③キンキンマイク
【前奏】
カラオケは何回も来ていて慣れている方だと思うが、今来ているお店は初めてのお店なので、イントロと同時くらいに急にミラーボールみたいなものが発動したり、いつもと結構違いがあって戸惑っている。
【AメロBメロ】
いつもは本人映像で慣れているので、いつもとは違う機種になって本人映像ではなくなり、その代わりに流れている映像の動きや色彩がかなり激しすぎたり、マイクが少しハウリングを起こしたりと、全然集中が出来ないでいた。
【サビ】
サビに入ってから、太陽のテンションが急に上がったのか、太陽がこの部屋の様子を急に気にし始めたのか、サビ前よりも余計に太陽がこの部屋を覗き込んできていて、そのせいでガタガタガタと音程は乱れに乱れた。
【間奏】
代わりの照明はどこにもないので、仕方なくチカチカを続けるミラーボール的な照明を消して、カーテンのない窓にはメニュー表で目隠しをして、壁のカラフルでトリッキー過ぎる絵と、テレビ画面で流れる激しい映像は我慢して、マイクを構えた。
【AメロBメロ】
気にしないようにしていたはずの、壁にある何だかよく分からない抽象的な絵が、また気になりだすと、それがなかなか抜けてくれなくて、たまに起きる小規模のハウリングと相まって、芸術性が部屋を突き抜けるくらい半端ないものになっていた。
【サビ】
この曲のサビが物凄い好きで、このサビを歌うことだけに命を懸けていて、サビを歌えれば何も要らないと思っていたのに、サビの第一音目で大規模のハウリングを起こしてしまい、そのハウリングによって、やや下の辺りで保っていた気分は、一気に削がれた。
【後奏】
歌を精一杯歌い切った今、太陽はどこかに行き、ミラーボール的なものもスイッチで消していなくなり、バックに流れていた映像も落ち着き、壁の絵も馴染み始めたのだが、トイレから帰ってきた友人の金色のトップスが光ったことにより、驚いて発した私の声はマイクに思い切り入り、本日最大のハウリングが起こってしまった。