1章10話 あれから少し
魔力は6種類ある。赤、青、緑、黄、白、黒の6色に分けられ、それぞれ得意な分野がある。
赤…エネルギーを高密度にする事で自体の身体強化や強い熱を発し炎の生成を行う事が可能。
青…物質の具現化が得意。青の魔力自体温度が非常に低いため、具現化を利用して氷の生成が可能。
緑…空気中の魔力を操りやすく、宙に浮く事や地脈エネルギーを利用し、植物の生成が可能。
黄…物質や知能の低い生物に自身の魔力を注入し強化や使役が可能。魔法剣や召喚獣などに流用できる。
白…時間を操ることが可能。しかし、白の魔力は人工生成の為、希少かつ身体が耐えれず短命な者が多い。
黒…空間を操ることが可能。しかし、白の魔力と同様に希少であり、短命である。
また、種族による能力については魔力の種類は関係が無い。
例えば、『龍人族』は『龍化』という能力で自身の身体強化を行う。しかし、全ての龍人族が『赤』の魔力を持っているわけでは無い。
能力≠魔力 を覚えておく事。
「うし...っと」
「クロサキはさっきから何を書いてるんだ?」
「日記、というかメモ、みたいな感じ。皆色々教えてくれるけど、覚えきれなくてさ。書いとこうと思って。」
「へえ、良い心がけだ。見せてくれよ。」
「ああ、ブローは日本語読めるのか?」
「馬鹿にするなよ、私は頭が良いんだ。それに、日本語はミリネアでは第二公用語だ。どれ手帳を見せてみろ... 時間の数え方...ミリネア語...魔力の色と能力...機械魔兵...うん、よく書けてる。」
「...なあ、ブローって一人称よく変わらないか?『私』だったり『俺』だったり...『僕』も言ってたな。...『ウチ』とかも言ってたな?」
「...職業病だ。『クローバーの証』が『変装』なのは覚えてるか?」
「なんとなくは。」
「いろんな人になりすますと本当の自分がどんなだったか、つい忘れてしまってな。元の一人称は確か...いや、お前は私の性別を知らないんだったなあ?くふふ」
「楽しそうだなテメー」
「冗談だ、自分のくらいは覚えてる。見せることなんてまずないんだけどな。」
「うーん、まあ少しくらいは自分出してもいいと思うぜ。『変装』って能力なんだろ?疲れちゃうぜ。」
「いいんだ。戦う時のための魔力は温存できてるし、何より...お前みたいのを弄るのが楽しい。」
「楽しそうだなテメー...!」
「...クロサキ。男と女、どっちがいい?」
「え?」
「今度、顔見せてやるよ。お前はどうやら、悪い奴じゃないみたいだしな。警戒してるのが少しアホらしくなっただけだ。」
「な、何だよ急に...」
「子どもを守ったお前、カッコよかったぜ。」
「カイトちゃん!『スペードの証』について説明するわね!!」
「ブラッディはもう元気なの?倒れたって聞いたぞ。」
「アタシの部隊は優秀でね!一晩で元どおりよ!!ありがたいことこの上ないわね!!」
「はは、いつか部隊?のみんなに会ってみたいなぁ。」
「きっとみんな喜ぶわ!どんどん顔出してあげて!」
「もちろん!」
「...さて!カイトちゃん!『スペードの証』について説明するわね!!」
「スペードの証、ね。もらったけどあんまり変わった感じしないなぁ。『超具現化』だっけ?なんなの?」
「具現化の...上のやつよ!もっというと...『スペードの証』に慣れれば、通常じゃできない『本物に限りなく近い物』が出せたり、より大きな物を具現化できるわ!具現化をするとき、通常よりも精神が研ぎ澄まされた状態になるの。」
「はあ。」
「んー、言ってるだけじゃわからないかしら...。カイトは機械魔兵と戦った時、咄嗟にバリアを出したでしょ?覚えてる?」
「必死だったからなんとなくだけど...5cmくらいの厚さだったかな、真っ青と言うよりは水色に近いかな...?あと、もやもやしてた。」
「まず、その『もやもや』っていうのがなんだって話をするわね。具現化っていうのは、理想の物を具体的に形のあるものにする事なんだけど、その理想が不完全だと、もやもやが出ちゃうの。想像した形が大雑把であると、形ある物になるはずの魔力が具現化せず、その場にただ放出されるだけになってしまい、靄が生まれるのよ。当然、靄になった魔力は固形にはならないから、攻撃も防御もできないわ。」
(ブラッディって実は頭がいい気がしてきた。)
「きいてた?」
「...つまり、あの時俺が咄嗟に作った壁は、」
「バリアっぽくなってたけど、実際は穴あきチーズみたいに、ボコボコだったかもしれないってことね!良く生きてたわ!」
「良くやったぞ俺の妄想力。」
「で!『スペードの証』は単純な形だったらもやもやがなくなっちゃうほど具現化能力が強化されるの!」
