チラ見せ
俺は台拭きを持って机の汚れと格闘していた。
「もう、なにこの汚れ」
俺の発した言葉は、かわいい女の子の声となって、俺自身の耳に戻ってきた。
といっても、それはいつものことで驚くことじゃない。
執務机についた汚れを台拭きでこする。
生菓子か何かのカスだろう。
乾いてしまって、しつこくこびりついている。
「もう、気がついたときにすぐに拭いてくれば、こんなこびりつかないのに」
力を入れて、台拭きでガシガシこする。
さすがの汚れも敗北を宣言し、順調に薄れていく。
汚れが落ちきったのを確認して、ちょっとした勝利感を味わう。
「ふぅ……」
体を起こして周りを見回す。
ここは書斎だ。
目の前には、この屋敷の主が書類仕事をする執務机が置いてあり、部屋の隅には本棚が並んでいる。
そして、部屋の奥の窓を覗けば、中世ヨーロッパ風の世界が広がっている。
もし自分がもっとヨーロッパに詳しければ、ドイツに近いのか、フランスに近いのか、あるいはイタリアに近いのか語ることができただろう。
しかしながら、自分の足りない知識ではどの国に似ているのかすらわからない。
「あー、前の世界でラノベとかなろうとか読みまくるばかりじゃなくて、ちょっとは本当のヨーロッパの歴史とかも勉強しとけば良かった……」
景色を見ながら、思わずつぶやく。
窓の外には石造りの建物が並び、区画と区画の間の道を馬車がゆっくりと進んでいく。
実際にはここは中世ヨーロッパでもなければ、地球でもない。
どこかしらない世界の、どこかのしらない国の、どこかの知らない街だ。
建物の様式がヨーロッパのようだ。というだけだ。
「いまさらだけど、こんな異世界に飛ばされるとはね……」
そんな風につぶやいてから、また掃除を再開した。
日本にいるときは異世界と言ったら、「冒険者」とか「モンスター」とか「魔王」とか「ギルド」とかそんなものがあるのが当たり前だと思っていた。
しかし、この世界にはどれ一つ無い。
貴族と平民というくくりがある古い世界だが、現実のヨーロッパと違って内戦も少ないようで極めて平和だ。
魔王やモンスターが襲ってくることもないし、それを討伐する冒険者も勇者もいない。
「しかも、この身体……」
手を止めて、下を向く。
メイド服を着た下半身が見える。
実用的なメイド服で色気もクソもないが、その身体が華奢であることがよくわかる。
といっても、自分の身体なので、いちいち見なくても分かっている。
メイドをしていることから分かるだろうが、今は女の子の身体だ。
おそらく15-16程度の身体年齢だ。
日本にいたときは男子大学生だったし、もっとガタイが良かったのだが。
とにかく、その落差が酷すぎる。
「はぁ……ま、そんなことより、今日は棚の上をやってやるか」
書斎の奥にある棚を見上げた。
普段はこの部屋で屋敷の主が仕事をしているので、あまり埃が立つような掃除ができない。
今日は書斎が無人なので、普段掃除できないところも掃除をしたい。
ただ、本棚は高さがあるので、身長155cm以下と思われるこの体では本棚の上には手が届かない。
足場になりそうな台をみつけて、それを本棚の下まで押していくことにした。
「よしっ。んぐっ……重いぃ! んぐーーー」
しかし、台がなかなか重い。
力を込めてもなかなか動かない。
「っはぁ……っはぁ……。私にはきっついなこれ……」
この少女の身体、はっきりいって非力だ。
男だったときと比べて、体感的には半分以下だ。
「も、もういいや。えーいくそ、なんで非力な『俺』がこんな重い台を使わないといけないんだ!」
やけくそ気味に言って、言葉遣いを『男言葉』に変更した。
原理は分からないのだが、男言葉を使うと、無意識に身体の仕草まで雑になる。
つまり、勢いまかせ、力任せに動くことが出来るようになる。
「こんちくしょーー!!」
勢いで台を押したら、台はようやく動き始めた。
勢いでそのまま本棚の前まで移動をさせる。
