②バンサンカイ
【前奏】
ちゃんとしたディナーショーなら、もっと興味を持ってくれるだろうし、普通のカラオケでも、もっと興味を持ってくれると思うのだが、僕が歌おうとしている今、どこにも属さない貪りがここにはあった。
【AメロBメロ】
歌い始めても他三名の視線は食べ物の方にあり、歌詞は見なくても歌える曲だったので他三名をずっと眺めながら歌っていたが、そのうちの一人がしっかりとした形のウマイという口をずっと繰り返していた。
【サビ】
サビ頭の歌詞には、食べ物の名前が出てきて、食べるのに夢中になっていた他三名が一瞬ビクッとなったが、何もなかったように普通に、食事から目線を逸らすこともなく、ひたすら食べ続けていた。
【間奏】
ちゃんと聞いているのかを他三名に聞いてみたら、無視することはなくこっちを向いてくれたのだが、口にパンパンに入れすぎた他三名の口からは、モゴモゴという微かな音しか聞こえてこなかった。
【AメロBメロ】
テーブルに置かれたものは、ほとんど食べ終わったみたいで、三人とも僕の歌に横揺れをしてくれていたが、次第に縦揺れもしだして、それがカラダを揺らして食べたものを下に降ろす、フードファイターがやるようなことだと、すぐに気が付いた。
【サビ】
食べ物の名前の歌詞が出てきて、美味しそうな食べ物がミュージックビデオに出てきて、チラッと他三名は画面を見ていたが、それも長くは続かず、他三名の顔はすぐにメニュー表に隠されてしまった。
【後奏】
歌い終わって、特に邪魔されることなく、みんなの食事を邪魔することもなく歌えたなと思っていると、いつ注文したのか、いいタイミングで店員さんが入ってきて、さらに大量の皿を並べはじめ、最後の晩餐のような雰囲気はいつまでもいつまでも続いていった。