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異世界でTSしてメイドやってます  作者: 唯乃なない
第1章 バロメッシュ家
32/216

初めての男の子遭遇

 翌日になっても、まだ変な気分だった。


 とはいえ、仕事は普通にしないといけない。

 執事のガストンに頼まれて、山のような本を別の部屋に運んでいる。

 料理を運ぶための台車しかないので、すべて手に持って少しずつ運んでいくしかない。


「お、重……」


 早くたどり着きたくて足早に歩く。

 書類置き場になっている部屋に入って、空いている棚にその本を押し込む。


「ふぅ……」


 少し休んでいると、扉からふらりとレベッカが入ってきた。


「アリス、いまいい?」


 その声に無意識に構える。


「な、なんですか? わ、私、ちょっと疲れてるんですけど」


「あ~そっか。じゃ、手伝ってあげるから」


 意外なことにレベッカは明るく言ってきた。


「そ、そうですか。ありがとうございます」


 そう返事をすると、レベッカがちょっと首をかしげた。


「マリーも言ってたけど、やっぱりちょっと変かな……」


「え、へ、変ですか。なんか自分でもそんな気がしてるんですけど、なんで変なのか分からないんですよね」


 そう返事すると、レベッカが少し困った顔をした。


「なんか、やりにくいかも……。そうだ、今日は庭に出ない方がいいわよ」


 と、レベッカが窓の外を指さした。


「え? なんでですか?」


「今日はくそガキたちが来てるのよ。あんたなんかが出てくと、いいカモにされるわよ」


「くそガキ?」


「手伝いに呼んでる男ども。私たちと同じくらいの年齢のはずだけど、本当にガキっぽくてしょうがないのよね」


 と、レベッカが苦笑した。


「へぇ……」


 たしかにこの年齢の男たち……のぞきもしていたと言うしちょっと馬鹿っぽそうだ。


「でも、挨拶ぐらいはしたほうがいいかな」


「やめときなって」


「そんなに危ないんですか?」


「危なくないけど……あいつら馬鹿だし、なんか今日のアリスはちょっと変だし。やめときなって」


 と、レベッカが眉をひそめる。


「でも、私、元男ですし、別に大丈夫だと思うけど」


「えー……そうかな?」


 と、なぜかレベッカが心配そうな顔をする。


「挨拶ぐらいはしてきますよ。本を運ぶのあとちょっとなのでやってもらっていいですか」


「それはいいけどね」


「ちょっと行ってきます」


 部屋を出て、玄関から庭に出る。

 しかし、誰も居る様子が無い。


「あ、裏庭か」


 庭を回って、裏庭に回る。


 裏庭には薪が積んであったり、ゴミが積んであったりして、とてもお客さんに見せられるような状況では無い。


 仕事をするとしたらここだろう。


 建物の陰から様子をうかがい、一歩進んでから、木の陰から様子をうかがう。


 なんで私はこんなに慎重になっているんだろう。


「お、居た居た」


 木の陰からそっと様子をうかがう。


 3人の男の子たちがいた。

 年長の一人は17,8ぐらいで、少し賢そうな顔をしている。

 他の二人は14,5ぐらいで子供っぽい。

 植木を切った後の小枝を集めながら、何かを話している。


「なあ、ディックのやつ、レジーとキスしたらしいぜ」


「マジかよ。いいよなぁ、あいつは……」


 年下の二人がそんな話をしている。


 あ、あれ、なんか……なんか……かわいくないか?


「か、かわいい……」


 誰も居ないのに、思わずつぶやいてしまった。


 どういうわけか、すごくかわいく見えてしまう。


 知らない人に会うのが怖いと思っていたが、あの男の子たちならそんなに怖さを感じない。


「で、ジャンはどうなんだよ。この前レベッカと仲良く話をしていたじゃ無いか」


 話しかけられた一番年上の男の子はジャンと言うらしい。

 そうか、レベッカとあの年長の男の子は仲がいいのか。


「はぁ? なんにもないよ」


 ジャンという少年がぶっきらぼうに言い捨てる。

 しかし、なんか照れが入っているのが分かる。

 その恥ずかしさをごまかした言い方、萌えポイント高い!


