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難攻不落の魔王城へようこそ~デバフは不要と勇者パーティーを追い出された黒魔導士、魔王軍の最高幹部に迎えられる~【Web版】  作者: 御鷹穂積
第五章◇勇者に憧れた黒魔導士の魔王軍参謀が、伝説に挑む話

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267◇エアリアルパーティーVSエクスパーティー2/天の底に

 



 俺とエアリアルが採った選択は、奇しくも同じだった。

 魔力器官をフル回転させ、生成した魔力を聖剣に流し込む。

 聖剣の力で魔力を圧縮・純化させることで質を高め、続く魔法の効果を上げるのだ。


 全ての第二段階参加者の目標は、二つある。

 『目の前の一戦に勝つこと』と『最終戦で勝つこと』だ。


 前者だけに力を注ぐべきという者もいるかもしれないが、ヘトヘトになった状態で、最強の魔王と最高の勇者に勝てるだろうか?


 ――有り得ない。


 故に、考えねばならない。

 いかに、有限の力を消費せずに勝ち抜くかを。

 俺とエアリアルでいえば、精霊の魔力だ。


 こんな判断、少し前までの俺ならば出来なかった。

 仲間はもう充分やってくれているのだ。

 自分がなんとかしなければと、自分を追い込んでしまったかもしれない。


 けれど、今は言える。


「みんな、少しの間、任せるよ」


 俺の仲間たちは強い。

 そして、そんな仲間たちを勝たせるために、俺は戦う。


 【嵐の勇者】と【漆黒の勇者】が聖剣を握った状態で動かず、双方の仲間だけが動き出した。


 爆発音。

 吹き荒ぶ風と、紅焔の光。


 【先見の魔法使い】マーリンと【紅蓮の魔法使い】ミシェルの巨大な火炎球がフィールド中央で激突し、爆ぜたのだ。

 並の魔法使いなら数分は魔力と魔法式を練る必要がある規模だ。

 それを、二人は一瞬で放った。


 爆風がフィールドを撫で、俺たちの服がバサバサと揺れる。


 ギリ、とミシェルが歯を軋ませた。

 魔法を使う時はテンションが上がる彼女にしては、珍しい仕草だった。


「どうしたんだいミシェル。いつもの、楽しそうな顔の方が君には似合うよ?」


「……マーリンちゃん、前より強くなってない?」


 ミシェルの言葉に、マーリンはなんてことのないように答える。


「あぁそのことか。杖が強化されてね、これでも聖杖らしい。天才の私の杖が加護を帯びてしまった……こういうのを、鬼に金棒と言うのかな? なぁ、東国のことわざだろう? マサムネに合っているか聞いてくれないか?」


 マーリンはいつもの調子だ。

 ミシェルは応じず、絞り出すように声を漏らす。


「……火属性でさ、負けるわけにはいかないんだよね」


 ミシェルの異名は突出した火属性から付けられたものだ。

 それが開始直後の一発だけとはいえ、マーリンに相殺された。

 そのことが、ミシェルの自負を傷つけたのか。


 万能の天才マーリンは、残念ながら器用貧乏とは違う。

 なんでもそつなくこなすが突出した点がないのではなく、全ての要素が突出しているのだ。

 それは、一属性を極めんとする多くの魔法使いを絶望させるには、充分過ぎる才覚。


「もうフェニクスに負けているじゃないか。彼を除いた場合の最強なんてもの、私に奪われて何が悔しい」


 マーリンは大切な仲間だが、言葉を選ばず言えば――性格が悪い。

 気に入った人間ほど困らせたがる。


 彼女が気に入った人間を煽る時、それは効果的に機能する。

 相手のより大きな力を引き出すのだ。


 ミシェルから、莫大な魔力が発せられる。

 それは彼女の頭上高くで、先程よりも二回り大きな火炎球となった。


それ(、、)、わたしは認めてないんだ~」


 世界一位パーティーの者が、絶望に屈するわけもない。

 たとえ万能の天才だろうと、四大精霊に愛された勇者だろうと。


 道を譲りはしないという、意地。


「いいね、素晴らしい。それでこそ、燃えるというものだ」


 マーリンから聖杖に流れ込んだ魔力が、魔法へと昇華される。


「――――」


 ミシェルが目を見開いた。

 彼女には分かるのだろう。


 それが何か、理解できるのだろう。


 故に言葉を失った。


究極の精霊術(、、、、、、)を指して、深奥と言う。では、究極の魔法(、、、、、)はなんと呼ぶ?」


 巨大な、火の鳥だった。


「……(てん)……(てい)