床は絨毯だから重い物を引きずっても傷はつかないはずだ。
「っはぁ! ああ、くそ、重かった!」
悪態をついて、汗を拭った。
すると、書斎の扉が開く音がした。
振り返ると、屋敷の主が入ってくるところだった。
この屋敷の主は地方貴族の長男で、二十代後半だ。
名前はアルフォンスという。
青みがかった黒髪で、背が高いそこそこの美男子だ。
その男を見ながら、俺は乱雑に胸元をつかんで服をパタパタ動かして服の中に空気を入れた。
「あ、これから埃が立つ掃除をしようと思ってんだけど、仕事する?」
男は俺の様子を見て、顔をしかめた。
「おいおい、アリス、お前仕事中はメリハリつけて『女言葉』でがんばるとか言ってなかったか?」
「あ」
雇い主であるこの男は、俺の正体を知っているが、俺が男言葉を使うとあまりよい顔をしない。
ちなみに、アリスというのは同僚のマリーが仮でつけてくれた名前だ。
「すみません、ちょっと気合い入れてた物で。でも、別にちょっとぐらいいいとか言ってませんでした?」
「今、客が来ているんだ。お前に会わせるから、ちゃんと普通のメイドっぽく演じてくれ」
「え、この屋敷にお客さんが!? この屋敷は、誰も客がやってこないんじゃ無かったんですか!?」
いままで約1名を除いて、客が来たのをみたことが無い。
「馬鹿、たまには来るんだ! いいから、仕草と言葉遣いを演技してくれ!」
男はそう言ってから、廊下に出た。
廊下から話し声が聞こえる。
男とお客さんがなにか会話をしているようだ。
「お、お客さんか……ええと、私、私……私は当屋敷のメイドでございます」
俺はすこし深呼吸をして、仕草に注意して、言葉遣いも女言葉になるように気をつけた。
よし。
すると、アルフォンスと白髪の上品な老人が書斎に入ってきた。
「本当にお久しぶりです。まさかあんなところで出くわすとは思いませんでした」
「私もですよ。バロメッシュ家はご盛況のようでなによりです」
「いえいえ、これもすべてあのとき助けていただいたおかげです」
アルフォンスがおじいさんに何度も頭を下げる。
そう、この世界のジェスチャーは日本に近く、自分もそれで大分助かっている。
やってきたおじいさんはアルフォンスの恩人らしい。
「それで……こちらが噂の他の世界からやってきたお嬢さんかね」
と、おじいさんがこちらにチラリと視線を向けた。
「は、はい。バロメッシュ家でメイドとして働かせていただいているアリスと申します」
背筋をピンと立ててから、できるだけ優雅にお辞儀をした。
メイドとして雇われている以上、主人に恥をかかせるのはよくない。
「ご丁寧にどうも、お嬢さん。しかし、これが元男性だったとは思えないですな」
と、おじいさんがアルフォンスに話しかける。
その言葉を聞いて、一瞬、腰が砕けそうになった。
最近、いろいろ噂が広がってしまっていて、初対面なのにこの美少女の身体に入っているのが男だと分かっている場合がある。
そういう場合、非常にやりにくい。
女っぽく振る舞うと「変に演技しやがって」と思われるかもしれないが、男っぽく振る舞うと「はしたない女性」に見えてしまう。
「ま、まままま、まぁ、そ、そうです。元々男です」
俺は噛みそうになりながら返事をした。
「ほほぉ……」
品のいいおじいさんが遠慮がちに、しかしがっつりと俺を見てくる。
うわっ
すごく対応に困る。
ふざけた男相手ならまだ対応できるが、品のいい人にじろじろ見られると、本当にどういう風に反応すればいいか分からない。
顔が赤くなっている気がする。
「おっと、すみません。じろじろ見すぎましたかな。なにしろ、あまりにも可愛らしい容姿なもので」
と、おじいさんが視線を外す。
よ、よかった。
ってか、『かわいい』とか褒められると、ますます恥ずかしくなるから止めて欲しい。
転生したときに身体が変わったわけだけど、理性は男のままなのに無意識が完全に女性用に入れ替わっている。
かわいいとか言われると、この身体はアホらしいほど反応するんだよ!