 いい!

 めっちゃいい!


「いいよなぁ、ジャンは。この前もマリーと仲良く話をしていたし」


「仕事の話をしていただけだよ。うるさいな、お前たち!」


 ジャン少年は大声で言い返しながら枝を拾う。


 ずっと眺めていたい気分になるが、挨拶をしに来たんだった。

 いつまでも物陰に隠れて見ているわけにも行かない。


 えっと、髪がはねたりしてないかな。

 裾が乱れたりしてないかな。


 って、なんでこんなに身だしなみを気にしてるんだ。


 でも、なんか恥ずかしい。


 と、とにかく、出よう。


「ど、どうも、こんにちは」


 少し表情が硬くなっているかもしれないが、できるだけ自然な仕草で彼らの前に姿を現した。


「ん? マリーか? あれ……」


 ジャンという一番年上の少年がこちらを振り向いて、ぼーっとした顔をした。


 ん、どうしたの?


「ぁぁぁぁぁ……」


「ぉぉ……」


 年下の二人の少年も小さな声でなにか言った後、こちらをじーっと見つめる。


 な、なになに?

 すごく恥ずかしいんだけど。


「あ、あの……?」


 三人が固まっているので、首をかしげると、途端に年長のジャンという少年が動き出した。


「す、すみません! 初めまして、僕ジャンと申します。この屋敷の手伝いをさせていただいています。この二人は、シモンとエリクです」


 少年は我に返って自己紹介をした。

 紹介された二人の少年もぎこちなく頭を下げる。


 うわ、かわいい。

 どうしよう、やっぱりめちゃかわいい。


「わ、私はアリスです。この前倒れているところを助けてもらって今ここで働いています」


 と、冷静さを装って自己紹介をする。


 男の子達が真剣に私の言葉を聞いている。


 なにこの男の子たち、めっちゃかわいいんだけど。

 外見がかわいいとかそういうんじゃなくて、存在自体がかわいく見えてしょうが無いんですけど。


 なにこれ!?


「は、話は聞いています。あ、あの、なんのご用でしょうか?」


 ジャン少年が視線をそらしながら言う。

 すごく意識されているのが伝わってくる。


 美少女で良かったと天に感謝したくなる。


「ちょ、ちょっと時間があったから、挨拶に来ました。お、お邪魔でしたか?」


「い、いえいえ!」


 ジャン少年がぶんぶん首を振る。

 後ろのシモン・エリクも首を振る。

 すごく歓迎されているのを感じる。


「えと……」


 と、ジャン少年が何かを言いかけて、そのまま口をつぐんで困って後ろの二人に視線を送る。

 シモン・エリクの両方も困ってドギマギしている。


 あーかわいい。

 すんごくかわいい。


 突然美人がやってきてドギマギしている男の子モーションをすごく感じる。

 めちゃくちゃいいぞー!


「……ところで、どっちがシモンでどっちがエリクなの?」


 先ほどの紹介がすごく適当だったので、どっちがどっちかわからない。


「あ、お、俺がシモンです!」


 二人のうち、少しやんちゃそうな方の少年が手を上げた。


「ぼ、僕がエリクです」


 おとなしそうな方の少年が返事をする。


「そっか……」


 二人ともおどおどしているが、おとなしそうな少年エリク君の方がさらにいじりやすそうだ。

 かわいすぎて、いじりたい衝動がわいてくる。


「エリク君、私より年下だよね? いくつ?」


「じゅ、14です!」


 見た目通りだ。

 私の外見年齢は15、6あたりだから、私の方が年上ということでいいだろう。


「じゃ、私がお姉さんだね」


 と、近づいて自然な動作でエリクの頭をなでる。

 エリクが顔を真っ赤にする。


 うしょー、かわいい!


