表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/216

ジャンとの再開

「ジャ、ジャン!?」


 まさかこんなところで出会うと思わないので驚いていると、ジャンも自分に気が付いたようで俺を見て固まった。


「え、う、うそ。ア、アリ……」


 やばい、本名を呼ばれてしまう!


「アリアです!」


「え、えっと……?」


「つ、付いてきて!」


 俺はジャンに走り寄ると、腕を掴んで引っ張り出した。

 後ろから、ひゅーっと冷やかす口笛が聞こえた。

 そのままテラスに引っ張り出すと、ジャンは当惑した様子で俺を見た。


「アリスさん、なんでこんなところに!?」


「ジャンこそ、なんで……」


「こ、こういうのあんまり出なかったんですけど、アリスさんが居なくなってから寂しくて……」


「え?」


 俺は首をかしげた。


「ジャンって好きな人がいるんでしょ? たしかかわいい系の好きな人が居るって。それで自分にいろいろ恋愛アドバイス聞いてきたじゃんか」


「え゛……あ、あぁ、あれですか……。さ、さすがにもうわかりませんか?」


 ジャンが気まずそうな顔をした。


「……なにが?」


 俺が聞き返すと、ジャンは困ったような顔で俺を見た。


「なにがって、僕が好きなのはア……アリスさんです!」


 ジャンの言葉を理解するのに若干の時間が必要だった。


 ……は?

 はぁ!?


「え、ええ!? い、いや……だって……ちょ、ちょっとまて、どういうことだ!?」


「ど、どういうことと聞かれても……」


「だ、だって俺、男だよ!? 分かってるだろ!?」


「だ、だって、どうみても女の子にしか見えないし! かわいいし! 親切だし!」


 ジャンが顔を真っ赤にして言う。


「う、うわ、ちょっと待て! 待てってば!」


 気持ちを落ち着けようとしながら、ジャンを見ると、ジャンは熱っぽい視線で俺を見てくる。


 うわ……ちょ……て、照れるんだけど。

 断るしか無いけど、そういう視線で見られるとダメなんだって……

 うう……


 視線をそらしながら話を続ける。


「あの……む、無理だから。その……悪いんだけど……そういうわけにはいかないんだよ。ま、まさか、ジャンが俺を好きとか……こ、困るんだけど……」


「むしろ、ものすごくわかりやすく言っていたつもりですけど……。あれでわからないアリスさんがおかしいです」


 ジャンが不満そうな顔をした。


「だ、だって、全然そんな風に思わなかったから……。で、でも、悪いけど、無理だから……」


「な、なんでですか」


「えーと……アルフォンスと婚約したので……ま、前も形上の婚約はしていたけど、今回は本気で……」


 頬をひっかきながら恥ずかしがりながら答えると、ジャンが口をポカンと開けた。


「え……」


 ジャンは脱力した様子で手すりにもたれかかって、黙ってしまった。


「そ、そんなにショック……?」


「はい……」


 ジャンはうつむいていたが、ゆっくりと顔を上げた。


「こんなに仲良くなった女の子はアリスさんが初めてですし……」


「い、いや、俺男だからね!?」


「そう見えません……」


「み、見えないだろうけどさぁ……。ま、まぁ、その、そんなに気を落とさないで……。もっといい相手はいるって」


「居ないと思います……」


 ジャンが死にそうな声を出した。


「い、いや、居るって。ほら、そんなに落ち込まないで。な? な?」


 見たことが無いほど落ち込んでいるジャンを必死に慰めていると、マリーがテラスに入ってきた。


「アリア、話は済んだ?」


「話はしたんだけど、ジャンが落ち込んじゃって……」


 すると、マリーがふぅっとため息を吐き出した。


「振った相手にあんまり優しくしない方がいいわよ。『まだいけるかも』って勘違いしちゃうから」


 マリーが少し冷たい表情で言った。

 マリーは美人でモテるからこそ、その辺りはシビアなんだろう。


「そういわれても……」


「ジャンもあきらめなさい」


 マリーに声をかけられると、ジャンは手すりを離して顔を上げた。


「あ、あぁ……わ、分かってるよ」


 ジャンはマリーには少しぶっきらぼうに答えた。


「ジャン……大丈夫?」


「だ、大丈夫です……。またお会いしましょう」


 あんまり大丈夫じゃない様子でジャンが部屋の中に戻って行った。

 そして、部屋の中央で固まっている男の子の集団に入っていった。


「どうしたんだよ」

「……振られた」

「そりゃしょうがないよ。あんな高嶺の花に憧れてたのか」

「結構仲が良かったんだよ。放って置けよ!」

「キレるなよ。仕方ないって」


 そんな声が聞こえてきた。

 ジャンと仲が良さそうだし、友達と話していれば少しは元気が出るだろう。


「あら、結構暗いわね。アリア、そろそろ帰った方がいいと思うわよ」


 マリーに言われて気が付くと、この会場に来てからかなりの時間が経っていた。


「そうだね。そろそろ帰ろうか。この体、ちょっと無理するとすぐに調子崩すし……」


 帰り際に女の子達にさよならの挨拶をし、パーティ会場を出たのだった。


 自分の噂を聞きに来たのに、まさかジャンがいるとは思わなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