「いやいや、お気になさらないでください。中身は男ですから遠慮などせずに、聞きたいことがあればなんでも聞いてやってください!」
と、アルフォンスがおじいさんに言う。
アルフォンスは普段は結構俺にも配慮してくれるナイスなご主人様なのだが、今は自分の恩人にいい顔をする事で頭がいっぱいらしい。
「そ、そうですかな」
おじいさんは男に押されて、俺の前に出てきた。
「こんな機会があるのならもっと前々から質問を考えておいたのだが……さて、何を聞こうか」
「な、なんでもお答えいたします」
できるだけ素直な女の子っぽく返事をする。
「そうだな……元に居た世界と比べてこちらの世界はどうかね?」
と、おじいさんが悪気無く聞いてきた。
これは回答に困る。
本音を言うと『めちゃくちゃ遅れた世界ですね。電気も無いとか不便で仕方がない。せめて魔法くらいあればいいのに、それもないなんて夢が無い』となる。
この世界、物理法則は元の世界と同じらしく、魔法とかスキルとかそういうものは全然無い。
そして、科学技術ははっきりいって現代日本とは比べものにならない。
でも、品のいいおじいさんにこんな失礼なことは言えない。
「い……いい世界です。皆さんにもよくしてもらっていますから」
と、ちょっと苦しい感じで答えた。
「ほお、そうかね。他の世界から来たお嬢さんにそう言われるとちょっとうれしいよ」
と、おじいさんが軽く微笑みを浮かべる。
よ、よかった。
「おい、受け答えが堅いぞ」
と、男が近づいてきて何気なく俺の肩を叩いた。
ゾクッという感覚が全身に走った。
「ひぃぃっ!?」
思わず悲鳴を上げた。
な、なにをするんだよ!
「な!? お、おい、馬鹿、変な声を出すな!」
男が慌てる。
俺の顔を見ていたおじいさんも視線をそらした。
俺は振り返って男をにらみつけた。
「だ、だから、いきなり触らないでって言ってますよね!? めっちゃ敏感だってわかってるでしょ!?」
そう、この身体、なんかあり得ないほど敏感なのだ。
転生してきた当初よりはマシになってきているものの、それでも超敏感だ。
いきなり見えないところから触られると、つい悲鳴がでてしまう。
そしてその悲鳴が、初対面の人には『本気の悲鳴』に聞こえてしまうらしい。
さきほどまで笑顔を浮かべていたおじいさんが、気まずそうにしている。
「あ、き、気にしないでください。前の身体とは全然違う身体なので、神経が追いついていないらしくて……。こんなのは、いつものことなので、ほんと、気にしないでください」
少しわざとらしくテンションを上げて、おじいさんを和ませようとする。
「そ、そうかね」
おじいさんが少しだけ笑みを浮かべる。
よ、よかった。
「そ、そうなんです。やたらと大げさで困ってるんですよ。ははは」
男も照れ隠しのように笑う。
「この前なんか、こんな風に頭を触っただけで……」
と、男が無造作に俺の後頭部に手を伸ばした。
あ、おい、馬鹿!
「ふあっ……」
変な気分がして、脱力しそうになる。
あわてて、近くの物に掴まった。
よく見ると、掴まったのは男の腕だった。
「お、おい、離せ」
男が慌てる。
「は、離せじゃないでしょ……ひ、人前で不用意に触んないでください。な、何度言えば分かるんですか!」
なんとか体勢を整えて、おじいさんに無理矢理笑顔を向けた。
「す、すみませんね! この身体、どういうわけだか後頭部を触られると力が抜けちゃうんですよ。い、いつもの事ですから、あんまりお気になさらず……」
「そ、そう、そういうやつなんです。この前の背中を触られたくらいで悲鳴を上げて……」
と、男が無造作にこちらの背中で指をスライドさせた。
説明しておくと、この身体の背中、特に背筋近辺の神経の感度はやばい。
ば、馬鹿ぁぁぁぁ!!!
