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異世界でTSしてメイドやってます  作者: 唯乃なない
第5章 バロメッシュ家を離れて
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マリーさん、お怒り

 ゲストルームを出たところでマリーと出くわした。

 そして、すごい顔で俺を見ている。


 問:どういう対応をするのが正解ですか。

 答:分かりません。


「マ、マリー!? い、いつから居たの!?」


「ほんっっとに苛つくぐらいにイチャイチャしてたところから……」


 マリーが完全にぶち切れた目をしている。


「イチャイチャって……」


「あぁ、ごめん。私たちって友達に戻ったんだっけ? でも、自分でも驚くくらい苛ついたなぁもぉ」


 マリーが口の端を引きつらせている。

 わざとオーバーな表情をしてるのだろうけど、怒っているのは間違いない。


「そ、そう、と、友達だよね! お、怒ること無いじゃん!」


「あぁ、そうですね!」


 マリーがちょっと乱暴に言い放つ。


 うわ、やけっぱちになっている。

 それにしても、アルフォンスに会う前はマリーと変な仲になってるからアルフォンスと距離を取ろうと思っていたのに、なんで実際に会うとこんなことになってしまうのか。


 後ろから気配を感じて、振り向く。

 すると、満面の笑みのエミリーさんがいた。


「エミリーさんまで居たの!?」


「マリーさんがすごい顔をされているのでなにかなーと思いまして途中から……」


「ど、どこから聞いてたんですか……」


「イチャイチャしているところからイチャイチャしているところまで! もおぉぉぉ!! なんですかなんですかなんですかーー!! なんなんですかーー!! 聞いている私の方が恥ずかしくなるぐらいイチャイチャしてくれちゃってもおおおおおおお!!! マリーさんとの仲も大分濃いと思ってましたけど、ご主人様とのいちゃつきぶりは半端ないですねええええ!! あーーーもーーーーどうしましょう!!!」


 う、うわ、すげー盛り上がっている。


「ほら、聞かれるから早く」


 マリーに急かされて、カートを押して三人でその場を離れる。


「あぁ、私が押しますよ」


 エミリーさんが変わってくれて、そのまま三人で調理場に向かった。

 調理場でエミリーさんが手早く火をおこしてやかんを火にかける。

 そして、俺とマリーに向き直った。


「マリーさんから話には聞いていましたが……もうほんっっっっとーーーーーーにイチャつきぶりが半端ないですね!! うらやましすぎて死にそうになりました!! うらやましすぎるうううう!!」


 エミリーさんが待たしても暴走する。


「いやいや、イチャついていたって……」


 否定しようとすると、マリーが横から口を挟んできた。


「どうみてもイチャついていたでしょ」


「まぁ……な、なんか、アルフォンスが盛り上がっていたけどね」


 気まずくてわざとらしく肩をすくめたが、二人ともごまかされなかった。


「はあああああ!? 何言ってるんですかアリス様? どの口がそんなこと言えるんですかぁぁ!? はああああもおおおお、なんなんですかなんなんですか!? 私たち相手でも十分エロいと思ったら、男の人相手になるとあんなにもう聞くに堪えないエロエロボイスを出すんですねええ!? ちょーーーっと、勘弁してくださいよ。私たちへの当てつけですかああああ!?」


「い、いや、エ、エミリーさん、落ち着いて……ま、まじで怖いから……」


 どうどうどう、と馬みたいにエミリーさんを扱ってなんとか静める。

 エミリーさんは大きな大きなため息を吐いてから、ちょっとまともな顔になる。


「っはあぁ……すげーエロかった……。アリス様、真面目な話、もうちょっと声を抑えた方がいいですよ。あんな嬌声を大声で出すのはまずいです」


「アルフォンスがいきなり背中を触るから反射的に出ちゃったんですよ……ってか、エロくはないでしょ」


「いえ、完全にアウトでしたね」


 と、エミリーさんが医者の宣告みたいに言った。

 マリーも同感だという風に頷く。


「は、はぁ!? そ、そんな……えー? そんな声……出してました?」


「出してましたよ。あんなの、聞いている方まで恥ずかしくなりますよ。よくそちらのご主人様は襲わずにいられますね。その鉄の意志に賞賛するしかないですよ」


「嘘? そんなに……?」


 本人としては、演技も何もしていないし、反射的に勝手に出ている声なのでそんなにまずいとは思っていなかった。

 第三者から聞いてそんなエロい感じになっているのか……今更ながら、まずい。


「マリーさん、アリスさんって本当にエロすぎませんか?」


「そうなんですよ。ご主人様がアリスにぞっこんなのも分かりますよね」


 と、マリーがため息を吐くように言った。


「そうですよねぇ。あんなにエッチでかわいい声を上げていたら、男の人じゃなくても私でも興奮しちゃいますもん」


 エミリーさんが先ほどの光景を思い出すように言った。

 『興奮しちゃいますもん』と言っているが、実際に今のエミリーさんは死ぬほど興奮している。

 目が血走っている。


「い、いや、演技とかしてないですよ!?」


「素でそれって余計にやばいですよ」


 エミリーさんが真顔で言う。

 ぐ……


「そ、そういえば、他の人に聞かれたりしなかった? 他のメイドさんや執事さんに聞かれていたら、明日から居られないんだけど……」


「それは大丈夫だと思う」


 マリーが請け合ったので、少し安心する。


「アリス……ご主人様と距離を取るつもりあるの?」


「そ、そのつもりなんだけどね……」


「どこが……もう……ほんとそこはダメなんだから……」


 マリーが諦めたような顔で言った。


「だ、だから、全部この身体が悪い! あ、あんなに気持ちいいのを断れるわけ無いじゃんか!」


「そこを断らないとダメでしょ! てっきりゲストルームでおっぱじめるのかと思ったくらい」


「そ、そうだね……」


 そこは否定できない。


「アリス様、あまり長い間空けるのもよくないですよ」


 エミリーさんがせっつく。

 うお、そうだった!

 急いで戻らないと!



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