「穿て! 風操縦剣改!」
リーゼの風操縦剣改は無数の剣を暴風の力でエステラへ放つ。
「チッ! 貫通銃撃!」
なんとかエステラは貫通銃撃で防衛する。
「クソ! あれをやられると防御に切り替えなくちゃいけなくなるから厄介だな」
進は苛立ちげに吐き捨てる。
「そうね。正面突破は厳しいかもしれないわね」
あれ? そういえばライカは一体–––
「暗殺」
ライカがいきなりエステラに背後に現れ首を狙う。
「クッッ! 氷槍銃撃!」
エステラギリギリ反応して避けながら反撃をする。
ライカもバックステップで回避する。
「うーん。流石に一筋縄ではいかないかー」
ライカは悔しそうに呟く。
いやライカさん怖いっす! 何地味に背後から首かき切ろうとしてんの!? マジこっわ!
「次は絶対当てるからね!」
「あ、うん。ガンバッテネ」
衝撃過ぎて思わず棒読みになってしまった。
「小娘が……!」
エステラが激昂している。
そして戦いはさらに激しさを増す。
次回もよろしくお願いします




