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異世界でTSしてメイドやってます  作者: 唯乃なない
第1章 バロメッシュ家
20/216

レベッカとコレットにロックオンされました

 結局、昨日の夜はキスされまくった。


 キスだけで済んだのが奇跡かと思うほど、マリーは情熱的だった。


 っていうか、正直な話、ちょっと怖かった。

 ぐいぐい来すぎるよ。


 そして夜はいろんな夢を見てなかなか寝付けなかったので、今日はちょっと寝不足気味だ。


 寝ぼけ眼でいつものようにモップがけをしていると、レベッカとコレットがホウキとバケツを持って近づいてきた。


「あれ、二人も掃除ですか? 珍しいですね」


 大体の場合、俺が掃除をしていて他のメイドは厨房にいたり他の雑用をやっていることが多い。


「そんなことよりさぁ、なんでマリーとラブラブになってるわけ?」


 唐突にレベッカが核心的なことを聞いてきた。


「はい。見ていて恥ずかしくなります」


 コレットも少し顔を赤らめて言った。

 いつも表情が乏しいから、こうやって表情がつくとやけにかわいく見える。


 って、それどころじゃない!


「い、いや……な、なんですかラブラブって……そんなわけ、ないじゃないですか」


「はぁ? あんた、ごまかせてると思ってるの?」


 レベッカの目つきが鋭くなる。


「オモッテナイデス」


 今日は朝から、マリーの様子がおかしかった。

 瞳にハートマークを浮かべながら話しかけてきて、やたらベタベタ触ってくる。


 うれしくないわけじゃ無いけど、さすがに他の人に見られたくない。

 だから、俺は割と普通に振る舞っていたはずなんだけど、マリーの態度に引っ張られて……『マリー』と呼び捨てにして、敬語も使うのを忘れていた。

 傍目から見るとおかしいだろうなぁ、と途中で気がついたのだが、マリーもそれが普通のように接してくるので、今更戻せずにそのままになってしまったのだ。


 そりゃ感づいて当たり前だろう。


「べ、別に……昨日、ただ仲直りしただけです」


 そういってごまかす。


「どんな仲直りよ」


 と、レベッカが目を細める。


「気になります」


 と、コレットも言う。


「い、いや、そこ聞きます? 私とマリーの関係だから、放っておいてくださいよ」


「あのさ、私たち仲間だから、そういう隠し事は無しね」


 と、レベッカが宣言する。


 う、う~


 デリカシーが無いなぁ……


「だ、だから……私もマリーが好きだよって……言ったんですよ」


 言いながら恥ずかしくなる。


「へぇ。まぁ、それはそうだろうけど、それだけじゃないでしょ」


「ですです。マリー、舞い上がってます」


 二人がさらに突っ込んでくる。


 たしかに今日のマリーはちょっとおかしい。


「ま、ま、まぁ……その……いろいろと……」


「なにしたの?」


 レベッカが悪い目つきで聞いてくる。


 この世界のキスとかライトな感じっぽいので言ってもいいだろう。


「あぁ……えっと……キスしたんで……」


「キス!?」


 レベッカが大きな声を上げる。


 え、嘘、そんなに驚く?


 昨日のマリーの感じだとこの世界で女の子同士のキスってもっとライトな感じかと思ってた。


 違ったの!?


