お別れ?
「ということで、今度こそ本当に出て行くことになりました。今までお世話になりました」
話が終わって王子も帰り、俺は部屋でエミリーさんと話をしていた。
エミリーさんは残念そうな顔をした。
「そうですかぁ。仕方ないですけど、このままアリス様の専属メイドで居たかったなぁ……」
「そうですか? そんなにいいことあります?」
「アリス様、冷たいです~。せっかく仲良くなったんだから一緒に居たいに決まってるじゃないですか」
「まぁまぁ……」
俺がエミリーさんをなだめていると、マリーが横から顔を出した。
「エミリーさん、うちに来たらいいんじゃないですか?」
「え? でも、バロメッシュにはメイドが余ってるくらいだって聞きましたけど」
それはそうだ。
「マリー、それは無茶じゃない? そこそこ広い屋敷とは言え、アルフォンス一人のためにマリー・レベッカ・コレットに自分で四人でしょ。さらに今はナディーヌさんが来ていて、もう五人だよ?」
「なに言ってるの。アリスはアルフォンスの奥さんになるんでしょ。アルフォンス様と英雄様の二人に対してメイド四人じゃ十分とは言えないわよ」
「う、うーん、でもアルフォンスの家は結構倹約家みたいだし、さらにもう一人雇ってくれるかなぁ……」
「アリスが雇えばいいじゃない」
「え?」
「あ、それです! お金持ちの貴族の奥さんは自分のお金でお気に入りのメイドを雇うのは普通ですよ! アリス様、私を雇って!」
エミリーさんがすこしいたずらっぽい仕草で手を合わせた。
仕草は少しふざけているが、言っていることは本気のようだ。
「とりあえず今はお金あるけど……これから先も収入あるかどうか……うーん……映写機でうまいこと儲かれば……うーん……」
「アリス様、お願いします!! 実はアリス様と仲良くなってから、同僚達と微妙に距離ができちゃって居心地悪いんですよ~。連れてって~」
エミリーさんが少し甘えるような声を出した。
「そ、そこまで言われると……う、うーん……」
まぁ、男女不平等なこの世界だと、メイドさんの賃金安いし、なんとかなるかなぁ……
「一応アルフォンスに相談してみる……。お給金は後で相談って事で……」
「ありがとうございます! 絶対にアリス様についていった方が将来安泰そう!」
「うわー。心の声が。……じゃあ、そうしましょう」
俺が頷くと、エミリーさんは「やったー」と両手を挙げた。
あの密度の濃いメンバーの屋敷に、さらに密度の濃い人が追加される。
大丈夫かなと若干不安に思いつつも、大丈夫だろうと自分に言い聞かせた。




