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難攻不落の魔王城へようこそ~デバフは不要と勇者パーティーを追い出された黒魔導士、魔王軍の最高幹部に迎えられる~【Web版】  作者: 御鷹穂積
第五章◇勇者に憧れた黒魔導士の魔王軍参謀が、伝説に挑む話

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252◇怪物たちの抽選会(後)

 



『フルカスパーティーは~~~~はいっ、「92」でーす!』


 ペーセルさんの元気な声。

 黒騎士姿のフルカスさんはこくりと頷くと、そのまま下りていく。


『ふーちゃんは今日もクール可愛いなぁ。あ、「92」だと赤組だね』


 四つのトーナメント表は、それぞれ赤青白黒と呼称される。

 割り振られた番号もランダムで、『1』から『25』がそのまま赤組、とはならない。


 今、スクリーンで赤組が拡大され、『92』の表示が『フルカスパーティー』に変わった。 


 既に十数パーティーの番号が判明している。

 視聴者が特に気にしているのは、やはり高位の冒険者や有名な魔物がどうなるか、だろう。


 五つの魔王城、五人の魔王。彼ら彼女らはいかにバラけようとも、必ず二人が同じ組に割り振られることになる。


 第一段階を突破した十二人の騎士団長率いるパーティーも、騎士団同士で戦う機会が巡ってくるかもしれない。


 現代に三人集まった四大精霊契約者も注目の的だろう。


『アストレアパーティーは、えぇとね――「19」だね』


 予選でその強さを見せつけた【正義の天秤】アストレアパーティーは、白組。

 その横、対戦相手の枠は既に埋まっていた。


『わぁ、初めて一回戦の相手が決まりましたねー! 予選で【湖の勇者】レイスパーティーと【炎の勇者】フェニクスパーティーに挟まれながら制限時間が尽きるまで戦い続けた驚異の騎士団長! アストレア選手率いるパーティー! その初戦の相手は~? なんとなんと、みんな大好き「ゆきぼうや」シリーズの著者でもあるこの御方っ! 世界ランク第六位【雪白の勇者】スノー選手率いるパーティーとなりましたー!』


