230◇色んなパーティーで一緒にパーティー
「あんたらを負かしたやつらが、全員揃ってんだぜ? 気になったことがありゃあその場で聞けるじゃあねぇか!」
「…………それは、しかし」
「それに騎士でも分かるだろう? 疲れたら癒やしがねぇと。働いたら休む、飯食う、楽しく語らう、これが必要だ。まさか騎士団ってのは、仕事終わりに別の仕事を重ねるような職場なのかい?」
「いや、そのようなことは決して……。だが、その、我々のような者が混ざっては、貴殿らの気も休まるまい」
「あー? おいレメ、この姉ちゃん何を言ってるんだ?」
急に話を振られて少し驚く。
いや、僕とアストレアさんが一緒に話しながら出てきたからだろうけど。
意図を察し、僕は本心を語る。
「僕で良ければ今回の話、いくらでもしますよ。それに、アストレアさんの話も伺いたいです。もちろん、仲間の皆さんの話も」
彼女たちはみんな、とても強かった。
ポイントだけ見れば僕らの勝利かもしれないが、局地的にはとても圧勝とは誇れない。
何か一つ、些細なタイミングでもズレていればこちらの仲間が何人も退場することになっていたかもしれないのだ。
「俺も俺も。あの魔力も精霊術もすごかったし、騎士団の話とか中々聞けないしね」
レイスくんも言う。
「……良いのだろうか」
それでもまだ躊躇う様子を見せる彼女に、声を掛ける者がいた。
「おい、堅物騎士! 他人どうこうじゃなくて、お前さんが来たいか来たくないかだろうが!」
アストレアさんをそう呼ぶのは、ヴォラクさんだ。
「堅物騎士ではなく、私はアストレアだ」
「で?」
やがて、【正義の天秤】は言った。
「……迷惑でないようなら、参加させてほしい」
「おし来た! 大歓迎も大歓迎よ!」
ガロさんが手を叩いて喜ぶ。
「ケッ、最初からそう言えよな」
ヴォラクさんも口ではそう言いながら顔は笑っている。
「す、すげぇメンバーだ……」「トップはトップ同士でってことか」「一体どんな話すんだろうな……」
予選の最後まで残っていた僕らは、普通に行けば最後に通用口を出た選手ということになるだろうか。
僕ら以前に退場した選手達は、別途モニター室で会場の様子を確認出来たようだ。
ガロさん達だけでなく、他の参加者達もまだまだ周囲にいた。
有名パーティーや魔物が集まっているのだ、気にもなるというもの。
しかしこれはよくない。
そろそろ、彼が……。
「遠巻きに眺めてぼそぼそ言ってんじゃねぇぞ! オレはそういうのが嫌いなんだ!」
ガロさんが叫び、みんながビクッとする。
やっぱり。
だが彼の近くにいる僕らは、続く言葉にも想像がつく。
「気になんならもっと近づいて来い! 混ざりてぇならそう言え!」
ガロさんは遠慮が嫌いなのだ。
「あ、あの! 俺たちも参加してもいいでしょうか!」
「おう! 好きにしろ!」
ガロさんは結構来るもの拒まずだ。
彼の言葉を聞いて、次々と声が上がる。
ガロさんに誘われたのは光栄だし、参加者が増えるのも問題ないが……そろそろ人数がすごいことになってきた。
「兄さん……? 僕に競技場でも貸し切れっていうのかな?」
「宴に掛ける金は気にするもんじゃない、オレが出す」
「お金以外にも問題は沢山あるんだけど……」
ブラウさんの普段の苦労が窺える。
「そのことなんですが、ちょっと相談したい人がいて」
「おぉレメ! そういやお前はこの街初めてじゃなかったな!」
「えぇ」
「レメさん、その話詳しく聞いても?」
僕はブラウさんとしばらく話す。
「なるほど、なるほど……。ではそのあたりお任せしても? 僕の方で料理やお酒は手配しますから。もちろん、お酒が苦手な人用の飲み物も」
「えぇ、相談してみます」
そして僕とブラウさんはそれぞれ動き出し、結果としてそれぞれ上手くいった。
僕は場所の確保、ブラウさんは料理や飲み物の確保と運搬。
進んで手伝ってくれる者達も大勢いたようで、あちらもなんとかなったようだ。
◇
しばらく経ち、『始まりのダンジョン』内。
「急なお願いですみません」
「いえいえ、レメさんの力になれるなら嬉しいですから」
「受けた恩の一欠片でもお返し出来れば幸いです」
オークのダンジョンボス・トールさんとケンタウロスのメイド・ケイさんだ。
二人には【寛大なる賢君】ロノウェと【零騎なる弓兵】オロバスというダンジョンネームもある。
僕はトールさんを訪ね、魔力空間を貸してもらえないかと頼んだのだ。
会場は祭典競技の運営に貸しているので、第一層・ゴブリンの森を貸してもらうことになった。
別に魔力空間に生身で入ってはならない、なんてことはないのだ。
対外的には、僕とオロバスさんがタッグトーナメントで戦ったことを機に知人となり、その縁で今回のことも頼んだ……という形にしてある。
「しかし、よろしかったのですか? あれでは、私とレメ様の関係を勘ぐる者もいると思われますが」
「え?」
「えぇっ!? あぁでもそうか……レメさんとケイがこ、こ、恋人? かも? 的な? 勘違いを? する人がいるかもしれないのか……」
トールさんの反応に、ケイさんが微笑む。
「ふっ、何を慌てているのかしら」
「あ、慌ててなんか……!」
「レメ様は亜人への偏見もなければ、とてもお優しくその上優秀。わたくしとしては噂されて嫌な気分ではないわね」
「ぐぅっ……レメさんがすごいのは同意だけれど……ぐぅっ」
ちょっとケイさんがトールさんをからかいがちではあるが、今日も二人は仲がいい。幼馴染というだけはある。
あ、幼馴染といえば。
「レメ……ガロ殿がそろそろ乾杯すると」
フェニクスが来た。
「あぁ、今行く。あの、お二人も一緒にどうぞ」
「そ、そうですか? へへ、じゃあお邪魔して」
「ブタ主。今宵は予選参加者の宴なのよ、我々は辞退すべきでしょう」
「うぅ……ブタ主はやめてってば……。というわけでレメさん、またの機会に」
ケイさんに引きずられて、トールさんが遠ざかる。
「大事なダンジョンを快く貸してくれるだなんて、信頼されているのだね」
「そうだと嬉しいよ」
特別に許可を貰い、大きな火を焚いてそれをみんなで囲んでいた。
大量の食べ物と飲み物、広々とした空間に、大勢の人。
宴の前のわくわくがある。
「少しずつ、昔のレメに戻っているようだ」
「は?」
戻りながら、僕たちは言葉を交わす。
「いつもみんなの中心だったろう?」
「あんまり思い出したくないんだけど……」
子供たちのリーダーぶってた自分も、その後【役職】が判明して孤立した事実も、思い出して楽しいものじゃない。
「済まない。だが嬉しくてね」
魔王軍参謀になったり、レイスパーティーでも指揮を務めたり、そのあたりのあれこれか。
「……ガロさんに絡まれてるお前も、ちょっと昔みたいだったけどな」
頼りなげで、上手く思っていることを言えない感じ。
ガロさんと話すのは嫌ではないが、ちょっと距離が近くて困惑していて、しかしそれをスムーズに言葉に出来ないといった具合だった。
今更あれくらいで僕の助けは必要ない。
昔のようでいて、僕らは変わったし、今を生きている。
「なるほど、あまり思い出したくはないものだね」
「だろ?」
僕たちはどちらともなく笑う。




