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異世界でTSしてメイドやってます  作者: 唯乃なない
第3章 元の世界に帰れる方法?
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ダニエルは本気で危険

 翌日、マリーさんと一緒にダニエルの家まで行った。

 ダニエルが話しかけてきたが、適当に流し、とにかくマリーさんの手伝いを買って出た。

 昨日は厨房に入れてくれなかったが、今日は厨房に入れてくれた。


 それにしても、なんで休みのはずなのにこんな仕事ばかりしないといけないのか。


「マリーさん、戸棚の上は掃除しておきました」


「あらあら、ありがとうございます。なかなか手が回らない物だから助かりますわ」


 マリーおばさんはニコニコだ。

 ま、これならやった甲斐があるという物だ。


「他にはなにかありますか?」


「もう結構ですよ。いくらなんでもお客様にそこまで仕事をさせられません」


 いや、俺はもっと仕事をしてダニエルに近づかないようにしたい。


「そこをなんとか……」


「よいですよ。居間に居てください」


「そ……そうですか」


 細々とした用事をこなしていたが、これ以上仕事を与えてくれなさそうだ。


 仕方なく、居間の方に行く。


 すると、ダニエルが不機嫌そうに新聞のような物をペラペラめくっていた。


「おぉ、ようやく終わったか。客なんだから、そんな手伝いなんてしなくていいって言っただろ」


 ダニエルがここに座れと、手招きする。


「ま、まぁ、それはそうなんですが……なんとなく……」


 うわー、近づきたくないなー。

 何されるんだ。


 でも、あまり露骨に拒否できない。


 仕方なく、ダニエルの横に座る。


「うー……」


 うわー、なんか緊張する。


「おい、どうした?」


 ダニエルが俺を見た。


「な、なにがですか?」


「なにがですか、じゃないだろ。なんで女言葉を使っているんだ?」


「ん? あぁ……マリーさんと話をしていたので女言葉を使っていたんですよ」


「男言葉に戻したらどうだ?」


 そう言われるとそうだ。

 だが、久しぶりに男言葉を使いすぎたせいか、なんだか女言葉が懐かしく感じられる。


「いや……今の感じが落ち着くので、このままで行こうと思います」


「なんだよ、つれないな」


 ダニエルがそんな事を言いつつも、手を伸ばしてくる。


「え……」


 そして、俺の肩に手を回した。


「いや、ちょ……」


 ダニエルが俺を抱き寄せる。


「な、何考えてるんですか!? マリーさんが居るんですよ」


「マリーなんか気にするなよ。しかし、なるほど女言葉を使っているとちょっと雰囲気違うな。これはこれで……」


 ダニエルが面白そうにつぶやく。


「は、はぁ!? 何言ってるんですか。離してくださいよっ」


 ダニエルの手の振りほどこうとすると、逆に余計引き寄せられた。


「ひっ……」


 思わず声が出る。

 絶対に抵抗できない力強さを感じて、一瞬怖くなる。


「ほほお、これはこれで楽しいな。なるほど、一人で二度おいしいとはお得だな」


「な、なに、訳わかんないことを言ってるんですか!?」


「ちくしょう、アルフォンスのやつ、うらやましいぜ」


 そんなことを言いながらも、ダニエルは俺の肩を離さない。


 な、な、なんだこの状況!?


「そういえば、お前、この身体になってから敏感になったとか言っていたな」


「え、えぇ、そうですよ。だから、変なことしないでください」


 肩にあるダニエルの手を掴もうとして手を伸ばした。

 すると、ダニエルが空いている手で俺の腕を掴んだ。


「ひゃっ……な、なんですか」


「お前、今日帰る気だろ?」


「そ、そうですよ、それがなにか!?」


 腕を掴まれたまま、心細い心境で言い返す。


「なら、帰る前にもうちょっと遊ばせろよ」


「はぁ!?」


 やっぱりギュスターヴの同類だ。


 よくこんなことができる。


「は、離してください……」


「へぇ、なるほどねぇ。普通に女っぽいな。ところで、どこが一番敏感なんだ?」


 ダニエルが普通のノリで聞いてくる。


「あ、あの、言うわけ無いでしょう! 悪乗りしすぎです」


 と、ダニエルをにらみつける。


 身体をペタペタ無防備に触れるだけでも結構危険なんだ。

 これ以上いじられたらやばすぎる。


「ほお、ってことは普通にここか?」


 と、ダニエルが俺の手を掴んだまま、俺の胸に持ってくる。


 な!?