 もっとなで回してやる。うしょー!


「よ、汚れてるから、あんまり触ると、て、手が汚れますよ」


 エリク少年がうつむく。


「気にしてくれてありがとうね。でも、気にしないでね~」


 ああもう、撫でるのが楽しすぎる。

 

 顔を赤くしているのを見ながら、ニヤニヤしながらなで回す。


 あー、撫でる側も楽しいじゃん。


 横を見ると、ジャン少年とシモン少年が不思議そうな顔をしている。


 おっと、行動が不審だっただろうか。


「あ、ごめんね。つい勢いで」


「いえ」


 手を離すとエリク少年は恥ずかしそうに体を引いた。


 絶対内心ではうれしがっているが、うれしいとは言えないところだろう。


 ふっふっふっ、君らの内心はお見通しだ。


「なんだよ、お前だけ……」


 シモン少年がエリク少年に小さくツッコミを入れている。


 普通なら聞き流すところなのだろうが、それがめちゃくちゃかわいく感じる。


「あ、ならシモン君も頭なでてあげようか?」


「い、いいよ、別に!」


 シモン少年が恥ずかしそうに首を振る。


 ふむ。


 友達が年上の女性にかわいがられてるとうらやましいけど、いざ自分もその立場になると恥ずかしいという複雑な男心だなぁ。


 いいなぁ、かわいいなぁ。


「で、でも、平等だから」


「いいって!」


「まぁまぁ」


 私がにじりよると、シモン少年は表情を硬くするが逃げ出すようなことはしない。


 よしよし。


「おりゃ! よしよし~」


 頭をなでてやると、軽く逃げるような動作をしたので、そのまま頭を抱え込む。


「わっ」


 シモン少年の方が私より少し背が高いので、シモン少年がきつい姿勢で私が彼の頭を胸元で抱える形になった。


 私が巨乳じゃなくて残念だった。


「お、おい、エリク、ジャン、助けろよ!」


 そんなことを言いつつも、シモン少年は頭を抱きかかえられたまま特に逃げ出すモーションをしない。


 嫌そうなふりをしつつ、実は楽しんでるな。

 髪の毛ぐちゃぐちゃにしてやる!


「うわ、頭かき回されてる! 痛い痛い!」


 あ、やりすぎた。

 やんちゃっぽいからつい乱暴に髪の毛をかき回してしまった。


「ごめんごめん……」


 手を離すと、シモン少年は微妙な顔をしていた。

 いじられたのがうれしくもあるが、いじられ方があまりよろしくなかったのだろう。

 すまんなぁ。


「ん……」


 シモン少年は無言のまま、あえて余裕そうな表情をしながら後ろに下がった。


「残りはジャン君……あぁ、君は私より年上……ですよね」


「は、はい。たぶん」


 ジャン少年がそつなく返事をしたが、少しだけ悔しそうだ。

 こちらがいじれないと悟って、内心がっかりしているのだろう。


 そうがっかりされると、期待に応えていじりたくなるじゃないか。

 でも、年上となるとさっきみたいないじり方はやりにくい。

 うーん、どうしようか。


「アリスさんってフレンドリーな人ですね。レベッカから話は聞いてましたが、もっとおとなしい人かと思ってました」


 ジャン君が正直な感想を言う。


 まぁ、それはそうだろう。

 なんで私もこんなにテンションが上がっているのかさっぱりわからない。

 とにかく今の私は、この男の子たちをいじり回したくてたまらない。

 女の子たちにキスされまくってるからそのストレスの発散だろうか?


 ん……キス?