「ど、どこに?」


「え、どこにって唇に……」


 と言いかけて、気がついた。

 ほっぺにキスしたと言えばよかったんだ。


「え、えええええ!? ガチじゃんか!?」


 レベッカがまた大声を上げる。

 コレットは声も上げずに俺を見ている。

 うう、視線が痛い。


「ど、ど、どっちからキスしたの!?」


「どっち? マリーからしたのと、私からしたのと、両方……かな」


「うわああああああ!!!」


 レベッカが顔を押さえる。

 コレットも顔を赤くしている。


「ってことは、何度もしたの!?」


「た、多分、20回ぐらいはしたんじゃ無いかな……?」


「うひゃああああ!!」


 レベッカがまた大声を立てる。

 コレットが顔を赤くしたままキスの仕草をする。

 コレット、そういうのは人目につかないところでやらないと恥ずかしいぞ。


「な、なに、どうなっちゃってんの!? あんた、うちのご主人様とそれっぽい仲だったんじゃないの!?」


「え? そ、そう?」


「そうだよ! ご主人様と顔を合わせるたびに意味ありげな顔をしてたじゃないの!」


「い、いや、記憶が無いなぁ……」


 本当に記憶が無い。

 たぶん無意識にしてたことだわ、それ。


「嘘つけぇ!」


 レベッカが勢い余って、俺の後頭部をたたいた。


 痛!


「み、見たいです! キスするとこ見せてください!」


 と言ったのはコレットだ。

 あれ、恋愛とか興味ないとか言ってたのに。

 さすがに刺激が強かったらしい。


「い、いやいや、さすがに恥ずかしいので、勘弁してください」


 そうやって断ろうとすると、扉が開いて部屋からマリーが飛び出してきた。


「アリス! あれ、みんなもどうしたの?」


 テンション高いマリーは俺たちを見回した。


「え、なんでもないよ」


 と、レベッカがごまかした。

 しかし、コレットが


「キ、キスするとこ見せてください!」


 と飛ばした。


 すげぇ。

 よくそんなこと言える。


「え、キス? そんな話してたの? ねぇ、アリス……する?」


 マリーが顔を赤らめながら言った。


 思わず目眩がした。


 あ、あほか!


 ちょっとネジが飛んでますよ、マリーさん!


 いくらなんでもこんなところで……え?


「む……」


 脳内でツッコミを入れている間に、マリーが近づいてきて、俺に唇を押しつけた。


 ふわっ!?


 い、いきなり人前で!?


 俺は慌てて後ろに下がる。


「ぶわっ……ちょ、ちょっと、マリー!? いきなり何をするわけ!?」


「アリス、冷たい……」


 マリーが不満そうな顔をする。


「いや、冷たくないから! マリー、冷静になろうよ! 人前だから!」


「え、なにかいけない?」


 マリーが不思議そうに首をかしげる。

 本当にポンコツになっている。


 うおおおい!


「も、もっとちゃんとやってるところ見せてください!」


 コレットが力を込める。

 その隣でレベッカは完全に引いている。


「コ、コレット、ちょっと落ち着いて」


「わ、私、アリスさんがマリーにキスするところも見てみたいです」


 コレットが言う。


「え、えぇ……?」


 コレットが暴走している。


 止めてくれそうなレベッカに視線を向けるが、レベッカは引いている表情を浮かべているが、止めてくれる様子が無い。


 そして、前を見ると、期待した表情のマリーがいる。


 これ……やらないとこの場が収まらないって事?


「……一度だけね」


 つぶやいて、顔を近づける。


 マリーに好き好き言われるのは嫌じゃ無いけど、人前でバカップルやるのは好きじゃ無い。


 でも、聞いてもらえる状況じゃ無さそうだ。


 マリーはゆっくりと目をつむった。


「行くね」


 俺は二人の視線をできるだけ意識しないように、そっと唇を重ねた。


 唇が当たると、ちょっと緊張しているらしいマリーが後ろに逃げた。


 なので、追い打ちをかけてしっかりと唇を押しつけ、ちょっと離し、また押しつけた。


 マリーが十分に堪能しただろうと思った頃、というか、俺自身が割と堪能しちゃった後に、唇をゆっくりと離した。


 マリーがすっごい乙女な顔をしている。


 俺は自分の唇を手の甲でぬぐった。


「コレット……これで満足ですか?」


 振り向くと、コレットの目がらんらんと輝いていた。


 え?


 あんまり食いつかれると嫌だから、ちょっとネタっぽく、あえて大げさにやったんだけど?