 ミシェルが、うわごとのように呟く。


 魔法は精霊術を劣化させたものだと言われている。

 人間にも使えるレベルに落としたものなのだと。


 人間が精霊術を使うには、特別な才能を持つ【勇者】に目覚めた上で精霊に気に入られるか、精霊憑きとなって武器に加護を施してもらうしかない。


 じゃあそれ以外の人間は、決して精霊術の領域に届かないのか。

 精霊に愛されるかどうか、その巡り合わせの有無で、自分の限界が決まってしまうのか。


 かつて、そんな現実に抗い、限界を超えた者がいた。

 精霊に選ばれなかった者は使えない筈の精霊術の縁に、手を掛けた者。

 理を歪めるほどの執念、熱量、努力が実現させた、有り得ない可能性。

 人の身のままでは辿り着けない筈の天界、その底に辿り着いたかのような、偉業。


 それを指して、天底級魔法と言う。

 現在、天底を扱えるとされる人間は二人いる。



 一人目。

 元世界ランク第一位【不屈の勇者】アルトリート。

 彼が扱えるのは風属性の天底級。


 本来であれば人類史上に語り継がれる偉業だが、現在の評価はそうなっていない。

 理由は幾つかあるが、風属性だったことが大きい。


 深奥を使える、四大属性『風』を司る勇者が、同時代にいたこと。

 更には、エアリアルパーティーが、アルトリートパーティーを超え一位になったこと。

 その年に、アルトリートパーティーが解散してしまったこと。


 より強い光に世間の関心が集まったことで、彼の凄まじさは浸透しなかったのだ。

 最高の勇者の驚嘆すべき技は、時代に恵まれず世間には評価されなかった。


 だが、知る者は知っている。

 それがどれだけ、凄いか知っている。



 二人目。

 元世界ランク第一位【大聖女】パナケア。

 瀕死の重傷さえ治してしまうその技量は、白魔法の極地といえる。


 不遇【役職(ジョブ)】でありながら、世界一位のパーティーにおいて重要なメンバーであると世間に知らしめた、圧倒的才覚。

 その時代の常識を覆した、真の天才。

 その天才もまた、子を愛する気持ちから一線を退いた。



 そして、ここからは非公式。


 三人目。

 世界ランク第二位【先見の魔法使い】マーリン。

 彼女が成し遂げたのは、四大属性全ての天底級到達。


 精霊との再会を望み、魔法の道を極めた彼女の到達点は、人類の限界を突破した。

 扱える技の多さが強さというわけではない。それは当然。

 だが、今この時代、魔法使いとして最も優秀なのは、マーリンだ。


 最後に、四人目。

 元世界ランク第四位【最良の黒魔導士】レメ。

 彼の黒魔法は、もはや黒魔術と見分けがつかない。


 二百人の盗賊全員に黒魔法を掛けるだけでなく、複数の効果を使い分け、適宜切り替えるなど人間業ではない。

 なによりも恐ろしいのは、あれだけの力を持ちながら、本人は満足していないことだ。

 まるで、もっと上があることを、身を以って知っているかのように。


 この時代は、どこかおかしい。

 俺を含めて四人の深奥到達者、そして四人の天底到達者。

 そして、世界最強の魔王。

 世界が平和になって以来、この時代が確実に、最も強き者たちが集う時代だ。


 少し前までなら、弱気になっていたかもしれない。

 こんな時代に生まれたなんて不運だ、とかなんとか。

 だが、今はこう思える。

 なんという幸運だろう。

 強き仲間と共に、強き敵を打ち倒せば、俺たちが一番強いと証明できる!


 マーリンが笑う。


「君のことは大好きだよミシェル。けれど今日、証明しよう。最も精霊に近い魔法使いは、私なのだと」


「……それでも、負けないっ! 君が、一番優秀なんだとしても――火属性(これ)だけは、譲らないから……!」


 ミシェルの火炎球が、使い手により注ぎ込まれた魔力により更に膨らむ。

 それはまるで太陽のようだった。

 


 最高峰の魔法使いたちによって、世界が紅く照らされる。






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◇『魔女と魔性と魔宝の楽園』◇

・書籍版①発売中(サーガフォレスト)大判小説
・コミック版、企画も進行中

i798260/


◇『骨骸の剣聖が死を遂げる』◇

・書籍版発売中(DREノベルス)大判小説
・コミック版、企画進行中
i799587/


◇『難攻不落の魔王城へようこそ』◇

・書籍版①~③発売中(GAノベル)大判小説
・コミック版①~⑧発売中(ガンガンコミックスUP!)
i781730/


◇『復讐完遂者の人生二周目異世界譚』シリーズ◇

・書籍版①~④発売中(GCノベルズ)大判小説
・コミック版①~⑦発売中(ライドコミックス)
i793341/
― 新着の感想 ―
[一言] アルトリートと師匠比べて、断然師匠だしエアリアルとアルトリート良くて同格だろって思ってたんだけど、アルトリートの株上がってくるじゃん!
[一言] アルトリートさんが風魔法の天底を使えたのもレイスが風魔法得意だった理由の一つなのか
[一言] この戦いが終わるまで更新待つつもりだったのに、我慢できずに読んでしまった…。 まだ始まったばかりなのにめちゃ熱いじゃないですか つ、続きが気になる…
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