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異世界でTSしてメイドやってます  作者: 唯乃なない
第3章 元の世界に帰れる方法?
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レベッカ

 翌日、一晩明けると、体調も気分も落ち着いていた。


 やたら男っぽく振る舞いたいという気分がなくなって、割とニュートラルな気分になっていた。


 ん……それって普通なのか?

 ま、まぁ、いいや。


 体調も特におかしくなかったので、いつものように仕事のルーチンワークをこなしていく。

 途中でちょっと休みたくなって、ゲストルームの一つしか無いソファに座っていると、レベッカもやってきた。


 あ、レベッカか……。

 昨日、ジャンとデートをしてしまったのがなんだか悪い気がして自然と視線をそらしてしまう。

 いや、あれはデートじゃ無くて男同士の付き合いに過ぎないんだけどさ。


「あ、レベッカ……昨日はごめん」


「え?」


「昨日、ジャンと一緒に街に出かけたんだけど……」


「それはマリーから聞いたわよ。それがどうしたの?」


 レベッカが不思議そうな顔をする。


「レベッカとジャンってちょっといい仲だったんじゃないっけ。気を悪くしたかなって思って」


「は? だから別に今はなんでもないって。アリスが来る前にちょっと話をすることがあっただけ。アリス、気にしすぎ」


 レベッカが何でも無いように言う。


「あ、そうなんだ……」


「それよりさ、あいつに変なことされなかった?」


 レベッカがちらっと俺を見た。


「は? 無いって。そもそも、最後にアルフォンス立ち会いで俺の正体が男だってばらしたから」


「へー……言ったんだ」


 レベッカがじーっと俺の顔を見た。


「だ、だって、ジャンがなんか本気で落ち込んでたんだよ。本当は隠しておきたかったけど、放っておけなくて。ただ、シモンとエリクには言わないように言っておいた。シモンとか悪口いいそうだろ?」


「あぁ、そうね。あいつは言いそう」


 レベッカは頷くと、意味ありげにそっと近寄ってきた。


「な、なに?」


 レベッカは俺の隣に座ると、身体を寄せてきた。


「え……」


「ふふふ」


 レベッカは笑いながら、そっと俺の身体に手を回す。

 背中は変に触らないように気をつけてくれているみたいだけど、焦る。


「な、なに? あのさ……最近、なんかマリーに隠れていろいろしているみたいで、ちょっとよくないかと思うんだけど」


「前だって毎日キスしてたじゃん」


「そ、それはそうなんだけどさぁ……」


 なんかあのときと雰囲気が違うというか。

 なんかよりいけない感じというか。


「隠れてやってるのがよくないのかな。マリーの前で堂々とやれば……」


 でも、マリーの前でレベッカとキスするとか後ろめたくてできない。

 最初の頃は、むしろマリーに見せて『レベッカが酷い』と主張したいぐらいの気分だったのに、今となってはマリーに見られたくない。


「ふふ……」


 レベッカは俺を軽く抱きしめて笑うだけで、前みたいにキスしろって俺を恫喝したりしてこない。


「ん、んん……」


 俺は困って辺りを見回した。

 部屋に誰かが入ってくる気配があったら、すぐに距離を取ろう。

 これって、完全に隠れた浮気みたい。


 なんか逆にスリルがあってドキドキしてしまう。


 いや、ダメだって、これ。

 もっと健全に……


 そもそも、3人に掴まれて順番にキスさせられた時点で健全じゃ無いけど、今は別の意味で不健全な気がする。


 レベッカは俺を抱きしめてるだけで楽しいらしく、特に何もしてこない。

 嫌なことをしてくれば拒めるけど、この状態だと拒めない。

 そして、俺も別に嫌じゃ無い。

 むしろ心地いいくらいで……


「街はどうだったの?」


「あぁ……結構よかった。あんな近くに乗合馬車の駅があると思わなかったよ。お店も多いし、また行きたいかな」


「今度、私と一緒に行く?」


 え、そう来る?


「マリーが怒るかな……」


「うまくやればいいんじゃない? 私とアリスが別々の用事で休んで、外で落ち合うとかすればばれないよ」


 と、レベッカが小さな声で言う。

 本当に秘密を共有しているみたいな気分になる。


「まぁ、そうだけど……」


 って、この気分は完全に浮気。

 これ浮気の相談。


「じゃなくて、まずいってそれ……」


「なんで?」


「なんでって……えーと……」


 説明に困って口ごもる。

 ぶっちゃけた話、俺が嫌じゃ無いと思ってしまってるのがまずいのだ。

 前はマリーが唯一の癒やしだったのに、今ではレベッカも俺の中でありになってしまっている。


「とにかく、そうやって隠れてなんかやるの止めようよ」


「マリーの言ってることがちょっと分かったかも。困ってるアリスってかわいい」


 レベッカがぼそっと言う。


 ああ、もう、なんだよそれ。

 なんか顔が赤くなる。


 昨日まで完全に男モードだったのに、今日はなんかダメだ。

 っていうか、レベッカがダメだ。


「も、もう行くよ……」


 そっとレベッカの腕を振り払って立ち上がる。


「あ、そういえば今日もジャン達来ているわよ。シモンとエリクに変なこと言わないようにもう一度釘刺しといた方がいいかも。あいつら口が軽いから」


「来てるんだ。うん、そうだね。ちょっと釘を刺してくる」


 逃げるようにゲストルームを出た。


 今更だけど、どういう風にレベッカに接すればいいのか分からない。





○コメント

いつのまにか100話に……。

話ごとのぶった切り方が適当なので話数の意味はないですが、なんとなくうれしい。

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