 ペーセルさんが、アストレアさんに近づきマイクを向けた。


『意気込みとかあったりしますかー? 聞けたらとても嬉しいなぁーなんて、思うんですけど』


 アストレアさんは今日もキリッとした顔つき。彼女の抑揚のない声が、会場に広がる。


『騎士団に敗北は許されない。正義の剣が折れてしまえば、民を守ることなど出来ないからだ』


『なるほど! 誰にも負ける気はない、ということですねー!』


『その金色の髪、すごく綺麗だね』


『シトリーちゃん! わたしも思ってたことを! でも今関係ないから我慢してたことを!』


『……よく分からないが、感謝する。もう失礼してもいいだろうか』


 アストレアさんがステージから去る。


 次々と、強者たちの番号が明らかになり、彼ら彼女らの組が確定されていく。

 内、会場を震わせた幾つかのものを挙げるならば――。


 ◇


『今、エリーちゃんが登録証をたっちしましたー! 気になる数字は~ででん! 「38」ですー。赤組だね。んん? もしかしてこれって――』


 エリーパーティーの対戦相手は、既に埋まっていた。


 会場がざわつく。

 僕らと共にレイドで冒険者を迎え撃った世界ランク第九十五位【絶世の勇者】エリーパーティー、第一回戦の相手は。


 世界ランク第四位【炎の勇者】率いる――。


『……フェニクスパーティー、だね』


 シトリーさんの声がそれを告げた時、エリーさんが獰猛に笑ったのを、僕は見逃さなかった。

 ペーセルさんにマイクを向けられたエリーさんは、銀の髪を自分で払い、後ろに流してから言う。


『勝つわ』


 短く、力強い言葉。

 この空間には他にも運営の人たちがおり、すかさずフェニクスにマイクとカメラを向ける。


『以前も宣言した通り――』


 フェニクスも、燃える眼でエリーさんを見返す。


『私達の戦いに、二度と敗北はない』


 レイドでは共にレメゲトンの仲間として戦った二人の勇者。

 彼らが公の場で激突する機会が、ここに確定した。


 ◇


 世間が受けた衝撃で言えば、あるいはこちらの方が上という組み合わせがあった。


『さてさてみなさん! これから最強の冒険者がくじを引きますよー! 世界ランク第一位と同じ組になる不運? あるいは幸運? それを掴むのは一体どなたたちなのかー?』


 世界ランク第一位【嵐の勇者】エアリアルさんが、登録証を装置に触れさせる。


 フェニクスパーティーを抜けた僕を探し、自分のパーティーに誘ってくれた【勇者】。

 タッグトーナメントでは、世間からの僕の評価を知りながら、解説として高く評価してくれた。

 レイドでは強大な敵として魔王城深部まで侵攻し、互いの限界値を更新するような戦いを経験させてくれた。


 人類最強は誰かと問われれば、大抵の者は彼の名を挙げることだろう。


『番号は~なんと奇しくもこの数字! 「1」です! 白組ですねー。――あ』


 ペーセルさんが素で固まったのが分かった。


『……そうか。こうなるか、これは実に――楽しみだ』


 エアリアルさんの声を、マイクが微かに拾う。


『対戦相手は世界ランク第二位――【漆黒の勇者】エクスパーティー、だね』


 エクスさんとは、オリジナルダンジョンで共に戦った。

 彼はとても強くて心優しい人だが、それ故にある悩みを抱えていた。

 仲間に恵まれたと強く感じているからこそ、長く一位に届かないことに苦悩していた。

 ダークの試練では弱っていた心を突かれ、一度は理想の世界に囚われてしまったほど。


 しかし、もう違う。

 今のあの人は――。


『どうやら、今日の俺は随分とツイているらしい』


 彼の顔に、もはや翳はない。


『それはお互い様だね、エクス』


 一位と二位の視線が交わり、互いに笑みを浮かべる。


『俺たちの方が、強い。それを証明しよう』


 今のエクスさんには、絶対に一位に至るという強い心が戻っている。


『受けて立つとも』


 一位は一位で、更なる高みへの研鑽を欠かさない。

 早くも一戦目で、最強の冒険者パーティーを決める対戦カードが成立してしまった。


 ◇


 注目を集めるのは冒険者だけではない。


『元より強者の集いとは言え、こうなると運命を感じてしまうね』


 【六本角の魔王】アスモデウスさんが、妖しげな声で言う。

 一回戦の相手を知った彼女が、ステージ上で漏らした言葉だ。


『そうは思わないかい? なぁ――パイモン』


 彼女の視線の先にいるのは――長身の美しい、男装の麗人。

 鋭い眼光と隙のない佇まいから、近寄りがたさを感じる。


 そこまで考えて、僕は頭を振る。


 何を考えている。女性ではない。知っていた筈なのに、彼を見たその瞬間にどうしてもそう浮かんでしまった。

 彼。そう、男なのだ。


 『南の魔王城』またの名を『超級・冠絶のダンジョン』の支配者。

 【万天眼の魔王】パイモン。


 第一段階で世界ランク第十一位【灰燼の勇者】ガロパーティーを倒したのも、彼のパーティーだ。


