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今日から俺は四天王!  作者: くらいん
第1章
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1章41話 対決!カイト&α VS ブロー・シェイト




 「ーー本当に来たのか。カイト」



魔王城の門前で彼はーー『ブロー・シェイト』は残念そうな顔をした。本当ならば、カイトには来てほしくなかった。同じ魔王の配下『四天王』として、敵対するなどあり得ない話だった。


「そりゃあ来るだろ。魔王の暴れっぷりにはもうウンザリなんだよ。俺は、俺の仲間が死ぬのを見過ごせないだけだ」


カイトは肩にかけていた『秘剣オメガ』を抜き、切先をブローに向けた。刀剣には一切の震えがなく、剣越しにカイトの眼力が伝わってくる。



「……どけよ、ブロー。お前だって、俺の中では守りたい奴の一人なんだ」


「だったら僕の言うことも聞いてくれっ。カイト一人じゃ、魔王には敵わない! ……ここに、僕の部下を連れていない理由がわかるか?」


「ああ、ブラッディが一般人を避難させてくれたんだろ? 流石は四天王の人望だよな、人っ子一人も見てねぇよ。これで被害が最小限ですむ」


カイトは剣を下ろし、辺りを見回して言った。


城下はもぬけの殻となり、砂風が吹き荒ぶ荒野と相違ない状態になっている。アズフィルア国の自然エネルギーは、魔王が完全に吸収してしまったため、草木が生えることがない。荒野の一角となった城下街は、一夜にして不気味なゴーストタウンと化していた。



「被害だけじゃない。僕は、カイトと戦う意思がないんだ。今こうしてここにいるのも、話し合うためにーー」


ブローは手振りを増やし、戦闘の意思がないことをカイトに伝える。が、その思いは届かない。


「話し合いだって? 異世界転生されたばかりの俺みたいだな。切羽詰まった時の話し合いなんて、優柔不断なヤツがやることだぜ」


ブローの話を鼻で笑い飛ばし、カイトはおもむろに歩き始める。


「戦う意思がないんだろ? いいさ、傷つけずに済む」


「っ……! おい、本当に一人で来る気か!?」


「ああ、他に仲間がいたら守らないといけないだろ?だったらこれがベストだ」


カイトは歩き続ける。

魔王城門まで、あと数十歩。

止まる気配は、無い。



「ーーーーわかったよ、カイト。お前が魔王に殺されるくらいなら、ここで止めてトド国に追い返してやる」


「──異世界に来てもうすぐ一年が経つからな。今の俺の実力を、見せつけてやるさ」


カイトは剣を構え、魔力を放出させる。


青と水色の煌めく魔力がカイトを包む。


地面を強く蹴り、その勢いと共に放出した魔力をブースト、速度を上げてブローへ距離を詰める。




(記憶の中にある『カエンダン』を、剣に纏わせるっ!イメージだ、燃え盛る剣を想像しろ!)



「『想像(イマジン)』──『カエンザン』!」



魔力のモヤは青い炎の揺らぎへと変化し、秘剣オメガを包み込む。(くう)を切る音は空気を燃やす轟音へと変わり、ブローを襲う。


「ちいっ!」


ブローは短剣を瞬時に取り出し、カイトの一振りを受け、躱すように流そうとする。しかし、鋭い音で刃を受けた途端、瞬間的な爆熱でブローの短剣が吹き飛んだ──爆発だ。


吹き飛んだ短剣はブローの後方へ回転しながら地面に落ちる。カラン、という音を聞いた途端、ブローは瞬時に状況を理解し、懐から新しい短剣を取り出し、カイトの胸元へ突く。


「『カエンザン』!」


再び技の詠唱。唱えることで想像をより強固にし、精度を高める。

燃え盛る剣はブローの突きを素早く斬り返して弾く。勢いよく剣先に触れた炎は、再び小さな爆発を起こし、短剣を吹き飛ばす。


(触れたところに魔力が反応して爆発している…規模は極めて小さいものの、密度が高い。この爆発に当たったら…なんなら、切られた瞬間に傷口が爆破、なんてことになるのか。とんでもない技を生み出しやがったな…!)


「だがこの威力、カイトも食らったらただじゃ済まないだろ!」


ブローは新しく短剣を取り出し、再び胸元を刺しに行く。カイトの体に近ければ、カイト自身も爆発を受ける可能性がある。


「ほら、カエンザンとやらを使ってみろよ!お前さえ止められれば、僕はどうなろうが構わない!」


「っ…そこまでして俺を止めたいかっ。この戦いはブロー達を守るためにあるんだぞ!」


胸元への短剣を、即興で作成した剣で受け流す。


「それが余計なお世話だっていうんだ!カイト、やっぱりお前は生温い男だ。どんなに酷い目に遭っても、根本は変わってないんだよ!」


ブローは幾つも短剣を取り出し、投げつけると同時に斬りかかる。複数の刃がカイトを襲う。


「ぐっ…!」


降りかかる無数の短剣は猛スピードで懐に潜り込み、カエンザンでの対処は困難になる。何本かは弾くものの、防ぎきれない攻撃は切り傷となってカイトを痛めつける。


「このまま、押し切る!」


ブローがさらに追撃を重ねるため、短剣に魔力を込めて、よろけたカイトへの素早く突きを入れる。



「―――フィシカ」


カイトがポツリと呟くと、あたりに水色の光が渦巻き、カイトの剣に集まる。


「『胡蝶剣舞(こちょうけんぶ) 瑠璃唐(るりから)』」


発したその言葉、「胡蝶剣舞」という言葉に、ブローは耳を疑う。


「その名―――じーさんの技!?具現化でそのレベルに達するなんて―――」


(マズイ、胡蝶剣舞は最上級のカウンター技!短剣がカウンターの餌食に…!)


「『ごめんね、通らせてもらうわ』」


魔力を帯びた短剣は、同様に魔力を帯びたカイトの剣によって受け止められ、剣先から流れるように滑らせていく。


ブローのものと混ざり合い火花のように弾ける魔力は、それぞれが結合、分解し合い、瑠璃唐草の花のように色を開かせる。


幕を引こうとした一撃、渾身の一突きを受け流され、完全に隙が生まれたブローの首へ、カイトの一太刀が迫り―――



ブローの首へ、強烈な一撃を叩き込んだ。


「が、ぁ」


カイトはそのまま剣を振り払い、ブローを吹き飛ばす。


「…魔力を物質に具現化して、刃を丸めた。首への強烈な打撃。もう立っていられないだろ?真剣で当てていたら、死んでた。ブロー、そこで待っててくれ」


水色の魔力放出を抑え、作成した剣を分解、元の魔力源に解除する。ふう、と一息つくと、カイトは誰もいない城門へ向かった。





「う、ぐぅ…カイ、ト。いや、カイトの中にいる、誰か。頼む、カイトに何かあったら助けてやってくれ…」


倒れ込んだブローの声を、確かにカイトの耳は聞き入れて、それから城内へと入っていった。




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