「あ、アリスさんのキス、めちゃくちゃえっちぃです」


 コレットが手をわきわきと動かせながら言った。


 いや、なんでそうなる。


「そ、そうね。マリーのキスはなんかストレートだけど、あんたのキスは……うん、なんかエロいかも」


 レベッカまで恥ずかしそうな顔をしている。


 いや、おい、なんでそうなる。


「でしょ。アリスのキス、本当にすごいの……」


 マリーが夢見心地の顔で言う。


 ちょっと待って、なにこれ。


 腕を引っ張られて振り向くと、コレットが俺の腕をつかんでキラキラ輝く目で俺を見上げていた。


「ア、アリスさん、わ、私にもキスください」


「は、はぁ!?」


 っていうか、ここ廊下!

 誰も見てないが、声は筒抜けだ。


「ちょっと、こっち!」


 今更遅いかもしれないが、空き部屋に入った。

 コレットと一緒にマリーとレベッカもついてくる。


「コ、コレット、冷静になろうね~。駄目だよ~、勢いに流されちゃ」


 子供をあやすように言ってみたが、コレットの目は輝き続けている。


「マリーだけずるいです! 私も一度くらいキスしてみたい!」


 コレットが腕を引っ張って懇願する。


「レ、レベッカ、コレットを止めてくれない?」


 一番冷静そうなレベッカに話を向けてみた。


「い、いいんじゃ無いの? 女同士だし、キスぐらい」


 レベッカが顔を赤くしながら言う。


 あんた、さっきと言ってること変わってませんか?


 さすがにやばいでしょ。


 どうせマリーと屋敷の主にばれているんだから、もうぶっちゃけてしまおう。


「コ、コレット、レベッカ……言いたいことがあるんだ」


「なに? 他の世界から来たって話?」


 と、レベッカが何でも無いかのように言った。


 は?


「え、ど、どうしてそれを……」


「ご主人様がさっき教えてくれたわよ」


 え、話したのか。


 たぶんその方がトラブルになら無いと思ったんだろうが、勝手なことを~!!


「し、知ってて、あんな普通に接してきたんですか……?」


「だって、あんまりピンとこないしね」


 と、レベッカが軽く言う。


 まぁ、そうなのかもしれないけど……それにしても、そっけなさすぎる反応だ。


「じゃあ、私が前の世界では男だったと言うことも……」


「え?」


 レベッカが首をかしげる。


「お、男……なの?」


 レベッカがちょっとひるんでいる。


 あの男、それは言ってなかったのかよ!!


「そ、そうですよ。前の世界では男でした。だからコレット、キスとかそういうのは本当に好きな人が出来たときにしようね」


 しかし、コレットは首を横に振った。


「今はアリスは女の子です。女の子同士だから、気にせずキスしてください」


 コレットがまたしても俺の腕を引っ張る。


「ええ……? じゃ、じゃあ、ほっぺでいい?」


「嫌です。唇です」


「それ、ファーストキス……」


「女の子同士だから問題ありません!」


 といってコレットが目をつむる。

 腕をしっかり握られていて、どうやっても逃がさないという構えだ。


「これ……いいんですかね?」


「い、いいんじゃない」


 と言ったのはレベッカ。


「許してあげる」


 と言ったのはマリー。


 俺はため息をついて、コレットの唇に触れるか触れないかのキスをした。


 すると、腕をさらにきつく握られた。


「え゛っ」


「も、もっとちゃんとしてください!」


 コレットが目をつむったまま、大きな声を出した。


 ええええ……


 しかたない。


 コレットの唇にゆっくりと唇を沿わせて、できるだけねっとりと押しつけて、そして離す。


 すると、コレットは目を開いてほわほわした表情を浮かべた。


「あ、ありがとうございますぅ……」


「よ、喜んでいただけたようでよかった」


 コレットが腕を放してくれたので、やっと解放された。


 な、なんだよ、この状況。


「じゃ、ついでに私も……」


 と、レベッカが顔を赤らめたまま言い出した。


 は、はぁ?


