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暇つぶし

 アルフォンスを顔を合わせないように、部屋にこもってベッドに転がった。

 眠くはないので起き上がって、暇つぶしを探す。

 といっても、テレビもスマホもパソコンも無い世界では、本を読むしか無い。


 ということで、ベッドの近くに置いてある本を見回してみたが、どれもいまいち読む気がしない。


「あ、そういえば、この前に買ったっけ……」


 ジャンと一緒にいろいろ本を買ったんだった。

 その後、いきなりダニエルとかがやってきて、結局全然読む時間が無かった。

 引き出しを開けて、服で隠してあった本を引っ張り出してみる。


「よ、よくこれだけ買ったなぁ……」


 官能小説15冊に、謎のハードカバーの本を3冊。

 すごい散財だ。

 そして、ゴタゴタしてたから全然見ていない。


「さすがに官能小説はやめとこう……。ってか、普通の本を一冊も買わなかったんだっけ……」


 我ながら露骨すぎて引く。

 もうちょっと普通の本も買っておけば良かった。

 あのときは変な風に盛り上がっちゃったからなー。


 そういえばこのハードカバーって中身なんなんだろう。


「えっと……」


 包装がしっかりしてあってそのままでは開くことが出来ない。

 厚紙でしっかり覆ってあるので、その厚紙を破って取り外す。


「さてさて……」


 こんな時に見る物では無いと思うが、物には勢いという物がある。

 じっくり見る気は無いが、どういうものか気になる。


 中身を確認するつもりで、適当なページをがばっと開く。

 そうすると、腕をのこぎりで切られている女性の絵が描かれていた。


「え゛……ええ!?」


 絵とは言え、凝視したくないので、あわててページをめくる。

 しかし、どれもこれも女性に刃物を突き刺されていたり、重しを載せられていたり、絶対に死ぬだろうという絵が並んでいる。


「う、うわ……うわ……」


 気分が急速に落ち込んでいき、数ページ見たところで本を閉じた。


 本を閉じても結構ダメージが残った。

 男の時は全然平気だったが、この身体になってからグロ耐性は全くない。

 そして、小説ばかりで絵というものをほとんど見ていなかった。

 久しぶりに見た絵が、女が痛めつけられているエロというよりグロい絵。

 かなり来た。


「た、高かったんだけどなぁ……」


 他の本を開きたかったが、中身が怖い。

 そっちもグロかったらきつい。


 ハードカバー類はすべて外国語で書かれていて、その言葉を読めない自分には中身が全く想像つかない。

 だからなんとなく立派そうな奴を三冊買ってみたのだが、それが間違いだった。


「他の二冊は……」


 そっちはグロくないかもしれないけど、どちらにしろエロいモノを見たい気分ではない。

 

 結局、引っ張り出してきた本は全部服の下にまた隠した。

 内容を知った以上、あのハードカバーの本は捨てたいくらいだ。


「あー……逆に嫌な気分になった……」


 ベッドに寝転がって、ゴロゴロ転がる。


「奴隷ねぇ……」


 天井を見ながら呟くと、男の時に見たエロコンテンツの数々が脳裏に浮かぶ。

 当然奴隷というのは、主人にエロいことをされまくる。


「って、考えるなって!」


 アルフォンスがそんなことをするとも思わないが、どうしても考えてしまう。


「もう……あぁ……落ち着かない……」


 仕事をしていた方が遙かに楽だ。

 寝ようとしても寝る気になれない。


 結局、ただただ落ち着かない時間を過ごしたのだった。


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