エドワード PART2
その二日後、本当にまた王子がやってきた。
今度は従者を連れずに一人で来たようだ。
こちらは前回と同じようにマリーと二人だ。
会話を始めると、今度は王子の方からいろいろと語り始めた。
王族と言っても王位を継承することはまずないので、王子と言っても大した物ではないとのこと。
そして、将来は国王と貴族達の間を取り持つために動くことになるので、あちこちの貴族と交流して関係を広げているとのことだった。
「王族ってもっと贅沢三昧だと思っていたけど、そうでもないんですね」
「ははは、それでも普通の貴族と比べれば大分贅沢させてもらっていますよ」
リラックスしているのか、王子の口調は前回よりもかなり砕けた物になっている。
「王族もいろいろやらないと行けなくて大変なんですね」
「まぁ、そんなものだよ。でも、今のところ兄弟間の対立はないので幸運なほうだ。過去には王位継承権を巡って血みどろの惨劇が繰り広げられたこともあるし、それを思えば平和ですよ」
「そうなんですね。それは……平和が一番です」
「その通りだ。うん、まだ二度目だというのに、なんというか……あなたは本当に話しやすいな」
「そ、そうですか?」
特別に気を使っている気もないが、エドワード王子はなにか気に入ったらしい。
まぁ、友人的な意味なら別に仲良くなっても全然問題ないんだけど……でもアルフォンスは焼き餅焼くだろうなぁ。
と、ぼけーっと考えていると、王子はなにか気が付いた顔をした。
「あ、あぁ、これは失礼。まだ二度目だというのに、随分と砕けた話し方になってしまいましたね。あなたがあまりに話しやすくて、気が緩んでしまいました」
「いえ、気にしないでください。というか、王族だから平民の自分に丁寧な言葉を使う方がおかしいと思っていたくらいです」
「そんな、アリス様が平民だなんて。英雄を平民扱いだなんてとんでもない!」
丁寧に扱ってくれるのうれしけど、王子からそんなに持ち上げられるとなんともむずがゆい。
そこまで丁寧にしてくれなくていいんだけど……。
「それにしても、バロメッシュ家と婚約されていると言うことでしたが、なぜここに居るのですか? ジスランの話ではずっとここにいるという話で、そして見合いという名目で私の所に話が来ました。アリス様のお話と食い違いがあります」
「あー……それは……」
こちらのゴタゴタなので、王子にまで話すのはまずそうだ。
ややこしいことになっても困る。
とりあえずごまかそう。
「い、いろいろとありまして……」
笑顔を浮かべて言うと、王子が顔を曇らせた。
あ、多分、笑顔がめちゃくちゃぎこちなかったので、心を読まれたのだろう。
全部顔に出るから困る。
「なにか困っているのでは無いですか? 私でよければお力になりましょう」
「い……いや、その……たしかにちょっと困ってはいますけど、エドワード様を巻き込むわけには……」
「やはりお困りなのですね? 是非ともお話を聞かせてください」
遠回しに断ろうとしたけど、王子が是非とも是非にと突っ込んでくる。
「こ、こちらの話なんですが……」
最初はポツポツと話していたのだが、なんだかそのまま芋ずる式に全部聞き出されてしまった。
あー……隠し事できないわ、俺。
「そうか……」
ジスランさんに脅されていることまで全部聞き出した王子は、渋い表情を浮かべた。
「ま、まぁ、そのうちなんとかしますから、あまりお気になさらず……」
「そういうわけにはいかない。私からジスランに言っておこう」
「え……ほ、本当ですか!?」
王子からの言葉ならジスランさんも諦めてくれるかも知れない。
「約束します」
王子は力強く答えた。
俺の横で控えていたマリーが俺の代わりに深々とお辞儀をした。
俺は慌てて同じようにお辞儀をした。