「今、壁を作ってみてもちゃんとしたバリアになるってこと?」
「もちろん!慣れてくれば形の複雑な剣を本物に限りなく近い形で出せたりとか、まあるい感じの綺麗な円のバリアも作れちゃったりとか、カイトの想像力次第では、自分の分身も作れちゃったりするんじゃない?過去の四天王では、小動物を具現化して戦う人もいたらしいしね!」
「全身真っ青の自分見るの嫌だな。ペンキ被ったみたいだ」
「極めれば色も想像のものになってくわ!そのままの自分を頭の中でリアルに想像できればそのままの形と色で生まれるハズよ!!ピンク色のハトとかキュートじゃない!?そんなのも作れちゃうわけ!」
「ピンクのハトはちょっとわからないです。...まあ、俺の想像やら妄想で強くなるってこった。妄想癖の俺にぴったりじゃねぇか」
「実は可愛い孫がいるのですが、もうすぐ誕生日でしてな。」
「へえ、おめでとうキンライさん。男の子?女の子?」
「女の子でございます。非常に可愛いらしい子でしてな。」
「誕生日プレゼントとかどうすんの?ペンダントとかぬいぐるみとか?」
「我が家に伝わる太古の竜剣を。」
「ええっう、うーん」
「去年は確か、火封じの短剣、その前は『イワイデーモン』の頭を。」
「岩井デーモン...?」
「『いつかどこかで使うと思うよ、ありがとうおじいちゃん』と毎年言ってくれましてな。本当に愛嬌のある良い子です。」
(すっごい気を使ってるのに気づいておじいちゃん!!)
「まだ14歳ですが、もう14歳。そろそろ剣技も教えねばなりませんかな...。」
「14歳から剣を教えるの?俺の中ではもっと幼い頃からやるイメージなんだけど...」
「ええ、本来ならば8歳から剣を教えるつもりでしたが、どうも嫌がってしまって...孫は召喚獣や魔法が好きなようでしてな。没頭する姿が何とも愛らしくて強く言えず...」
「キンライさんは孫に勝てないタイプのおじいちゃんだったのね...。まあ、優しいしな。」
「ふ、優しいですか。」
「え、何か違うの?」
「いいえ、あまり言われてこなかったもので...ところでカイト様、私の事は呼び捨てにしてくださっても構わないと言ったのですが...」
「んー何かしっくりこなくてさ...やっぱ、年上の人に呼び捨てはマズイかなって俺の中の何かが言ってる気がする」
「ほっほ、では好きにお呼び下さい。」
「『スペードの証』には慣れたか、クロサキよ。」
「おかげ様でな、魔王サマ。悪いがこの国の話を聞いてから、俺はアンタをあんまりよく見てねーぜ。」
「サンライトに対抗するためだと言うのは聞かなかったのか?他国に侵略されるよりはマシだと言う事がわからんか。」
「わからんね、『ソニット・オルビット』魔王様。長く続いた平和状態、それぞれの国が豊かだったはずさ。そこから攻められるだの、対抗するだのなんて話が出るもんか、普通。難民の皆はどうすんだよ」
「今は放っておけばいい。この国が嫌なら出て行けば良い事。圧倒的に戦力が足りなくなったあの時、王都だけは何としても守らねばと思い、この行動なのだ。それに...荒地となった他の街にもある程度の数の兵はいる。」
「やっぱり、よくわかんねぇ...。そんなに物騒なのかよ、この大陸の奴らは...」
「甘い。今、自分が何を言ってるかわからんのか。」
「な、何だよ。」
「『今この国には弱い王様しかいないし平和ボケしてた連中が慌てふためいて統率も取れてないから攻められても簡単に全滅しちゃうけど、平和ならみんな何もしてこない』...と言うのがお前の意見なんだろう?浅はかな...お前のいた世界はよっぽど平和なんだろうな。」
「...」
「見る目は、変わったか?」
「...悪かった。」
「下がっていい。...クロサキ」
「え?」
「何回目だ。」
「...何が?」
「...気にするな、下がれ。」
(ユージン...元気かな...。何してんだろうなあいつ...)
カイトは一人、部屋でメモを書きながら遠く離れた親友の事を考えていた。
(東の勇者...あいつの事だろうし、噂がここまで来るって事は相当頑張ってんだろうな。)
(いつか、殺し合う日が、来るのか。)
(いや、あいつの事だ。どうにかすればわかってくれるはず...元々何でサンライトとアズフィルアは戦争を?)
(アズフィルアが弱った隙を突いてサンライトが攻めた...わけじゃないよな。先にアズフィルアが威嚇をしたんだっけか。...じゃあアズフィルア悪くね?いや、でも...前の戦争では先にサンライトが攻めたからか。なんか...わからないことが多すぎて何も言えない...)
「あー、わからん!寝る!」
一連の騒動の後みんなと仲良くなったよって言う話です




