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第七話:元魔法使いサトーを訪ねる

 冒険者ギルドから出た三人は、とりあえず、ヒッキー・ヤマモトが操っていたゴーレムを倒した冒険者に会いに行って、話を聞くことにした。

 まだ、一人はこの村に滞在しているらしい。


 冒険者ギルドから教えてもらった名前は、サトー。

 かなりベテランの冒険者で、男性の魔法使いらしい。

 自分たちも泊っている宿屋の一階部屋にまだ居るようなので、訪ねてみた。


 一階の廊下を奥の方まで歩く。

 サトーが泊っている一番日当たりが悪く、安い部屋の扉をケンが叩いた。

 なかなか出てこない。

「どこかに出かけているのかなあ」とケンたちがしゃべっていると、ようやく扉が開いた。


 パジャマ姿の男が立っている。

 無精髭を生やし、顔が青白く幽霊のようだ。

 ケンが少しびくつきながら、

「魔法使いのサトーさんですか? ヒッキー・ヤマモトのゴーレムを倒したそうですが」と聞くと、

「ああ、俺がサトーだ。もう魔法使いじゃないけどね」と力なく答えた。

「魔法使いじゃないって、どういうことですか」とナオミがびっくりする。

「どうもこうも魔力が無くなってしまってな。パーティからも見捨てられたよ」と言って、サトーは部屋に招き入れてくれた。


 部屋の中は、カーテンも閉まって薄暗く、テーブルの上には食べ残しの物が腐ったまま置いてあったり、床にもゴミが散乱している。

 何となく荒れた生活をしているようだなとケンは思った。

 テーブルに座ると、

「お金が尽きたらここから追い出される。そしたら野垂れ死にだな」とサトーが暗い顔でつぶやくように言った。


「病気か何かで、お体を悪くされたんですか」とナオミが聞く。

「何の病気かはわからないが、一月前くらいにヤマモトがこの村に現れたときに、ゴーレムを倒したんだ。魔法でゴーレムの頭部を粉砕したら、あっさり倒せたよ。ヤマモトはさっさと逃げて行った。で、その次の日くらいから高熱が出て、調子が悪くなったんだ。気がついたら魔力が消えていたんだよ。体調はだいぶ回復したが、それよりも魔法が使えなくなったのがショックで、今はこんな有様だ。もう終わりだな」とサトーが投げやりな感じで答える。

「それって、ヤマモトが悪さしたせいなんですか」とケンが聞いた。

「いや、奴とはその後、会っていない。俺が気づかなかったかもしれないけどな。またはヤマモトとは全然関係ないかもしれない。自分でもよくわからないんだ」


 サトーから見えないところで、ヤマモトが何かの魔法でゴーレムを倒された仕返しをしたかもしれないと思ったナオミは、

「ハナちゃん、なにか体の調子が悪いとかある?」と聞くと、

 ハナは首を振って、

「悪くない」と全然元気そうだ。


 そのハナを見て、サトーが、

「もしかして、この子が村中で評判になっている、ゴーレムを斧で倒した女の子かい」と聞いてきた。

「ええ、そうですが」とケンが答える。

「こんな小さい女の子が凄いなあ」とサトーが言うとまた満更でもないという表情をハナがしている。

「力の強いナガーノ族なんです。かなり田舎のナガーノ山出身です」とナオミがハナを紹介する。

「そうなんだ。俺も田舎に帰るかなあ」と言うサトーを見て、もう冒険者を続けるのをあきらめているのかとケンは思った。


「ヤマモトについて、何か知っていることはありますか」とケンが再び聞く。

「いや、数か月前に突然現れたということしか知らない。あんな魔法使いがいるとは全く知らなかったよ」

「ヤマモトは他の村にも現れて暴れているって、冒険者ギルドで聞いたんですが」

「ああ、確か、ウラーワ村の他に、コシガーヤ村、アゲーオ村、カワゴーエ村に現れたってのを聞いたことがある」

「その村々でゴーレムを出現させたんですか」

「ああ、復讐だとか言いながら、ゴーレムが倒されるとさっさと逃げる。いったい何の復讐をしたいんだろうか。本当にわけのわからない奴だな」と答えるサトーを見て、ベテランの冒険者にとってもヤマモトは不可解な奴とすると、やっぱりヒッキー・ヤマモトとは、頭のおかしい奴じゃないのかとケンは思った。


