第一話、私はエリー〈転生と魔力無しの予感〉
―――ご臨終です。
62歳、千村喜代は娘夫婦と孫に看取られて眠りにつきました…
そう思っていたはずなのに…どうして…
どうして知らない人に囲まれてるのー!?
「嗚呼!よかった!熱が下がったみたいだ!40℃も熱が出て凄く心配したんだからな!」
え、誰ですか?この顎鬚の立派なダンディーなおじ様は
「よかったわ!エリー、お母さん、あなたが死んでしまうと思って毎日神様に治りますようにってお祈りしてたのよ、ほらエリー、いつものようにお母さん大好き!ってハグして?」
うっわ、美人なマダムまできたよ…って、ん?待てよ?二人ともこっちむいて話しかけてきてない?
エリーって誰?
…もしかして…私がエリー…とか?いやいや、ないない!そんな、孫の見ていた小説じゃないんだから…アハハ…
「どうしたの?エリー、お母さんとハグしてくれないの?」
「エリー、どうしたんだ?お前、お母さんを見るといつも抱き着いていたじゃないか…まさかまだ体調が悪いのか?」
やっぱりこっち向いて喋ってるよね……よし、聞いてみよう。
「…あ…あのー、エリーって私のことですか?」
「何を言っているんだ!冗談はよしてくれ!」
あ、やっぱり違ったのか…よかtt((
「お前以外に私たちの愛する愛娘のエリーがいるっていうのか!」
「そうよエリー、冗談でもそんな悲しいこと言わないで」
あー、そうきたかー(泣)でも、本当に分からないってこと、言わないと…
「本当にあなた達が誰なのかわからないんです。それに私、千村喜代って名前で、エリーではないんです!」
言ってしまった…怒ってるよね…せっかく娘の病気が治ったと思ったのにじつは違う人だったなんて…
「そんなわけあるか!…そんなこと…そんなことがあるのか?」
あるの!本当に!
「まさか!熱で記憶がおかしくなってるのかしら?」
「そうだ!きっとそうだ!そうに違いない!」
えっ…まさかそんな風に思うなんて…
「よかった!記憶がちょっとおかしくなっているだけなのね!…呪いじゃなくって良かったわ…」
誤解、解けませんでした…
それから数年は、私は記憶喪失の少女ということになり、この世界のことを勉強しました。
例えば、この世界はみんな魔力を持っていてそれを使って生活していること、たまに魔力を持たない子がうまれてくること、それはとても恥ずかしいことであること、魔力無しの子は、どんなに愛された子であっても捨てられてしまうこと、それは、エリーの両親の一緒ということ。
魔力の測定は10歳で行われるということ。
魔力には、地、水、風、雷、火の基本属性、光、闇、音、重力の特殊属性があって、それぞれにマスターと言われるその属性の専門家がいるということ、エリーの父は光のマスターであるということ。
それに、エリーのことのついても調べた。
エリー・リュミエール、私が転生したときは3歳、今は8歳。
好物は母であるクリス・リュミエールの手作りシチュー、
両親のことは大好きだが、父のアレン・リュミエールのことが少し怖いと思っている。
兄弟はおらず、使用人とも仲がいい。特に侍従長のクロエはどこへ行くのも一緒。
ざっとこんなところかな?
あと、心配なことは私はもう8歳になるのに魔法が使えていないこと。
まわりの子はもう簡単な魔法なら使えているのに…
…もしかして私って、魔力無しなのかな?