 こいつ……


「違いますよ! ってか、いい加減離してくださいって!」


 あまり機嫌を損ねないように抑えた言い方をしていたが、俺はついに本気で声を荒げた。


 これだけ本気で言えば、さすがに手を離すだろう。


「まぁまぁ、いいじゃないか」


 しかし、ダニエルは一向に動じない。


 え……う、嘘だろ?!


「あ……あぅ……」


 肩を掴まれ、腕も掴まれている。

 本気で言っても聞いてもらえない。


 やば……怖い……


「おい、どうした、そんな顔をして。なるほど、これもいいな」


 ダニエルが小さく笑う。


「う、腕と肩を離してください」


「それは嫌だねぇ。そいつはつまらん」


 ダニエルがしたり顔で言う。


 こういうことはしたくなかったが、仕方ない。

 俺は息を吸った。


「マリーさん! ちょっと来てください!」


 しかし、返事が無い。


「え……」


「マリーは料理してると声をかけても気がつかないんだよ。どうも耳が少し遠いらしくてな」


 なんだそれは。


「と、とにかく、手を離して!」


「おいおい、ヒステリックだな。ただの冗談だろうが」


 ダニエルが笑う。

 しかし、目が笑ってない。


「今昼間ですよ!?」


「だから、変なことはしてないだろう。ただの冗談だ」


 どこが!?

 どう考えても立派なセクハラなんだけど!?


「で、どこが敏感だって?」


 ダニエルが視線を下に向ける。

 その視線をたどっていくと、俺の股間だ。


「な!? 馬鹿! 違うよ! 背中!」


 わっ、しまった!


 アホかよ、俺!


「背中? ほお……」


 ダニエルが肩から手を離した。

 

 よし、今だ!


 と逃げようとしたが、いきなり腕を掴まれてダニエルに引き寄せられた。


 いつの間にか、ダニエルの膝の上に座る体勢になっていた。


 は!?

 なんだこれ!?


「な、なにする……」


 言いかけたところで、背中にべたっと手のひらが当たる感覚が。


「あ……」


 そして、その手のひらが背中をぞわぞわっと移動していく。


「ひぃ……い……いひぃ……」


 耐えられないぞわぞわ感が広がり、目の間に何かに抱きついた。

 目をつむって、刺激をやり過ごそうとする。


 しかし、また手のひらが背中を移動した。


「いひゃぁっ! も、もう……やめっ……」


「おいおい……こりゃやばいな」


 ダニエルの冷静な声が聞こえてくる。


 ん?


 目を開けると、俺が抱きついているのはダニエルだった。


「うわっ」


 ダニエルの手の動きが止まった間に、ダニエルから離れた。


 少し離れたソファに座り込む。


 まだ体中がぞわぞわする。


「な、なにすんですか!?」


「いや……まさか、そんな敏感とは思わなくてよ」


 ダニエルが感心したような顔で俺を見る。


「も、もう分かりましたよね! もういいでしょう!」


「めちゃくちゃエロいな。もうちょっとやらせろよ」


 ダニエルが半笑いでにじり寄ってくる。


「ば、馬鹿! これ以上やると、ビジネスパートナーを無くしますよ!」


「おいおい、他の世界から来たっていう事を信じて、自分の金やらコネを使ってまで協力してくれるやつがそうそういると思うか? 言っておくが、俺もギュスターヴもそこそこの人材だぞ。お前は俺たちを捨てられるのか?」


 ダニエルがニヤニヤ笑いで結局俺の横にまで移動してきてしまった。


 たしかに、ダニエルもギュスターヴもそれなりに頭が切れるし、頼りがいがある。

 しかし、サロンでの評判を見るに、他の世界からやってきたというネームバリューがあれば他の協力者も得られないことも無いだろう。


 頼ろうと思っていたが、こんなに下半身に忠実な男なら切った方がいいかもしれない。


 その思いのこもった視線を感じたのか、ダニエルが表情を変えた。


「おい、本気で取るなよ。一緒に成り上がろうって言っただろ」


「だからって、無理矢理掴んだり触ったりしますか?」


 非難の目を向けると、ちょっと我に返ったらしく、ダニエルが頭をかいた。


「あぁ、そうか、そんなに嫌だったのか。もっと軽く考えていたんだが……」


 その言葉に嘘偽りは感じられない。


「あのですね……。何度も言いますが、こっちはこの身体なんですよ!? その体格差で欲望丸出しで迫られたら怖いに決まってるじゃ無いですか!」


「俺は別に襲おうとか思ってないぞ。ちょっといじって遊ぼうとしただけで……」


「それを襲うと言うんです!」


 ダニエルをにらみつけると、ダニエルが気まずそうな顔をした。


「わ、悪かったな。中身が男だから悪乗りしても冗談で済むと思ったんだ。なにしろ、お前の仕草がかわいすぎてな……」


「かわいい!?」


 体中に衝撃が走った。


 脳内麻薬が一気に放出されて、気持ちがふわふわして、世界中が俺を祝福し、ダニエルがすごく格好良く見えてくる。


 あわわわ!!

