とても久しぶりの女モード
マリーの部屋に入ると、今日はマリーは本を読まずにぼーっとしていた。
「あぁ、よかった! 今日も本を読んでいたらどうしようと思って……」
マリーはぽかんした顔で俺を見た。
「ど、どうしたの? なにかあったの? あの二人に変なことされたとか……」
「いや、そうじゃないんだけど……」
何から説明すればいいのか。
「と、とにかく、なんかおかしい!」
「え?」
マリーが困った顔をした。
「お、おかしいの!」
戸惑うマリーの隣に腰を下ろす。
「ど、どうしよう」
「待って、意味が分からないから説明して」
マリーが俺の肩を叩いて説明を促した。
手短に、アルフォンスの所に行って無防備になりすぎたことや、体をなすりつけたくなったことを説明した。
「いつもそんな感じだと思うけど……?」
ところがマリーはそんなことを言って、首をひねった。
「え!? ま、まぁ、たしかに最近ベタベタしすぎだったけど……」
「最近じゃ無くて、最初からそうじゃないの?」
マリーがあきれたような顔をした。
そんな風に思われていたわけ!?
俺は女モードになったとき以外は理性的に行動してるつもりだったんだけど!
「い、いや、違うってば! そんなことないってば!」
「そうかな~?」
マリーがちょっと意地悪な目で俺を見る。
「でも、今は自分でもなにかおかしいって感じるのね……。最近なにかあったっけ?」
「マリーが俺のこといじめて遊んだりとか……」
まず思い当たるのはアレだ。
発情して大変に危険だった。
「あぁ、そんなこともしたよね」
マリーがなんでもないかのように言う。
そ、そんなノリかい!
「あのさ、今だから言うけど、あれでものすごくもやもやして大変だったんだよ。この身体ドMなんだから、ほどほどにしてよ!」
「え、あれで本当に悦んでたの?」
マリーが目を丸くする。
そういう言い方をされると、自分が救いようのない変態のように思えてくる。
たしかに身体はドMで変態なんだけどさぁ、一応理性はまともなつもりなんですけど。
「と、とにかく、それでもやもやしたり、今日はすごいタイミングでアルフォンスに頭撫でられたりして……」
「あれ、完全に惚れた顔をしてたよね」
マリーがふてくされたように言った。
「え、そんな顔してた」
「してた」
「う……ま、まぁ、そうなのかな……。とにかく、そんなかんじでアルフォンスのことがなんかこう……」
「はぁぁ」
マリーがうんざりしたようにため息を吐いた。
「私から言うのも癪だけど、最初から結構いい仲だったでしょ?」
「それは……女モードとかでいろいろやっちゃったのは認めるけど、今は女モードじゃ無いつもりなんだよ! とにかく変に暴走してる感じで、気持ちがあふれ出して……」
と、ここまで言って、気がついた。
少し前まではちょこちょこ女モードになっていたのに、自分の体質に気がついた最近は女モードにならないように行動している。
「もしかしたら……女モードになったらすっきりして元に戻るかも」
「え……それはどうなの? そもそも女モードになって大丈夫なの?」
マリーが不安な顔をする。
「わからないけど……今、本当にもやもやしてしょうがないんだ。この状態はちょっと耐えられない」
いますぐにでもアルフォンスにひっついて甘えまくりたい気分だ。
その勢いで変なことをしてしまいそうで、非常に怖い。
「だから……一瞬だけ女モードになる」
「女モードになるのあれだけ嫌がってたでしょ?」
「そうだけど、今……気分として……」
今の内心をマリーに言ったら怒られそうだ。
でも、言おう。
「はっきりいうけど、気分が……アルフォンスとベタベタしたい感じなんだよ。『自分は男だろ!』と、ツッコミを入れてもその衝動が消えてくれないんだ。な、なんか、変な風に燃え上がってて耐えられないんだよ……。女モードになって泣きわめくかもしれないけど、変なことをしないように見てて。お願い!」
頭を下げると、マリーはため息を吐いてから頷いた。
「……分かったわよ。で、戻ってくるキーワードって『ぶっくまーく』と『はーどでぃすく』でいいんだっけ?」
「そ、それ! 本当に危なくなったらそれで戻して欲しい」
こんな話をしているうちに、またしても心の中のマグマが燃え上がってきた。
アルフォンスに抱きつきたい……やばいぞこの衝動。
気持ち悪いのに、止まらない。
「でも本当に大丈夫? 逆に今は止めた方がいいかもしれないよ?」
「む、無理! 自分の衝動を抑えられないから!」
「わかった……もう聞かない。ほら、早くしてね」
マリーは諦めた顔で言った。
「うん、ありがとう」
よし、やろう。
気持ちを落ち着けるために深呼吸をした。
「私は女……」
言った瞬間に心に染みこんでいった。
繰り返すまでも無い。
そう感じた瞬間に目の前が真っ白になった。