「ひううううっ! ひっ……んぐぅっ……ん……んん……」
ちょ……や、やば、こらえろ。
初対面の品のいいおじいさんの前で変な痙攣とかしたら、どんな目で見られるかわからない。
「な……なな……なんでもありません。ほ、本当に、ただ敏感なだけで……」
息を整えながら無理矢理笑顔を浮かべる。
しかし、おじいさんは完全に引いている表情を浮かべている。
え……
嫌な予感がして、横を見る。
この書斎の壁には等身大の大きな鏡が掛かっている。
そこに映っていたのは、肩まで伸びた銀髪が印象的な美少女。
人形ですか?と聞きたくなるような整った顔に、華奢な身体。
もちろん、映っているのは俺だ。
そして、その美少女がメイド服を着ているところまでは、問題ない。
しかし、問題なのは、その美少女が顔を真っ赤にして、もじもじしながら何かに耐えながら細かく痙攣していることだ。
こ……これは、やばい!
絶対に誤解される!
「い、いやっ! ち、違いますから! あの、本当にただ単純に敏感なだけで、勘違いしないでください!」
「そ、そうかね……」
おじいさんは困ったように視線をそらしたままだ。
「さ、騒がしくてすみません」
と、アルフォンスが頭を下げる。
だから、あんたのせいだっての!
「ア、アルフォンス君、話の続きは食堂でしようじゃないか」
おじいさんがあからさまに俺から距離を取っていく。
うわ、本気で誤解された!
違う、変な意味で痙攣してたわけじゃ無い!
「そ、そうですね」
アルフォンスも咳払いをして、おじいさんと一緒に書斎を出て行く。
取り残された俺は、がっくり肩を落とした。
「あー……」
ぐったりしたまま、机の上に放っておいた台拭きを取りに行く。
絶対に変な意味に取られた。
もう二度とあのおじいさんに会いたくない。
まぁ、多分会うことは無いだろう。
ちなみに、おじいさんの前で良識ぶっていたアルフォンスだが、普段は結構俺のことをおもちゃにしてくる。
いい加減にしてもらいたい。
「や、やば……まだちょっと震えてる……」
台拭きを一度置いて、震える手を握って押さえ込んでいると、扉が開いてマリーが入ってきた。
マリーは同僚のメイドだ。
身体的に1~2才年上で、身長もマリーの方が高い。
金髪がきれいで、顔の整った美少女だ。
「アリス、またなんかえっちぃ感じになってる……」
と、マリーがあきれた顔をする。
「い、いや、じ、事故だから。な、なんもないよ」
「分かってるけど、その顔を人に見られたら誤解されるよ」
「もう誤解された……」
と、顔をそむけると、マリーが「あー」とすべてを察した顔をした。
「ア、アルフォンスが悪いんだよ。話の流れだとしても、普通は本当に人の身体をさわらないだろ!?」
「その顔で言われても、怒りながら喜んでいるようにしか見えないのが困るのよね」
と、マリーがため息を吐いた。
「心外なんだけど」
そう答えると、マリーがちょっといたずらっぽく笑った。
「で、ちょっとご主人様に焼き餅焼いちゃった。私に焼き餅を焼かせたお詫びに、ちょっとキスしてくれる?」
そして、マリーが至近距離まで近づいてきた。
「え、仕事中はそういうことやめようって言ったじゃん」
「もう、堅いなぁ。じゃ、私から」
と、マリーが顔を近づけてきて、唇に押しつけてきた。
やわらかい唇の感触を感じて、慌てて俺の方から離れる。
「い、いや、仕事中だから! な、なんか、やけに積極的だね……」
「だって、今のアリス、すんごい誘ってるよ」
と、マリーが笑いながら俺の顔をのぞき込んだ。
「誘ってない! ってか、まじでこんな状態を知らない人に見られるとか最悪すぎ……はぁ……」
「まぁまぁ」
マリーが俺の頭をポンポンと叩いた。
後頭部でなければ、頭を触られても心地よいだけでそれほど問題ない。
「うーん……」
頭を撫でてくるマリーの顔を見る。
「なに?」
マリーが首をかしげる。
さて、そろそろ作品紹介をしていこう。
この作品に登場するメイドの一人『マリー』だ。
いろいろあって、マリー側から恋人認定されて、所有権まで主張され、このように可愛がられたりキスされたりしている現状である。
なんで女の体になっているのに同僚の少女とキスをしているんだと読者諸君は疑問に思っているだろう。
しかしそれを語るには、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
「でも、仕事中のキスはやめてよ」
「なんで?」
と、マリーが首をかしげる。
「仕事中にキスとかしてるところを見られると……またレベッカにも襲われる」
レベッカもこの作品に登場するメイドだ。
赤毛でちょっと目つきが悪い女の子だ。
やはり自分より年上で、体格も大きい。
ちなみに、彼女ともキスをしている。
というか、させられている。
今では一日一回まで頻度が低下しているが、以前はもっと酷く、仕事中だろうとなんだろうと日に三回も四回も要求された。
完全に搾取である。
お前は同僚のメイドとキスばかりしているのか、と読者諸君はあきれて居るであろう。
残念ながら否定できない。
でも、うれしくないと言うことは強調しておきたい。
クールぶってうれしくないとか言っているわけではない。
本当にうれしくない。
しかし、これについて詳しく語るには、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
やはり、詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
「それもそうね」
と、マリーがちょっと考える顔をした。