 この少年たちにキスをしたらどんな反応をするのだろう。


 なるほど、そういういじり方もできる。


 いやまて、さすがに男相手はそれはまずい。

 なにより、純情な彼らの心をもてあそぶようなことになってしまうし、レベッカも怒るだろうな。


「ん~……ほっぺにキスをしてもいい?」


 あれ、何を言っているのか私は。


「な、なんでですか!?」


 ジャン少年が目を丸くする。


 そりゃそうだ。

 私は一体なにを先走っているのか。

 でも、変な意味のキスじゃなければ問題ないだろう。

 海外のドラマでは友人同士でもキスをしたりしていたもんね。


 大丈夫大丈夫。


「えっと……親愛の証に。ここでは友達同士でキスとかしない?」


「しませんよ!」


 ジャン少年が悲鳴のような声を出す。


「私が前いた場所では、結構普通にしてたけどなぁ」


 ドラマの中ではしてたけどなぁ。という意味だ。


「え、で、でも」


 ジャン少年がうろたえる。


 ああもう、かわいい。

 めっちゃキスしたい。


「でも、ほっぺだよ? 問題ないよね」


「そ、そういう国にいらっしゃったんですね……。そ、そうですね、頬であればいいのかな……?」


 ジャン少年が目を白黒させながらも、キスしやすいように身をかがめる。


 おお、素直で結構だ。

 素直な男の子は大好きだぞ。


「で、でも、野良仕事してたんで汚れますよ」


「気にしない気にしない」


 無防備に頬を差し出すジャン君を見ていると、軽く頬にキスをするだけのつもりだったのに、なんかそれではもったいない気がしてくる。


 なんかもっと遊びたい。


 まず、逃げないように首に手を回す。


「え、あ、アリスさん?」


 ジャン君が焦った声を上げる。


 いいなぁ、いじりがいがあるなぁ。


「じゃあ、するね」


「は、はい」


 ジャン君が緊張した声を出す。

 シモンとエリクもじっとこちらを見ている。


 ジャン君の頬にねっとりと口づけをする。

 たしかに肌の感触が女の子たちとちょっと違う気がする。

 なるほど、男の子の肌にキスをするとこんな感じか。


「ん~……」


 気がつくと、結構長い時間がたっていた。

 3秒くらいのつもりだったのに。


 顔を離すと、ジャン君の顔が緊張で固まっていた。


 あ、かわいい。


「もっかい」


「え?」


 もう一度抱き寄せて、今度は反対の頬にキスをした。

 こっちのねっとりとやってから、ジャン君を解放する。


 ジャン君は解放されると、ぎこちない足取りで私から離れた。


「すげぇ……」


 とシモン少年が小さくつぶやいたのが聞こえた。


「シモン君もキスされたい?」


「は!? まさか、そんなわけないですよ」


 シモン少年がぶんぶんと首を横に振る。

 うひゃー、キスしたいなぁ。


「えーでも、親愛の証だよ? せっかく知り合ったんだからそれくらいしないと」


「そ、そうですか。たしかにジャンだけというのは不公平だし」


 シモン少年は案外素直に折れて私の方に近づいてくる。


 ってか、キスされたくてたまらないのが明白だ。


 近づいてきたシモン君の耳近くにキスをすると、彼は顔を真っ赤にして、


「あ、ありがとうございます」


 となぜかお礼を言った。


 礼をしたいのは私だというのに。


「え、僕も?」


 と恥ずかしそうな顔をしているのはエリク君だ。


 なんか、あんまりいじりすぎるのが申し訳なくなってきたので、エリクには額に軽くキスをするだけにした。


「ありがとうござい……ます」


 なぜかエリクもお礼を言った。


「ええと……仕事があるから戻りますけど、またなにかあればよろしくお願いします」


 私はぴょこんと頭を下げた。


「あ、はい……」


 ジャン少年が変な顔のまま返事をして、エリクとシモンもぎこちなく頭を下げた。


 私は軽く手を振ってから、裏庭を後にした。


 あー、楽しかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] もし自分がts女性化転生したら男性陣に嬉しすぎるえっちなイタズラしてみたいと思うので今回は満足なお話でした。
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