 だいたい情報は得たので、ケンたちはお礼を言って帰ろうとすると、ハナが例の布袋をエプロンのポケットから出す。

 サトーに差し出して、

「あげる」と言った。

 やばい! とナオミは思ったのだが、サトーは袋の中身を見て、

「おお、蜂の子じゃないか。これ、美味しいんだよな」と喜んでいる。

「俺にくれるのか」とサトーが聞くと、ハナがうなずく。

「ありがとう。今や食費も足りなくなりそうなんでな」

「栄養ある」とハナがまた言った。


「サトーさん、ナガーノ山出身なんですか」とナオミが聞くと、

「いや、隣のヤマナーシ郡出身だ。ド田舎だな。君たちも食べるかい、さっとバターで炒めると美味しいぞ」

「うん」とハナが嬉しそうにうなずこうとするが、その顔をケンが後ろから両手で隠す。

「あ、いや、けっこうです。色々と、どうもありがとうございました」とそそくさに礼を言って、ケンとナオミはハナを引っ張ってサトーの部屋を出る。


 廊下でハナは不満げな顔をしてケンを見上げた。

 その表情を見て、

「いや、食費も困っている人から奢ってもらうのは悪いだろ」とケンはごまかす。

 けど、もしかしてけっこう美味しいのだろうかとも思った。


 宿屋から外に出て、

「さて、どうしよう。ヤマモトはいろんな村に出現して暴れまわっているようだが、全ての村で奴が現れるのを待ち構えていることなんて出来ないし」とケンが悩んでいると、

「村役場に行きましょう」とナオミが何か考えがあるような顔をして言った。

「村役場に何の用があるんだ」

「調べたいことがあるの」とナオミはさっさと先頭を立って歩いていく。

「何だよ、教えろよ」

「ひみつー!」といたずらっ子みたいにナオミがケンに向かって、笑顔を見せる。

「ったく、ケチくさいなあ」とケンは不満げな表情を浮かべた。

 その二人の様子をキョロキョロと見比べながら、ハナは斧を担いで後をついていく。


 村役場に着くと、ナオミは周辺の村の場所がわかる地図を事務員に見せてもらうよう頼んだ。

 地図を受け取ると、役場のカウンターテーブルに置いて、

「ここが私たちのいるウラーワ村、その他に、北にアゲーオ村、北東にコシガーヤ村、北西にカワゴーエ村。この四か所がヤマモトが現れた村よ」と今言った村の場所を指でナオミが示す。

 ハナは背伸びして何とか地図を見ている。


「それがどうしたんだ?」とケンが聞くと、

「ほら、ヤマモトが現れた村を線で結ぶとだいたいひし形になるじゃない。で、その中央にはヒカーワ神殿がある。ここにヤマモトがいると思うんだ」とナオミが答えた。

「そこにヤマモトが隠れているってわけか。けど、なんでヒカーワ神殿にいるって思ったんだ」

「ゴーレムが倒されたとき、神殿に戻るってヤマモトが言ったの」

「よく覚えてたなあ」とケンが感心する。

「ナオミ、頭いい」とハナがナオミを見上げて言った。


「けど、ヒカーワ神殿のすぐ近くにオーミヤ村があるけど、そこにはヤマモトは現れていないようだけど、どうしてだろう」

「あんまり近すぎて、まずいと思ったんじゃないの。自分の隠れ家がばれてしまうから」

 場所を選んで活動しているとすると、完全に頭のおかしい奴ってわけでもなさそうだなとケンは思った。

「ナオミ、頭いい」とまたハナが見上げて言った。

「エヘヘ、けど、全く見当違いかもしれないけどね」

「いや、行ってみよう、ヒカーワ神殿に」とケンが言った。

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