「そんで、レベッカが騒ぐと今度はコレットも騒ぐし」
コレットも同僚のメイドで、登場人物の一人である。
年下のそばかす眼鏡の小柄な読書好きの女の子だ。
コレットともやはり毎日キスをさせられている。
彼女のキスはムードもへったくれもなくただただ時間だけが長いキスだ。
その長いキスがどれほど長いかご興味がおありかもしれないが、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
やはり、詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
「そうねぇ。あと、クロエが来るって手紙が来てたけど」
と、マリーが爆弾発言をする。
「え……まじ? 帰ったばっかりじゃなかった!? また来るの!?」
クロエというのは豪商のお嬢様だ。
もちろん彼女も登場人物の一人であり、マリーと共に俺の所有権を主張している人物だ。
彼女についてご興味がおありかもしれないが、彼女について語るべき項目はあまりに多く、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
やはり、詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
「クロエが来るとまた取り合いになるから、本当に止めてほしい……」
俺はため息を吐き出した。
クロエが来たときに、マリー・レベッカ・コレット・クロエの4人で俺の取り合いになったのだ。
元男なんだから、さぞかし楽しんだのだろう。と思うかもしれない。
しかし、考えてもらいたい。
コレットはこの身体よりも小さいが、クロエは自分と同じ身長で、マリーとレベッカに至っては俺より身長が大きい。
自分より大きい2名を含んだ4名に囲まれてみてほしい。
はっきり言って恐怖しか無い。
端から見る分にはうらやましく思えるかもしれないが、当事者になってみるがいい。
無力な自分という物を心の底から味わうことが出来る。
当時の取り合いの状況と俺の精神的苦痛にもご興味がおありかもしれないが、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
やはり、詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
「今度はさすがに大丈夫じゃ無いかな。あと、ジャン達がアリスの空いてる日を聞いてたけど、まさかあの人たちともなにかやってるの?」
と、マリーが話題を変えた。
ジャン・シモン・エリクはこの屋敷に手伝いで来ている3人の少年だ。
詳細については省略するが、彼らにも頬や額にキスをしたことがある。
だが逆に言えばその程度であるので、読者諸君は想像をたくましくしないようにお願いしたい。
彼らがどういう人物で、なんで俺が男相手キスをしてしまったか。
それについても釈明したいところだが、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
やはり、詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
「いや……そういうつもりはないんだけど」
「あと、ダニエルという方からもまた来てほしいという手紙が来てたけど」
と、マリーがつぶやく。
ダニエルはこの館の主であるアルフォンスの友人だ。
詳細については省略するが、その男も俺を狙っている節がある。
だが、俺はダニエルとはキスとかしていない。
何でもかんでも会った人全員とキスをしているのではないか、と疑いをかけられているかもしれないが、それは濡れ衣だ。
「ダニエルは、まぁ……いいんだよ。問題はあいつの相方……」
俺とダニエルとはある企画を立ち上げているのだが、そこへ協力者として入ってきた男が問題なのだ。
多くは語らないが、その男のあだ名は『変態紳士』。
だいたい、想像がつくだろう。
もう二度と会いたくない。
『変態紳士』にご興味がある変態な読者もいるかもしれないが、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
やはり、詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
「ほんとに、アリスはモテるよね。でも、私のものだからね」
と、マリーが俺の額を突っつく。
「う、うん……」
俺は曖昧にマリーに返事をした。
そもそも、なんでこんな状況になったのだろう。
どう考えても、乱れすぎている。
しかも、この世界に来てから結構経っているのに、まだ日本に帰れる方法が見つかっていない。
状況を理解してもらいたいのだが、それを説明するにはそれなりに文字数が必要で……やはり、残念ながらこの紙面はあまりに狭い。
ということで……
やはり、詳しく知りたい方には、本文を読んでいただく他ない。
※この作品は定期的にタイトルが変わります。そういうお遊びをしています。
○後書き
この作品の元のアイディアは、「体がいきなり変化したら神経のバランスおかしくなるに違いない」というとても真面目な考えだったんです。
ところが、この考察を元に作者の前作の「逆」をやっていったら……
なんか、こういう作品ができちゃったんですよ。
物語と言うよりアイディアで試作品を作ってみた感じですので、「まともな物語」を読みたい方にはおすすめしません。
この冒頭を見た時点でおわかりかと思いますが、想定以上に「アレ」な作品になってしまっています。
肌に合わない方は即座にブラウザバック推奨!
