ポカンとしました
私とお兄様がリサに1歩近づくと、制服を大事そうに抱えたリサが1歩後ずさる を何度か繰り返し。とうとうリサは壁際に追い詰められていた。
「さぁ、制服を渡すんだ。」
お兄様がリサに手を伸ばした。
いよいよクライマックスね!
きっと、リサの後ろは壁ではなく断崖絶壁に違いない!
さぁ、ドラマだとここから犯人の自白シーンよ!
すると追い詰められたリサは、ワナワナと震えながら叫んだ。
「これはアリスお嬢様に絶対に、絶っっっ対に着て頂くのですーーー!!着飾ったお嬢様を学園に送り出すのが、わ…たっくしの…うっく…私の……夢なのですーーーー!!!」
「「…えっ?」」
「アリスお嬢様は王国一、いえっ世界一可愛いのですっ!そんなお嬢様は学園一可愛い制服を着て、学園に通わなくてはならないのです!!そして、そのお支度をするのが…私のっ…夢なのですーーーーーーーーー!!!!」
ポカーン…。
そう、お兄様と私は今公爵家にあるまじき顔でポカーンとしていた。
「お願いでございますっ!どうかアリスお嬢様にこの制服をっ…。」
私は思わずリサに駆け寄り、抱き締めていた。
「リサ!ありがとう!そんなに私の事を思ってくれていたのね!」
「アリスお嬢様っ!!」
私達は大いに抱き締めあった。
リサ…あなた、私のこと大好きなのね!
うん、まぁ知ってだけどね!
すると、ポカーンから戻ってきたお兄様がリサの肩に手を置いた。
「リサ、君の気持ちは分かったよ。私もアリスが世界一可愛いと言うことには同意だ。」
お兄様も!?
「だけどね、アリスには幸せな学園生活を送ってもらいたんだよ。確かにこの制服を着たアリスは可愛いだろう!皆に見せたい気持ちもわかる。」
「でしたらっ!」
すがるように見つめるリサにお兄様は緩く首を振った。
「リサ、ただでさえ可愛いのに、こんなものを着ていたら、アリスが…アリスが学園にいる狼どもの餌食になってしまうではないか!!!!!」
抱き締めているリサから「はっ!」と息を飲む声が聞こえた。
「…お兄様?それが理由ですか?」
「当たり前だ!アリス、学園はこことは違うんだ。僕や、父上がいつも側にいられる訳ではないんだよ?もちろん学園内の警備は整っているが、隙と言うのはどこにでも生まれるものだ。油断はできないよ。」
「お兄様、そんなに心配せずとも公爵家の者に害をなす方など、そうはいないと思うのですが…。」
「いいや!外の世界に出れば、頭のおかしい輩はどこにでもいる!アリスにはまだ分からないかもしれないけれど、用心に越したことはないんだ!」
いやいや、確かに私も自分の顔可愛いと思うけど!(また自分で言った!)
この世界の人って美男美女率高そうだし(私の記憶調べだけど)、私が特別って訳ではないと思うの。
お兄様ってこんなに過保護だったかしら?
記憶を辿っても可愛がられてはいるけど、ここまででは無かったような…ナゼ?
学園では普通に過ごしたいけど、お兄様が仰ったような理由なら、制服を直さなくても良いのでは?
制服可愛い方がいいし!
そう思った私は、リサに同意を求めた。
「…お兄様のお気持ちは嬉しいのですが、心配し過ぎではないでしょうか?リサもそう思うでしょう?」
「私が浅はかでございましたーーーーーーーーー!!! 」
えぇーっ!!
「リサ!?」
貴方さっきまでその制服を着て欲しがっていたじゃないの!
「ユリウスお坊っちゃま!私が間違っておりました!私の欲ぼ…コホンッ、夢のためにお嬢様を危険に晒す所でございました!!ご無礼の数々、大変申し訳ございませんでした!!!」
そう言うと、リサは勢い良くお兄様に頭を下げた。
「リサ、分かってくれて嬉しいよ!さぁ、明日までにこの制服を直してくれるね?」
「はいっ!もちろんでございます!ですが…1つお願いがございます。」
「なんだい?」
「この制服を直す前に、アリスお嬢様に1度着て頂きたいのです!その姿を目にしっかり焼き付けたいのです!」
「おぉっ!それはよい考えだな!父上はまだ屋敷を出ていない時間だし、父上と母上にも見ていただこう!僕は二人に伝えてくるから、リサは支度を頼む。」
「承知いたしました!!」
「えっ、待って!お兄様!」
引き止める私の言葉は見事に二人にスルーされ、お兄様は颯爽と部屋を出ていった。
「さっ、お嬢様お着替えくださいませ!」
そこには満面の笑みを浮かべたリサと、能面のような顔をした私だけが残った。
「…はい。」
もうこれは…お母様に頼むしかない!!
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す
アリス「はよ、王子さまに会わせんかい!」
詩音「ごめん、もうちょい待って」