「つ、ついでって……。じゃあ、マリーにキスしてもらえば」


「それは駄目。私、女同士のキスとか性に合わないから」


 と、レベッカは腕を振り払って否定を示した。


「じゃ、止めとけば……」


「でも、あんた中身男なんでしょ? ならギリギリ許容範囲内」


 と、レベッカが俺の目を見てくる。


「え、は?」


「い、いいから、早く!」


 レベッカが目をつむる。


 ええい、もうやけくそじゃ!


 コレットと同じようにねっとりキスをすると、レベッカがパチリと目を開けた。


「ふ、ふ~ん、こんなものか。う、うーん、なんか、わかんなかったかな? もう一回いい?」


「な、なんでですか!?」


「いいから! あんた後輩でしょ!? 先輩の言ったことには従う! ほら!」


 レベッカが強引に俺の肩をつかんで、目をつむる。

 その言い方にちょっとだけ腹が立つ。


 あぁ、もう、しょうが無いな。


 なんかあきらかにみんなで変なテンションになっている。


 こうなったら、後悔するぐらいねっとりしたキスをしてやる。


 耳をちょっとなめてからキスをする。

 ちょっと長く押しつけていると、レベッカが抗議をしそうに身じろいだところを、さらに唇を押しつける。

 いよいよレベッカが逃げようとしたところで、ととどめに舌までつっこんだ。

 マリーにだってこんな深いキスはしたことがない。

 そして、嫌がらせのように思いっきり唇をなめ回して、ようやく顔を離した。


「は、はぁ!? な、なにすんの!? へ、変態!」


 レベッカが騒いでハンカチで顔を拭く。


 どうだ、後悔したか!


「ほら、これでいいですよね?」


 と、ちょっと勝ち誇ったように言うと、レベッカがちょっと赤くなった顔で俺を見た。


「い、いいわけないでしょ! も、もっとちゃんとロマンチックにやってよね。ほら、やり直し!」


 レベッカが俺の右腕をつかんで引っ張る。


「は?」


「や・り・な・お・し!」


 すると、コレットが左腕を引っ張った。


「アリスさん、今のすごいです! 私にもやってください!」


「い、いや、コレットにはやんないから」


「なんでですか。レベッカだけずるい!」


 コレットが騒ぐ。


 両腕を掴まれてちょっと心細い気分になる。


 助けを求めてマリーを見た。


「ちょっと、アリス……なんで私にああいうキスしてくれないの」


 マリーが不機嫌そうな表情を浮かべた。


 え、怒るところはそこなの?


「い、いやいや、マリー、ちょっとこの二人止めてよ!」


 両腕を捕まれた俺はマリーに助けを求める。


「マリー、あんたはいつでもアリスとキスできるんでしょ!? 今は私たちにアリスを貸して! 私は今しか無いの! ほら、アリス、もう一回ロマンチックにやって!」


 レベッカが俺の右腕を引っ張る。


 レベッカ、必死すぎない!?


「い、いや、レベッカさん、落ち着いて……」


 コレットが左腕を引っ張る。


「わ、私も今しか無いんです。お願いします」


「ちょっと! 二人で引っ張らないでください! ああ、もう、うるさいなー!」


 この身体になってから、いわゆる「切れる」ことはほとんどなかったのだが、ついにぶち切れた。


 俺は思いっきり叫んだ。


「う、うるさい! キスぐらい、いつでもするから! もう、離せっ!!」






○作者から一言

主人公に厳しい作者にしては珍しく、この作品は主人公にとって大変イージーモードに設定されています。

イージーすぎて主人公にその気がなくても、このように強制的にフラグが立ちます。

イージーすぎて逆に大変!

「陰極まれば陽に転ず。陰極まれば陽に転ず。」という陰陽思想を小説で表現したような感じで……(言い過ぎ)

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