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異世界でTSしてメイドやってます  作者: 唯乃なない
第5章 バロメッシュ家を離れて
178/216

その日の午後

 マリーに意味ありげなことを言われてから、落ち着かない時間を過ごした。

 マリーはあの後メイドさんの買い物を頼まれて出かけてしまったようだ。

 どうせなら一緒についていけばよかった。


「んー……マリー、まだ戻ってこないのかなぁ」


 貧乏揺すりして待っていると、物音が聞こえて、続いてお出かけ姿のマリーが部屋に入ってきた。


「マリー!」


 立ち上がって話しかけようとすると、マリーが手で制止した。


「後でね」


 マリーはこちらを見ずに持って居た荷物からなにかをより分けると、それを持ってまた出て行った。

 荷物を届けに行っているのだろうが、なんだろうこのお預け感は。


 なかなか戻らなくてじりじりしていると、ようやくマリーが戻ってきた。

 そして、いつものようにこちらを気にしていない様子で豪快にお出かけ服を脱いで、普段着に着替える。

 ほんと、俺の目を気にしない。

 今更だけど、一応男なんだけどな……


「んんー……」


 着替えが終わるのを待っていると、マリーはまた荷物を探り始めた。

 さっきからずっと待たされているので、本当に我慢できなくなってくる。


「マ、マリー?」


「後でー」


「ぐっ……」


 もじもじしながら待つ。

 むしろ、もじもじしてるのが分かるように大げさな仕草をするが、それでもマリーがこっちを見ない。

 なんで無視するの!


「あ、アリス、ちょっとこっち来て」


 マリーが荷物のより分けをひと段落したらしく、顔を上げた。

 き、来た!


「は、はい!」


 なぜか仕事っぽい返事をしてしまう。

 一目散にベッドに座っているマリーの所にいくと、マリーが視線で自分の横に座れと指示した。

 その視線に従ってマリーの横に座ると、マリーが無造作に俺の肩を掴んだ。


 あ、またこれ?


 内心期待しながらに抵抗せずに従うと、ぐっと力で重心をずらされた。

 逆らわずに倒れると、マリーに膝枕する形でマリーの太ももに顔を埋めていた。


「わっ……」


 膝柔らかい……とか思っている場合じゃない。


 マリーが無表情でじーっと膝の上の俺の顔を見た。


 ドキドキする。

 固唾をのんで次の行動を待ち受ける。


「もう、本当に無抵抗ねぇ。もういいわよ」


 と、マリーが起き上がるように無造作に言った。


 え。

 ちょっと怖いけど、きっとなにかいじってくれるんだろうと思って期待してたんだけど。

 期待しちゃいけないのは分かるけど、期待してたんだけど。

 これで終わり? う、嘘でしょ?


 しぶしぶゆっくりと起き上がる。

 「なーんてね」と言って、マリーがなにかしてくると期待したが、特に何もしてこない。


「う、うー……」


 なんでなにもしてくれないの、と目で訴えるとと、マリーがやれやれという顔をした。


「だから、そんな襲って欲しそうな顔をしないの」


 と、マリーがぷいっと横を向いた。

 え、嘘だ。

 マリーがそんなそっけない態度を取る!?


「と、友達だよね……?」


「え? そうよ」


 マリーがキョトンとした顔をした。


「あ、あのさ、全然わかんないんだけど、マリーはどうしたいの? さっきは『逃げられない』とか変なこと言っておいて、なんか淡泊だし……」


 もじもじしながら聞くと、マリーが目を丸くした。

 それから、一瞬考えるような仕草をしてから、俺の頬に手を添えた。

 マリーに顔を触られて、ものすごく切ない気分になる。


 な、なんか、さっきから自分がすごく変な状態なのを感じる。

 なんでこんな気分になるんだろう。


「うーん……。そんなに襲って欲しいなら、恋人じゃなくて私の奴隷になる?」


 マリーが『パンにバターとジャムどっち塗る?』ぐらいの軽い口調で聞いてきた。


「え……それは……」


 と戸惑いつつも、一瞬真面目に考えてしまう。

 マリーにいじられるのは好きだけど、マリーの恋人になる自信は無い。

 でも、マリーのオモチャにならなれるかもしれない。


「そ、その、奴隷っていうのは極端だけど、その……マリーがいいなら……」


 と、口を突いて言葉が出た。

 マリーが全然構ってくれなくなると思うと、それが怖くなってしまった。


 自分でも何を言っているのかと思うが、感情が止まらない。


「ほんとアリスはドMだよね。……もしかして、女モードとか入ってる? ちょっと変だよ?」


 マリーが首をかしげる。


「あ、そ、そうだね。変だよね……」


 気まずくなって視線をそらせると、マリーも当惑したように視線をそらせた。


「私を避けていたアリスの気持ちが分かったかも。こうやって思った以上に来られると、ちょっと困っちゃうね。うーん……」


 マリーがぼそっと言った。


 え、俺、重い!?


「ご、ごめん。その……マリーとは……」


 と言いかけて、何がいいたいのか自分でも分からなくなった。

 マリーのことは友達だとしか思えないと自分でも思っていたのに、今抱いているこの気持ちはなんだろうか。

 このマリーにすがりつきたくなる気持ちが友達に対する物だとは思えない。


 マリーからアプローチしてきたら、友達だとしか思えないのに、離れていったらこんなに恋しくなるって、もうなにがなんだか自分でもよくわからない。


「大丈夫。アリスは心配しないで。私がアリスの事いっぱい虐めて開発しちゃったからでしょ」


 と、マリーがクスッと笑った。


「そ、それも大きいかもね……」


 いろいろ触られたり、無理矢理ディープキスされたり、心地よいとは言えなかったけど癖になってしまっているのは間違いない。


「あーあ。ま、なるようになるかな」


 マリーがうーんと背伸びしてから、せいせいした顔で俺の頭をぽんぽんと撫でた。

 あう……反則。


「アリスはいろいろ深刻に考えすぎ。私まで深刻になっちゃったじゃん。とにかく仲良くしよう。それだけだから」


「う、うん、そうだね」


 俺もマリーの顔を見て、頷いた。

 そう、深刻に考えすぎだったんだ。

 もっと気楽に行こう。


 自分に言い聞かせるように頷いた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アリスもマリーもかわいい!! [一言] う〜んこの、絶妙なYURI。控えめに言って最高では?
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