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今日から俺は四天王!  作者: くらいん
第1章
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1章44話 対決!カイト&α VS ブラッディ・ラヴ その②








「ふう、これだから夢魔ってのは煩わしいのよね…」


遮蔽物に隠れた手負いのカイトを警戒しながら、ブラッディは自身の息を整えていた。


(サキュバスは体内で微量しか魔力を生み出すことはできない…魔力の貯蓄に際限がないのはいいけど、外部から直接取り込む以外に方法はない…)


()から()()()に変わっても、結局トラウマは残ったまま、魔力量は少ないまま。嫌になっちゃうわね!」


脳内に魔術式を思い浮かべ、即座に魔法陣を目の前に展開する。



魔法陣に少しずつ魔力を注ぎ、心の中で詠唱をする。


この魔法陣は、注入した魔力によって威力が変わる。


先ほどカイトに放ったのは中程度の段階である『炎龍の吐息』だ。技の名前は『炎龍の〜』で統一され、『ため息』『あくび』をはじめとした段階から徐々に力を増す。六龍の信仰と共に形作られた太古からある技の一つである。


(力を溜めている間は自動弓を起動し続ける。カイトちゃんは一度矢雨を潜り抜けて真っ直ぐ突っ込んできた…痛い目を見た今、もう一度突っ込んでくるにはそれなりの策を講じる時間がいる!今度は最高火力で仕留める!)




(──その前に、懸念点は排除しなきゃね。カイトちゃんが自動弓の()()()に気づいている場合──盤面は一気には不利になる。今展開している魔法陣は『溜め』を前提としているから、前衛に大量配置した自動弓が足止めをしてくれている事が必須──)


ブラッディは右手で魔法陣に手をかざしながら、左手で魔術を展開、新しく空中に弓をセットする。


(この弓は私の意志によって発射される。さらに数本矢を番えておくことでカイトちゃんの想定外に備える──これで仕留めようとは思っていない。この拡散矢は潜りこんできたカイトちゃんへの牽制や足止め──これが最小限の魔力で練れる戦略!)



壁のように大量配置された自動弓はひたすらに遮蔽物の先のカイトを狙って打ち続けている。弓の向きが一斉に変わったのを確認、ブラッディは襲撃に構える。


(動いたっ!来る!)





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






──『カイト、勝てるってどういう事?』


カイトの脳内でフィシカが問う。


「もう一回突っ込む。『──それって』わかってる、だが無策じゃない──いいか、弓の方向は常に一緒だ。それをブラッディは見てる……あの弓の向きは()()に使われてる。()()()()()()かは分かった。それを利用するのさ」


──『このホールには大理石の柱とガレキだけ。撹乱するには少し心許ないわね』


「ああ、だからフィシカ──ちょっと協力してもらうぜ。」


──『え?どうやって?』


「こうやって──さ!」




遮蔽物から身を出し、魔力を全身から放出し、加速。



「『創造(クリエイト)』──『自動(オートマチック)(ボウ)』!」


そのままカイトはブラッディの弓を再現して生成、物質として具現化する。


「『想像(イマジン)』!『拡散(デュフュージョン)(アロー)』!」


作り出した弓の上に、想像上の『撃つと拡散する一本の矢』を生み出し、番える。


「『固定(セット)』!『自動(オートマチック)(ボウ)』『拡散(デュフュージョン)(アロー)』──『名称(ネームド)』『A』!」


弓矢に対し魔力を放出。青白く包むエネルギーは、包まれた物質を記録していく。


「『複製(デュプリケイト)』──『A』!」


エネルギー上に記録された自動弓を複製、ブラッディが作り出した量には及ばないものの、『拡散矢』で物量をカバーできる範囲──カイトの背後に次々と()()が展開されていく。


「──撃ち落とせぇっ!」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「──ちょ、ちょちょちょっなによアレ!?カイトちゃんの能力があんなに応用できるって聞いてないんですけどっ!」


ジェット噴射をしながら、爆散する拡散矢をノーハンドで放出しているカイト。弾幕シューティングゲーム終盤の主人公の如く、派手に攻撃を躱していく。


ブラッディが放った矢は全て、カイトの拡散矢によって撃ち落とされていく。


(くっ…負荷は掛かるけど、弓矢の発射スピードを更に上げるしか…!)


カイトが近づく前に少しでも魔法陣に魔力を込めておくため、ブラッディは左手で自動弓に対しても魔力を注入、更に弾幕の勢いが増す。


「うおっ…『カエンダン』!」


押され始めた弾幕に対し、一斉に辺りを吹き飛ばす爆発『カエンダン』を発射──地面のガレキと相まって、辺りに爆煙が巻き上がる。


(砂煙っ…何処から出てくる!?──自動弓の向きが左に…左から──)


自動弓の壁を越え、ブラッディの左側から砂煙と共に──


「っ…来る!」


人影が見えた刹那、ブラッディは目標に向かって──考えるよりも早く、複数本の矢を放った。


数はおよそ8本。限界まで引き絞られた弓から放たれた矢たちは飛び出した影に対して真っ直ぐ飛び──貫いた。


(──まだ!まだ終わってない!)


