1章45話 対決!カイト&α VS ブラッディ・ラヴ その③
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魔王から授かった『超具現化能力』で能力が強化されてることを前提に置いてくれ。
創造──剣だったり、壁だったり、弓だったり…構造を理解した物質や、理解するまでもない単純な物質を生成する。理解が完璧でないと物質が不完全になる。その場合、想像イマジンで補填する場合もある。
想像──存在しないもの…自分おれが知らない物質や技を生み出す。とにかく想像でき得るものは道理を全て「有り余る魔力」で補填し、無視する。全て想像に依存するため、実物が存在する場合は、実物に劣る。新たに開発した技も仕組みを理解していなければ想像イマジンの使用範囲にあたり、魔力消費が大きくなる。
固定──生成した対象に限り、範囲を決めてコピー…何を複製するかを固定する。コピーしたものは名称で名前を付け、名を呼ぶだけで生成できるように術を編む。
複製──固定した対象を複製する。名称で作ったコピー元があるため、複数生成しても魔力消費が少ない。
想起──想像でも創造でもない。記憶から切り取って再現する技。一瞬でも見たものなら────その記憶の喪失を代償にし、最速で完璧な具現化を行う。
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一通りの説明を終えると、ブラッディは不機嫌そうな顔をしていた。
「──カイトちゃん、想起は使わないで。記憶喪失っていうのはね?魔力が底を尽きた後、生命エネルギーを削ってやっと起こる現象なの。記憶と生命エネルギーは深く関わってるから──魔力が底を尽きてもいないのに、生命エネルギーの消費なんて危険なことしないでね」
「──ソレ、ブラッディもだろ」
「え」
「生命エネルギーの話はトド国で聞いたんだよ。生命エネルギーって、要は寿命ってことだよな?精神汚染が起きるとも言ってたし…ブラッディも生命エネルギーを削ってるから鼻血出してるんじゃないのか」
「アタシはちゃんとその辺の勉強してきてるからどの位がヤバいか分かるのよ。記憶領域まで深めてないし、寿命もギリギリ縮めてないわ……もちろんこれ以上無理したらヤバい!だからギブ!リタイアってわけ!」
「そ、そうならいいんだけど。身体は大切にな」
「──アンタが言っていいセリフじゃないわよ、ソレ」
ブラッディはやはり不機嫌そうだ。ブラッディの目が淡い赤色に光ると、カイトを見つめた。魔眼でカイトの魔力の揺らぎを見ているのである。
「魔力、大分減ってるわね。無茶し過ぎよ……生命エネルギーの消費による代償は、魔力保有量の影響が大きいとされてるの。貴方の場合、精神汚染や記憶に関わる障害がより大きくなるはず。いい?魔王様と戦う時はなるべく消費を抑えないさい──死にたくないのならね」
「ブラッディ──やっぱり、根は真面目だな」
「あは!ちょっと心配しすぎちゃったかしら?でも──ちょっとだけお節介」
ブラッディがカイトを抱きしめると、2人の体が赤く光る。カイトの傷口はみるみる塞がれていく。
「う、おっ…すげ、身体が…これが──あ?」
突然、カイトの脳内にブラッディの声が響く。
(生命エネルギーと魔力を混ぜて送れば、こうやって情報だけを伝達できるの──カイトちゃん。目線は変えずそのまま黙って聞いて。アタシやブローとの戦いは、魔王…『ソニット・オルビット』に監視されてるわ。いえ、正確には声だけ──だから治癒されていることはナイショよ──このまま階段を進むと、貴方が最初に召喚された広間に出る。そこにソニットはいるわ。アタシはブローを起こしに門前へ向かうから、ここでお別れ)
脳内で響く声に惑いながらも、不自然にならないように2人は会話を続ける。
(──アタシやブローはカイトちゃんの味方よ!本当に魔王を討つ気なら、協力する。ブローが城の裏庭で苗木を植えているの、知ってるでしょ?皆、国を良くしたいの──後から加勢するから、止めないでね!)
ブラッディはカイトに向けて優しく笑った。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺は1人も犠牲にしたくないからこうやって──」
「なーに言ってんのよ、アンタもう体力が下火じゃない。黙ってお姉さんの話を聞きなさい!」
(──さ、行って)
ブラッディが身体を離すと、階段を指差した。魔王がいる謁見の間に続く道だ。
カイトはブラッディの目を見て、それが覚悟したものだと分かると、頷き、階段へ向かった。




