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「そろそろ時間だな。」
その人は壁の時計を見ながら今か今かと待っていた。今日はネットで注文した人型ロボットが届くはずなのである。十時に指定したのでそろそろ届くはずである。チャイムが鳴った。急いでドアを開けるとトラックがいた。
「お届けに上がりました。」
配達員に置く場所を伝えて運んでもらった。ロボットは冷蔵庫ほどの充電器の中に入っているそうだ。無事に運び終えた配達員はサインをもらうとさっさと帰っていた。その人にとってはその方が好都合であり、配達員もそのことをよくわかっていた。
その人は配達員が帰ったことを確認すると急いで荷を開けた。そこには愛らしい女性の姿をしたロボットがいた。このロボットは家事全般をこなすことができ、充電は自分でやってくれるという優れものだった。その人が買ったのは発売から少したって安くなったものだったけれどその人にとって決して安いものではなかった。その人は少しくすぐったいような感じがして起動することをためらっていた。しかし、ロボット相手に何を考えているんだとすぐに思い直し、少し笑うとしっかりとボタンを押した。
女性型のロボットがゆっくりと目を開ける。そしてゆっくりと充電器から出た。
「おはようございます。愛です。今日からよろしくお願いします。何からいたしましょうか。」
「おはよう、愛。洗濯と掃除をやってくれるかい。それが終わったら昼ご飯を作ってください。」
「では、やらせていただきます。」
その人は普段からずぼらなわけではなかったが、今日のためになるべく家事をためておいたのだ。それを愛は一つ一つ丁寧にこなしていく。その人はその様子をじっと見ていた。そしてやはり買ってよかったと思った。
愛は完璧だった。洗濯物はすべてしわを伸ばして干し、ベッドの下も綺麗にした。
「お昼ご飯はどうしましょうか。」
「カレーが食べたいです。」
「承知しました。」
カレーはおいしかった。その人にとっては久しぶりの自分以外の作った家での食事であり、今までで一番おいしいカレーに思えた。
「ありがとう、愛。これからもよろしく。」
「気に入っていただけた様でよかったです。こちらこそよろしくお願いします。」
愛は深々とお辞儀をすると、にっこりと笑った。