第十八話:超巨大ゴーレム
超巨大ゴーレムがゆっくりと動き出した。
ズシン、ズシンと地響きを上げて、そこらの中の建物を破壊しながら進んで行く。
市民は悲鳴をあげて逃げ惑い、パニック状態だ。
「タナカ、お前はこのバカでかいゴーレムで、王宮を破壊するつもりなのか」とフサ将軍がタナカを追及すると、
「違うよ」とタナカがニヤリと笑った。
ナオミがゴーレムの歩く方向を見ると、巨大ゴーレムは北へ向かっている。
王宮がある場所とは反対の方向だ。
「もしかして、アラ川ダムを破壊するつもりなの!」とナオミが聞くと、
「その通りだよ。ダムを破壊すれば洪水で首都は壊滅だ。ちょうどうまい具合に昨日は大量の雨も降ったんで、ダムは水で満杯だ」とタナカが笑う。
「タナカ、殺されたくなかったら、あのゴーレムを今すぐ止めろ!」とフサ将軍がタナカの胸倉をつかんで脅すが、
「殺したかったら、さっさと殺せ! どうせ、お前も俺もここで死ぬんだよ! ダムが破壊されたら、ここら辺も、王宮も洪水に巻き込まれ全滅だ! 俺が設計したダムで洪水を起こして、俺の復讐の完成だ!」とタナカはますます笑う。
ナオミはタナカを必死に説得しようとする。
「タナカさん、この前、サイクロプスから私たちを助けてくれましたよね」
「……あれは単なる気まぐれだよ」
「けど、助けてくれましたよね。ダムを破壊したら、関係無い人まで大勢死ぬんですよ。タナカさんはそれでいいんですか!」
タナカは少し黙った後、
「……もう遅いよ、一度命令だしたら止めることは出来ない」とタナカは投げやりに答える。
「もう絶対に止められないんですか」
「頭の天辺の黒魔石を破壊すればゴーレムは崩れるがな」とタナカが答えた。
それを聞いた将軍は、頭部の黒魔石を破壊するよう部下に命令する。
「全兵器を使って、頭の黒魔石を壊して、ゴーレムを止めろ!」
大砲や投石機でゴーレムに攻撃する。
しかし、全く頭部に届かず、ゴーレムの胴体に当たっても、表面を少し削るだけだ。
巨大ゴーレムの進撃が止まらない。
大砲や兵士たちが蹴散らされる。
兵士たちは悲鳴をあげて逃げ惑う。
投石機がゴーレムに吹っ飛ばされた。
ハナの目の前に、投石機が落ちてくる。
ハナが近づいて、怪力で投石機を立て直す。
縄を引っ張り、重りを上げて、フックに引っ掛ける。
自ら投石台の上に斧を持って座った。
「ハナ! 何してるんだ!」とケンが聞くと、
「あたし、飛ばせ!」とハナが叫ぶ。
「え、まさか、ゴーレムに向かってかよ」
「そんな、無茶よ」とナオミが止めようとするが、
「このまま、みんな死ぬ。スガーモのお爺さんもお婆さんも」
ケンが迷っていると、
「あたしゴーレムの頭叩く、魔石壊す! ケン、早く!」とハナがせかす。
ハナなら黒魔石を壊せるかもしれない。
ケンは決断した。
「行くぞ、ハナ!」
ケンが縄を切ると、投石機の重りが落ちて、投石台が上に跳ね上がる。
投石台に乗っていたハナが斧を持ったまま、ヒューっと空中をゴーレム目がけて飛んでいく。
ゴーレムの膝あたりにペチャッと張り付いた。
ゴーレムのデコボコの表面をガシガシと登っていく。
「将軍! ハナが頭部へ登って行くのを気づかれないように、ゴーレムの足元を攻撃してください」とケンが大声で叫ぶ。
「わかった、全軍、ゴーレムの足元を狙え!」
軍隊が使える武器全てをゴーレムの足に攻撃する。
その間に、ハナは背中の部分まで到達。
ゴーレムが軍隊を蹴散らそうと、激しく動いた。
ハナが滑って、落ちそうになる。
「危ない!」とナオミの悲鳴。
ハナは何とか斧を引っ掛けて、ぶら下がっている。
そのまま、やっとゴーレムの肩の部分まで到達した。
ゴーレムの肩にへばりついて、さすがのハナも疲れたのか、ぜいぜいと息を切らしている。
そこをゴーレムに気づかれた。
肩にへばりついているハナを拳で叩く。
ハナがペシャンコ。
「ハナちゃんが!」とナオミが悲鳴をあげる。
しかし、ペシャンコかと思いきや、ハナは口に斧をくわえて、両腕でゴーレムの拳を持ち上げる。
そして、その拳をゴーレムの顔面にぶつけた。
ゴーレムの体が少し揺らいだ。
その隙に、ハナはゴーレムの頭部天辺にたどり着いた。
天辺の巨大黒魔石に向かって、斧を大きく振りかぶって、思いっきりぶっ叩く。
黒魔石が割れた。
超巨大ゴーレムの動きが止まった。
すると、全体が崩れていく。
ゴーレムの体を作っていた岩が空中分解して、瓦礫がどんどん落ちていく。
それに小さいハナが巻き込まれていく。
「ハナちゃん!」とナオミが悲鳴をあげる。
ゴーレムはバラバラになって崩れていき、その中にハナも消えて行ってしまった。
瓦礫がどんどん落ちて、もの凄い砂埃で一面全く見えなくなった。
砂埃が消えると、瓦礫の山が一面に広がっている。
ケンとナオミはあちこちの瓦礫をひっくり返して、ハナを探す。
兵士たちもケンたちに協力する。
ハナの斧が立っているのが見えた。
「いたぞ」一人の兵士が言った。
「ハナちゃん」とナオミとケンが近寄る。
「可哀想だが、息をしていない」とその兵士が言った。
ボロボロになったハナが横たわっている。
ナオミがハナを抱きしめる。
泣きながら、ハナを抱きしめて、
「ハナちゃん、生き返って」と言うと、光が二人を包む。
あの光の色、あれは神聖魔法師が魔法を使った時の光だとケンは思い出した。
「……ナオミ」とハナがつぶやいた。
「ハナちゃん、生き返ったの」ナオミ本人も驚いている。
「おい、ナオミ、お前、いつから神聖魔法使えるようになったんだ」
「わからない……」と言って、今度はナオミが倒れる。
「ナオミ、ナオミ」とハナがうろたえている。
しかし、ナオミの体を見た兵士が、
「大丈夫ですよ、気絶しているだけです」と言った。