『気色悪いこと抜かすな。そのようなことで一々運命など感じてたらキリがない』


『自分の胸が高鳴ったら、何度目だろうとそれは運命なのさ』


『そうか。そのようなものがあるのなら、お前は一回戦で消える運命だよ』


『おや、私と君では感じたものが異なるようだね』


『そのようだ』


 東西南北の魔王城、そのトップ同士が率いるパーティーもまた、初戦で激突することになった。


 ◇


「じゃ、行ってくるよ」


 いよいよレイスパーティーの順番となった。

 名前を呼ばれたレイスくんは普段と変わらぬ様子で、ステージに向かう。


 トーナメントは百組を四つに分けたもの。

 二十五組ずつということで、いわゆるシード扱いの枠が多くなっている。


 レイスくんの引いた番号も、そんな枠の一つを埋めるものだった。

 僕らが戦うのは、一回戦で勝ち抜いたどちらかのパーティーになる。


 レイスくんは――アスモデウスさんに微笑みかけた。


『これも運命?』


 アスモデウスさんは一瞬僕を見て、それからレイスくんの視線に応えるように微笑んだ。


『あぁ、ドキドキするね少年』


 南の魔王か北の魔王か。

 どちらかのパーティーが、僕らの初戦の相手になる。


 ◇


 そして、全ての組み合わせが決まった。


 僕らの組には【六本角の魔王】アスモデウスパーティー、【万天眼の魔王】パイモンパーティーを始めとした多くのパーティーが集まった。


 どの組も、激戦必至。


「ねぇ、レメさん。フェニクスさんと戦えなくて残念?」


 レイスくんがそんなことを言う。


 フェニクスパーティーは赤組、僕らは黒組だ。

 トーナメントで当たることはないし、共にトップに立っても最終段階では共闘する仲間になる。


 つまり、この全天祭典競技であいつと敵として戦うことはないのだ。


「そういう気持ちも少しはあるよ」


「少しなんだ」


「うん。そこまで気にするほどのことじゃあないから」


「へぇ?」


 レイスくんは一瞬意外そうな声を出したが、すぐに考え込むような顔になり、やがて頷いた。


「そっか。そうだね、今回戦えない(、、、、、、)なんて、考えてみれば些細なことだ」


 彼も分かったようだ。


 確かにこの大会は、僕やレイスくんにとって特別なものだ。

 レイスくんはお父さんと、僕は師匠と、戦えるかもしれない機会なのだから。


 けれど、僕とフェニクスは、何もこれきりではない。

 最高の勇者を目指す限り、この先何度でも矛を交える機会は訪れるだろう。


 今日じゃなくても、いつかまた道が交わる。

 ならば焦る必要も、残念がる理由もない。


 ふとあいつの方を見ると、あっちもこっちを見ていた。

 何故か微笑むので、僕は顔を顰める。

 するとフェニクスは口許を押さえ、噴き出すのを堪えるように笑う。


 僕はやつから視線を外した。


「戻ろうか。出来れば同じ組になったパーティーへの対策を考えたいんだけど……」


「それはいいけどさ、ブレイン。なんか楽しそうじゃない?」


「え?」


「緩んでるよ、口許」


「……そんなことないよ」


「へぇ?」


 リーダーからの疑うような視線を受けながら、僕らは歩き出す。


 魔王だろうと、騎士団長だろうと、勇者だろうと、他のいかなる強者だろうと、関係ない。

 全部勝つ。


 隻角の師を思う。僕に己の角を分け与えた、最強の魔王のことを考える。


 ――伝えたいことがあるんだ。


 そしてそれは、戦いの場でしか叶わないものだった。

 ならば、そこまで行くだけだ。




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◇『魔女と魔性と魔宝の楽園』◇

・書籍版①発売中(サーガフォレスト)大判小説
・コミック版、企画も進行中

i798260/


◇『骨骸の剣聖が死を遂げる』◇

・書籍版発売中(DREノベルス)大判小説
・コミック版、企画進行中
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◇『難攻不落の魔王城へようこそ』◇

・書籍版①~③発売中(GAノベル)大判小説
・コミック版①~⑧発売中(ガンガンコミックスUP!)
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◇『復讐完遂者の人生二周目異世界譚』シリーズ◇

・書籍版①~④発売中(GCノベルズ)大判小説
・コミック版①~⑦発売中(ライドコミックス)
i793341/
― 新着の感想 ―
[一言] もうこの作品の虜です。魅力的な登場人物ばかりで、でもそれぞれの個性がしっかり確立されていて、好きが溢れます。 今回のフェニクスのセリフ、めちゃくちゃ震えました。最後のレメの覚悟と決意も震えま…
[良い点] 激熱やんけ。
[良い点] 何いちゃいちゃしとんねん幼馴染
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