第三話:冒険者ギルドに登録
ケンとナオミはハナを連れて、新たに自分たちのパーティにメンバー登録するため、村の冒険者ギルドに行った。
冒険者ギルドの主人が、さきほどゴーレムが暴れた際に壊された窓の具合を見ている。
「えーと、新たにパーティに加えたいメンバーがいるんですが」とケンが話しかけると、
「おお、さっきの子か。凄いな、あのゴーレムを一発で倒すとは。以前のゴーレムより二倍はある大きさだったのに」とギルドの主人がハナを見て、感心した顔で言った。
ハナは満更でもないという表情でニコニコしている。
「あの、小さい女の子でも冒険者になれるんですか」とちょっとナオミが心配そうに聞く。
「特に規定はないよ。ただ、小さい子は冒険者になんてなろうとしないけどね。けど、この子の場合、あの怪力を見ればもう立派な冒険者だな」と主人が笑った。
「冒険者!」とハナが片腕を振り上げて、喜んでいる。
ハナはギルドの窓口カウンターの端を両手で掴んで背伸びをしながら、やっと顔を覗かせて、キョロキョロしながらギルドの主人が書類仕事をしているのを、大きな目で興味深そうに見ている。
「この娘はナガーノ族だな」とギルドの主人がハナを見ながら言った。
「何でわかるんですか?」とケンが聞く。
「手の甲に刺青があるだろう」
ハナの右手の甲に、丸い円に横に線が一本、縦に曲線が一本交差している刺青が彫ってあった。
「それがナガーノ族のシンボルだ。『ナ』を円形の中に描き、勇ましく飛んでいる鳥の姿を作り、横棒を中心に、山とそれを湖に映す姿を表しているようだ。ナガーノ山の自然とナガーノ族の友愛と団結を象徴しているって聞いたことがある。ナガーノ山の高地に住んでいる少数民族で、力が強い。原始的な生活をしていたが、最近は木を伐採して、それを売って生計を立てているみたいだな」
「ナガーノ山ってどこにあるんですか」とナオミが聞く。
「ここから北西の方にある遠い場所だ。かなりのド田舎だな。まあ、首都メスト市の住民から見れば、俺たちが住んでいるウラーワ村もド田舎だろうがな」とギルドの主人が冗談まじりに言いながら、
「おい、お前さんはどこで俺たちの言葉を覚えたんだい」とハナに尋ねた。
「あたしの山に来た人。教えてくれた」とハナが答えた。
「それにしても、本当にあのゴーレムを一撃で倒すとは凄い娘だな」
「俺たちもびっくりしましたよ。こんな怪力の冒険者はそういないですよ」
冒険者ギルドの主人とケンが自分のことを話しているのを聞いて、ハナは嬉しそうな表情を見せる。
「そう言えば、なんであんな大きい四角い石がいっぱい置いてあったんですか。以前、この村に俺たちが寄った時は見当たらなかったんですが」とケンが冒険者ギルドの窓を通して、石が置いてあった場所の方を指さした。
「アラ川にダムを作ったんだ。南のイワブーチ村付近にある。もう完成したが、業者が余ったコンクリートのブロックを勝手に置いていきやがったんだ。いわゆる不法投棄ってやつだよ。ヤマモトの奴は何度かこの村で暴れているんだが、今回のゴーレムが普段の奴より大きかったのは、そのブロックのせいだろうな。処分に困っていたんだが、バラバラになったんで片付けやすくなった。ありがとな」と主人がハナに向かって言うと、
「ドウイタシマシテ」とハナが答えた。
「コンクリートって何ですか」とケンが質問する。
「よく知らんが、砂利と水を何かの接着剤で固めたもんらしい。硬くて頑丈だ。昔からあったみたいだが、誰かが最近、改良して大量に生産しているらしい。いろんな建築に使われるようになったみたいだ。首都では主流らしいぞ。あんまり使われ過ぎて、政府の役人と業者との贈収賄事件まで起きているって話だ」
「ダムって、堰堤のことですよね。土を盛れば作れるんじゃないですか」とナオミが聞くと、
「いや、コンクリートのおかげで、すごい大きいのが作れるようになったんだ。君たちも見に行ったらどうだ」と主人に勧められた。
アラ川と言えば、この前、サイクロプスに襲われたことをケンは思い出した。




