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ぷにぷに プニルー!

食事に向かう廊下の途中で、向こうからトテトテと言うリズミカルな音が聞こえてきたので、思わず私は走り出した。


「お嬢様!走ってはいけません!」



「プニルーーー!!」



「クゥン!」




リサから止められるも私の足は止まらない!

いや、止めるわけにはいかんっ!



ガバッ!っと私が抱きついて首もとに顔を埋めてモフモフと高速スリスリを繰り返しているのは、狼のプニル!


グレーのサラサラの毛並みに優しげな瞳と、プニップニの肉球と言う最強の武器を持ち合わせている、とんでもなくプリチーで美人さんな狼なのよ!!


この子のモフモフを目の前にして走らずにおれますか!


プニルは『仕方のない子ね』とでも言いたげな、聖母のような眼差しで私のされるがままになっている。



プニルとの出会いは私がまだ5歳くらいの時、お父様が森で衰弱してた子どもの狼、後のプニルを我が家に連れ帰ってきたの。


初めは本当に衰弱して痩せ細り、毛も土や血で汚れてた。

お父様によると、プニルの両親はプニルが見つかった近くで他の動物に襲われて亡くなっていたそう。

プニルはたまたま窪みに落ちて難を逃れたんだろうとの事だった。

こんなに小さいのに独りぼっちになってしまったなんて、考えただけで辛くて私が泣いてしまった。


「おおかみさんっ。アリスがずっとそばにいるよ!

ずっとずっとそばにいるからね!」


「…。」


「大丈夫だからね!」


少し目を開けたプニルはすぐに寝てしまったけど、私は心配でみんなに我が儘を言ってプニルの側で寝させてもらった。


その後、獣医さんのお陰で徐々に元気になっていったプニルはどんどん大きくなり、それからずっとリネンブルク家で過ごしている。


私が高速スリスリから肉球へ手を伸ばそうとしていると、体が浮き上がりいつの間にか腕に抱えられていた。


「私のお姫様。そんなに走らなくてもプニルは逃げないよ。」

「くすくす。本当にアリスはお転婆さんなんだから。」


「お父様!お母様!」



私を抱き上げたのはリネンブルク家当主


ルークス・リネンブルク


シルバーブロンド髪色で切れ長の瞳、

ダークブルーの瞳は深い海のようで見つめれると吸い込まれそうになる。

昔お父様はとにかく無表情だったそうで、社交界では氷の貴公子と呼ばれていたんだんだって。


お母様に出会ってからは笑顔も増えて、家族の前ではいつも優しく微笑んでいる。

今でも外に出ると無表情らしいけど、私たちの前では優しいお父様なので今いちピンと来ていない。



そして、その隣で微笑んでいるのがお母様


マリー・リネンブルク


社交界の妖精姫と言われたお母様は、薄いミルクティー色の髪にグリーンクォーツの様な瞳の色。

とっても優しくて微笑むとほんとに妖精さんみたいなの!

私の髪色はお父様だけど、瞳の色や顔立ちは完全にお母様似だと思う。



「おはよう。良く眠れたかい?」


「っ!…おはようございます。お父様、お母様。

とっても良く眠れました。」



とっても良く眠れたどころか前世まで思い出しました。

そして、お父様っ!

娘の私が言うのも何だけど、お父様のフェロモンが駄々漏れている…。


前世でイケメン耐性のない私には刺激が強すぎるっ!抱き上げられてるせいで超至近距離でフェロモンを浴びてしまった私は、先程から何とか手の甲をつねる事で正気を保っていた。



ハヤクオロシテ…オトウサマ。



「おはようアリスちゃん。朝から元気ね~!でも急に走り出したらダメよ?」


「1秒でも早くプニルにモフモフしたかったの。」



「プニルは可愛いものね~。でもねアリスちゃん、お屋敷ではたくさんの人がお仕事してるのよ?その人達にぶつかってしまったらお仕事の邪魔になってしまうし、何よりアリスちゃんも危ないのよ?走るならお庭で走りましょうね?」


お母様の言う通り、みんなのお仕事の邪魔しちゃダメだわ!

プニルを見るとついつい走り出しちゃうのよね~。

反省反省。



「はい!ごめんなさい、お母様。」


「分かってくれたらいいのよ。アリスちゃんの元気な姿を見るのはお母様大好きだから、嬉しいの。」


「きゅん!」



「口に出てますよ、お嬢様。奥様、私がついていながら、申し訳ございません!」


おっと、きゅん が口から飛び出していたみたいね!

きゅん を空気と一緒に飲み込んでいると、後ろに控えていたリサがお母様に頭を下げていた。


「リサは良くやってくれているわ!アリスちゃんはお転婆だけど、これからも宜しくお願いね。」


お母様はリサの手をとり、優しく包み込んだ。



「奥様っ!ありがとうございます!」



「ふふっ。さぁ、朝御飯を食べに行きましょう♪」



お母様の声と共にみんな歩きだそうとしたので、

私はお父様に下ろしてもらうように声をかけた。



「あの…お父様、私もう歩けるよ?」


「…。さぁ、行こうか。(ニコッ)」


「くっ!」


華麗にスルーされたわ!

そして、笑顔のカウンター!


もういい。


もういいの。


私の手の甲は限界だけど、

お父様の笑顔は



プライスレスだからっ!!(涙)







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