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第十三話 シングルベッド


 フィンドルフ王国 王都 レイル家



 「さて、どうしたものか」

 現レイル家当主トーラス=レイルは進達が帰ったあと、頭を悩ませていた。

 この件は慎重に扱う必要がある。

 協力と言っていろいろいってしまったが、簡単なことではないのだ。支援はできるのだが、王に許可も貰わずに街を開拓など、他の貴族の反感を買う可能性もある。

 「エイル。いるか?」


 「はい。ここに」

 ドアの向こうから返事が聞こえたのを確認して指示を出す。


 「このことがバレぬよう、他の貴族の動向をより注意深く探るのだ。何かあれば些細なことでもいいから報告するように」


 「はい。かしこまりました」

 そういうとエイルは直ぐに任務を遂行しに向かう。


 「まぁ、全面戦争さえ避けられればいいのだがな。これは一筋縄ではいかなそうだ」

 明日は具体的にどうやって支援するかなどを話し合うことになるだろうが。

 この支援においてこちらのメリットは亜人保護施設の新創設による亜人差別反対派の勢力増強。デメリットとしては、これが亜人差別派にバレれば間違いなくマズいことになる。しかし行動を起こさなければジリ貧だ。

 亜人差別反対派は王族貴族のアンバス家、ドルフ家と伯爵家のクルト家、子爵家のルドルフ家、ラーズロイド家、サンドラ家、ロイル男爵のみ。圧倒的に数も少なく、正直できることなど少ないのだ。

 亜人差別派は亜人の売買。それによる他国との繋がりもあり、このままでは国が崩壊しかねない。


 王子らは皆、次期王となるのに裏工作に必死なうえ第三王子以外亜人差別派である。そんな中、もうこの支援にすがるしかないのだ。あの近藤進という青年に。ならば信じよう。どこの馬の骨ともしれぬ青年を。リーゼを。そしてライカを。それで救われるのなら。


 そしてトーラス=レイルは1人決心をする。



 フィンドルフ王国 宿にて


 「はあ!? 宿が一部屋しかないだと!」

 進とリーゼとライカは宿を取るため城下町の宿に来ていた。


 「申し訳ありません。現在空いている部屋がシングルの一部屋しかないんです」

 進は絶望した。まぁ最悪の場合俺は野宿でもいい。だが女子2人は泊まらせよう。


 「そうゆうことなら俺は野宿でも構わないよ。2人は泊まっていきな。他の宿も空いてないし」


 「いやそうゆう訳にはいかないわ。しょうがないからここにしましょう」


 え? え? リーゼさん今なんて?


 「いやいやそれはマズイだろう! いくらなんでもシングルだぞ!?」

 こいつらちょっとは警戒しろよ!


 「でも仕方ないじゃん。野宿は嫌でしょ?」

 ライカも納得しているようだ。


 「ではご案内しますね」

 そして店員が階段の方へ歩き始める。


 「いやいやいや! ちょっと待て待て待て!」


 「なによ?」

 リーゼが早くしてと言わんばかりの口調で言ってくる。


 「いやだって、おかしいでしょ。シングルで男女冒険者が泊まるなんて」


 「まぁあまりないけどいいじゃない。野宿がしたいならいいけど」

 ぷいと言ってリーゼは店員についていく。


 わかったよ! 行けばいいんだろ!

 大丈夫だ。今夜だけだ。今夜だけ乗り切ればいい。


 そうしてライカに続き進も階段へと足を伸ばす。



 2時間後





 い、息が! 息が近い!


 3人はシングルベッドでライカ進リーゼの順で並んで寝ている。

 進は仰向けで寝ているのだが、何せシングルベッドで両腕に花状態。眠れるわけもなく、鼓動が常にバックバクだ。それが伝わらないようなんとか抑えてはいるが、これでは一睡もできない。というかよくこの状況で堂々と寝れるよなこの2人……

 寝返りをして進の腕を掴むライカとリーゼ。


 なんだか両腕にすごく柔らかい感触があるな。


 吐息がかかる距離ですやすやと寝ている2人。

 すると

 「す、進ぅ……」


 な、なんだ。寝言か。

 ライカはどうやら夢の中で俺と会っているようだ。

 すぅ、すぅという寝息が進の耳にあたりすごくムズムズする。


 クッ、耐えるんだ! 彼女いない歴=年齢の俺ならこの苦境も乗り越えられるはずだ! しかも実戦使用する前に悪魔になっちまったし……悪魔って子孫残すのかな……


 途端に悲しくなってくる。

 そして両腕でですやすやと寝ているこの鬼畜どもに怒りが湧いてくる。

 こんな試練が転移先で待っているとは……

 最高というべきか何というか。とにかく眠るんだ。眠りにつけば目覚めれば朝だ! 朝になれば救われるはず!


 そして進は精神統一に入る。

 寝息と柔らかいものに気をとられるな!


 精神統一だ。眠りに集中しろ!

 アドラメレクが1人。アドラメレクが2人。アドラメレクが3人。アドラメレクが4人……いやアドラメレクの容姿がイマイチわからないんだが。


 うーん。そうだな。

 アークロザリオが1匹。アークロザリオが2匹。アークロザリオが3匹。アークロザリオが……



 う、うん? 明るいな……朝か。


 そして起きようとすると両腕には装備を脱いだ服がはだけた美少女が2人いた。


 「わぁ!」


 思わず叫んでしまった。いや仕方ないだろう。この状況はびっくりするよ。


 「ん……んん。進?」

 ライカが今ので目を覚ましたようだ。


 「って進! ってきゃあ! あっち向いて!」


 「はい!」

 ライカが勢いで魔法を打とうとしたので慌てて後ろを向く。


 「ん? どうしたのライカ……あ、進おはよう」

 リーゼもお目覚めになったようだ。


 「お、おはようリーゼ。とりあえずまずは着替えようぜ。な?」


 リーゼは自分の状況を見て状況整理をする。

 そして事態に気づき顔を赤くし、


 「この悪魔! 絶対殺す!」

 と言い剣に手を伸ばそうとする。


 「待て待て待て! だから言っただろ! こうなるのは予想がついただろ! 自分達は昨日は乗り気だったくせにない言ってんだ!」

 どう考えても理不尽すぎる状況に進は怒りをあらわにする。


 「最低! 変態! 死ね!」

 そう言いながら進に殴りかかるリーゼ。


 「待てリーゼ! そのまま殴りかかったらマズイ!」

 しかし時すでに遅し。


 左肩がしっかりかかっていなかった服がずれ、リーゼの胸が見えてしまう。


 「お、俺は悪くないからな! どう考えても俺は悪くないぞ! 着替えろって言ったからな!」

 後ろを向いてキレイな胸だったなーなんて一ミリも考えずに進は叫ぶ。


 ゴゴゴゴゴゴゴォと聴こえてきそうな雰囲気を出すリーゼ。

 そして顔を真っ赤にして……


 「ほんとに死ねぇ!」


 鉄拳が進の後頭部に突き刺さる。


 「なんデェ!」

 半ば泣きそうになりながら今日は朝から最悪なのか最高なのか真剣に考える進であった。

次回もよろしくお願いします。

感想頂けると幸いです。

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