005
「だから、危ないんですって!」
ダカットが宿の近くまで戻ってくると、何やら騒がしい声が聞こえてくる。張りのある、若い男の声だ。
近寄ってみれば、声から想像したとおりに若い男の村人が、家の入り口でエマに対して詰め寄っているところだった。
「でもねえ、来てくれたお客さんを追い返すわけには行きませんから」
「けど、どんな奴が来るか分からないでしょう。昨日泊まったっていう男だって、おかしな奴だって俺は聞いてるんですよ!」
「あらあら、ダカットさんは大丈夫ですよ」
「そんなこと分からないじゃないですか。それに冒険者がこんな村に一人で来るなんて、何か企んでるに決まってるんだ」
会話まで聞いていると、どうやら彼はダカットを宿泊させることに、もっと言えばエマが宿屋を営んでいることに反対であるらしい。
確かに宿というのは様々な人間がやってくる。その客がみんな危ない人間だとは言わないが、確実に安全だという保証もない。だから彼の言うように危険だというのは間違ってはいないだろう。
「あ、おじさん、お帰りなさい!」
「エイリャか」
ダカットがそのまま少し遠くからエマと男を見ていると、家の裏手からエイリャが出てきて彼に声をかけた。
そうやって彼女が声を上げれば、口論をしていたエマ達二人もダカットが帰ってきたことに気がつく。
「あらダカットさん、お帰りなさい」
「お前が——うっ」
エマは昨日と同じようにおっとりとした挨拶をしたが、男の方は興奮した様子で振り向くと、ダカットを見て言葉を詰まらせた。
彼はダカットに文句を言おうと思ったが、人間としては異様な背丈の大きさに怯んだのである。
ダカットはそんな男を尻目にエマに近寄ると、左肩に担いでいたホーンラットを左腕に持ち直して差し出した。
エマと男、それにエイリャが近寄ってきて興味深そうにそれを見つめる。
「あらあらあら」
「おじさん、それなに?」
「ホーンラットだ。解体するから、朝食に出してくれ」
食べるにしても、皮を剥いで内臓と肉に訳なければならない。これが小動物ほどの大きさなら全てをまな板の上で行えるが、ホーンラットほどの大きさではそういうわけにもいかないのだ。
「あらあら。それなら、裏手に台になりそうな箱がありますから、利用なさって下さい。エイリャ、案内して差し上げて」
「はーい」
だらりと垂れ下がっているホーンラットの尻尾をつついていたエイリャが、家の裏手へと走って行って、くるりと振り返った。
「おじさん、こっちこっち!」
「分かった」
ダカットも小さな彼女に従って、家の裏手へと歩いて行く。そんな彼らの背後からはまたも小さく諍いの声が聞こえてきたが、ダカットはそれ以上気にも留めなかった。
恋のライバル登場!(嘘
この主人公に恋愛要素はあんまりありませんから、そう言う展開は今のところ薄いです。
それはそれとして、文章の間にスペースを挟んでいないことに気付いた今日この頃。
やっぱり、適度に挟んだ方が良いんでしょうか?
ご意見ご感想お待ちしてます。
2017/11/14:行間に改行を挿入しました。