ブラッディは右手の魔力供給をシャットアウト──左手に魔力を回し、追撃をするべくエネルギー弾を生成する。


(彼は妖精族を取り込んだ人間…キーレスト!予想以上の魔力差で限界まで攻めてくるはずっ)


「──え」


矢を貫いた人物は、クロサキカイトの服にクロサキカイトの剣──そして、空色の短髪と凛々しい目をした女性だった。


「『──私を見たわね』」



二重にも聞こえる声の主──フィシカは、矢の攻撃によって輪郭がボヤけ、消滅していく…カイトの服だけを残して。


(──自動弓の仕掛けがバレてる!左側に囮を置いたならば、背面の──)


「──右!」


生成したエネルギー弾を即座に右方向へ撃ち込む。エネルギー弾の先には、ジェットで高速で回り込み剣を構えていた──上裸のカイトがいる。


「『創造(クリエイト)』『(ソード)』──『想像(イマジン)』『カエンザン』!」


右手で剣をイメージ。青白い渦と共に剣が現れる。詠唱によって炎を纏った剣を振るい、エネルギー弾を消し飛ばす。


(止まらないっ──魔法陣を使うしかない!)



fixation(フィクセイション)!『炎龍の──』」

「『想起(リコレクション)』!『炎龍の──』」




「「『──咆哮』!」」






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※







「──純粋な魔力量勝負に持ち込んだ……ってワケね!」


「──ああ、ブラッディを殺す気はないからな。なんとか気絶まで持ち込みたかった」





2人の魔術がぶつかり合った後──互いの攻撃は拮抗、ブラッディは魔力消費に耐えきれず失神し、カイトが勝利を収めたのだった──




「自動弓がカイトちゃんを狙う仕掛け、何処で気づいたのかしらん?」


「…違和感は最初からあったんだ。ホールで出会った時、ブラッディは()()()()()()()()()よな?コスパ良く大量に配置できるほど自動弓の心得はあったのに──」





壁にもたれ掛かるように座り込んだブラッディの前で、カイトは自身の推理を明かしていく。ブラッディは魔力の使いすぎによる鼻血を拭いながら、真剣に話を聞いていた。


「気付いたのは一回目にブラッディの懐に潜り込んだ後だ…矢の消え方だよ」


「──へえ、カイトちゃん頭良くなった?」



「はは、今なら2人分の観察眼なんでね──自動弓の矢を弾いたり切ったりした後、矢は魔力による具現化が保持出来なくなって、靄のようにボヤけて消えてった…全弾ね」





カイトは右の掌を前に突き出し、矢を生成した。自分の身体──右の脇腹を貫通していったのだ、生成は容易かった。矢をへし折ると、その実像がボヤけ、半透明になり、やがて完全に消えた──



「けど、最初にブラッディが構えて撃った矢を切った時、パチンと弾けて粒子が散ったんだ。これ、矢が消失したんじゃなくて()()()()()()()()()()()()()()()んだろ?」






カイトはホールの中心までふらふらと歩き、剣と傷だらけの服を拾った。



「相手の魔力を可視化する『魔眼』──常時発動するようにはしてたけど、まさか自分の身体に細かく付着してたなんてな。これがGPS──いわゆる発信機になって俺を狙ってたってワケだ」



「そ。大正解──まさか分身が作れるなんてねぇ!しかもその娘に服を着せて…よく土壇場で思いついたわね!勢いを増した矢雨の対応も見事、わざわざ自動弓を生成して両手をフリーにしたのは──」



「分身──フィシカの具現化を煙の中で成功させるためだ。両手を使って正確に、な。フィシカの魔力も混ぜたから上手くいった…すぐに消えちまったけどな」


「自身の内側にもう1人正確な人物がいないとできない芸当──融合したキーレストならではの具現化ね」




ふらふらと歩き、ブラッディの隣まで来ると、カイトはズルズルと倒れ込むように座った。





「…最後の、ブラッディに撃った技の方が無理矢理だった。アレは──」


「ええ、私も気になった。一瞬であのレベルの魔術──『炎龍の咆哮』をコピーして発動するのは絶対に無理。1回攻撃を受けたにしても、異常な再現性だった──私と同等の火力…いえ、()()()()よ……何をしたの。場合によっては私はカイトちゃんを叱らないといけないわ」


ブラッディは、近くにカイトが座った事で初めて知覚する。カイトの髪には白髪が混ざり、顔周りには僅かに血管が浮き出ている。息も荒い。




「──『えんりゅうのほうこう』っていうのか、アレ…いや、もうどんなのだったかは覚えてないけどさ……悪い、さっきから頭が痛すぎて記憶が…俺の技、教えるよ」





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