さて、まだ後書きを読んでいるあなたのために、この作品が生まれた詳しい経緯を説明しよう!
前作は「この転生系クソラノベにはヒロインが居ません」という作品を書きました。
この作品は異世界転生テンプレの「面白い要素」を全部削って、『女性キャラ出演なし』『チート要素一切なし』『テンプレ系の楽しい展開全部なし』という異世界転生の極北な作品でした。(でもギャグ)
今思うと、無謀な物を書いた物だと自分で感心します。
さて、新しく作品を書くにあたり、似たようなことをやっても芸の幅が広がらないと思いました。
そこで、実験的な意味でこの前作の真逆をやってみることにしたのです。
○主人公を逆に
前作は主人公が男でしたので、「体がいきなり変化したら神経のバランスおかしくなるに違いない」というアイディアと「逆」を組み合わせてTS主人公(男→女)になりました。
理性は転生前を引き継いでいますが、体もホルモンも脳の構造も女性なので、感覚・知覚は完全に女性そのもの(あるいはそれ以上に鮮烈)です。
そのうえ、突然の身体変化で神経のバランスが崩れており、めちゃくちゃ敏感な体質となっております。
○女の子の登場頻度を逆に
前作では男ばかりで女性キャラが主人公側に一切出てこなかったので、逆にして主人公の周りに女の子が群がってくる作品にしました。
どんどんアタックしてきます。
○チートを逆に(無→有)
前作ではチート要素がなかったので、本作では容姿チートをあげました。
主人公はチートがないと思っているようですが、容姿だけで十分チートです。
作者は主人公に厳しいので、魔法とかご都合特殊能力は許しません。
主人公には容姿と現地で困らない言語能力だけで我慢してもらう必要があります。
○王道展開を許可
前作ではテンプレ展開を全部否定するスタンスでした。
そのためかなり書きにくかったのですが、本作は「むしろストレートOK! おもしろけりゃなんでもいい!」と開き直り、使えそうなテンプレ・ネタをガンガン使いました。
TS作品で使えそうなネタを詰め込んだら、男キャラまで増えてしまいました。
男もどんどんアタックしてきます。
でも、なんだかんだ、テンプレから違反している点も多い気がする……
このように「前作の逆」をやっていったら、こういう作風の作品に仕上がってしまいました。
そして、普段むさい男しか出てこないギャグ作品を書いている作者には、加減が分かりませんでした。
「ま、どうせ実験するための作品だし、ええやろ! 全力投球や!」
この全力投球スタイルはいつもと同じです。
→そこらのなろう主人公よりもモテまくる主人公になりました。
→感覚が敏感なことを表現しようとした結果、いろいろアウトな気がする文章が出来ました。
→そして、読み直しながら困惑する作者自身
あれ……もっとギャグっぽくなると思ったんだけど?
なんか……違うような?
しかも、面倒くさい日常描写を省いて人間関係だけに絞って書くようにしているのに、想定以上に文字数が膨らんで困っています。
本当は第一稿は全部書き上げてから投稿したかったのですが、キリが無いので、どんどん投稿していきます。