 やばいやばい!


「な、なななな、いきなり何を言うんですか!? この馬鹿!」


「ん? なにが?」


 ダニエルが分かってない顔をする。


 ち、ちくしょう!

 そんな顔ですら魅力的に見える。


 ぬおぉぉぉ! やばいやばい!

 混在モードはやっぱり危ない!


「お、落ち着け……落ち着け……落ち着くんだ、俺」


 息を整えて、男言葉に変える。


 大丈夫だ。大丈夫。


 俺は男……俺は男……。


 だんだんと動悸が収まってきた。


「あ、危ない……おい、ダニエル! いきなり、変なことをいうんじゃねぇ!」


 荒い言葉を投げつけると、ダニエルは一瞬あっけにとられた顔をした。


「ん……おお、男言葉か。やはり、アリスはオレっ娘が合うな!」


「うるせぇ、このくそぼけなす男! 曲がりなりにも女の子の身体の人間相手に遠慮無く触るんじゃねぇよ! 死にさらせ!」


 テンションに任せて暴言を吐くと、ダニエルが胸元を押さえた。


「そう……そうだ。オレっ娘ってのはそうじゃないとな。俺が子供の時に会ったオレっ娘もそんな風に荒い話し方だった……」


 やばい、興奮してやがる。

 やっぱりこいつ、ギュスターヴの同類だ。

 なんでアルフォンスはこんなやつと親友なんだ。


「お、落ち着け。頼むから落ち着いてくれ」


 そう言うと、ダニエルがようやく真面目な顔になった。


「あ、あのなぁ、うっかり混在モードで接したのがまずかったかもしれないけど……あれは止めてくれ。この身体敏感だから、冗談が冗談じゃ済まなくなるんだよ」


「あー……そうか、ちと悪乗りが過ぎたか」


 ダニエルが曖昧な顔で頷いた。


「ってか、また変なことしたら本気でビジネスパートナー解消するからな」


「おいおい、そりゃないだろ?」


 ダニエルが苦笑しながら俺を見る。


「いや、本気だ。本当は女扱いしろとか言いたくないけど、ダニエルとギュスターブについては俺を女扱いしてくれないと本気で困る。元男だろと冗談交じりでこの身体相手に変な下心を発揮されたら、俺が無理」


「ん……そうか。そいつは悪かったな。ったく、アルフォンスのやつ……」


 ダニエルがぶつぶつつぶやいた。


「はぁ……」


 ため息を吐いた。


 あーもー、なんでこんな身体になったのか。

 普通に女になっただけなら、ダニエルのセクハラも余裕であしらってうまく対応できただろう。

 しかし、この敏感な身体では、セクハラに100%素直に反応してしまう。


「まぁ……なんか変なタイミングになっちゃったけど、俺はこれで帰るから」


 そう言うと、ダニエルが顔を上げた。


「おいおい、そりゃないだろ。もうちょっと寄っていけよ」


「ここに居ると危ないから!」


「む……」


 ダニエルが口をつぐむ。


「とにかく、もう一人では来ないようにするよ。ダニエルって見た目より危ないって分かったから」


「おい、俺は危なくない」


「俺にとっては危ないの!」


 今度はマリーとか誰か連れてこよう。


 ん……このセクハラ男にマリーを会わせるのも危険か。


 誰を同行させればいいだろうか。


 ま……それはまた今度考えよう。


「まぁ……今回のことは大目に見るけどさ。次やったらマジで切れるから」


「分かったよ。俺もちょっと強引だったか……」


 ダニエルが顔を背ける。


「で、どうする? ギュスターヴが協力者を探してくれるんだよな?」


「ん、あぁ、そうだ。よし、準備が出来たらこっちから迎えに行く。それでいいだろ」


「分かった」


 俺は頷いた。

 それまでに同行できそうな人を探しておかないといけない。


「じゃあ、俺は帰るから……」


 と、立ち上がろうとするとマリーおばさんが皿を持って来た。


「さぁ、たくさん食べてくださいね」


 うれしそうな顔で机の上に皿を置いていく。


 あ……これを食べずに帰ることはさすがにできない。


「あ、ありがとうございます。おいしそうですね」


「そうでしょう。私の自慢の料理よ」


 俺はダニエルと顔をつきあわせながら、微妙な気分で料理を頂いた。


 あー、気まずい。


○コメント

第一稿を改稿しながら投稿してましたが、ついにストックが切れました。

そろそろ本文書かなきゃ……

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