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今日から俺は四天王!  作者: くらいん
第1章
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1章 9話 善行と最善











 「この荒野が...俺たちがやったって?元々こんなんじゃなかったのか?」


カイトは薄桃色の膜の先の荒野を見ていた。


先程見ていた、木々が溢れる豊かな王都からは想像できない程荒んだ土地がそこにあった。


黒くなった枯れ木の側には骨となった動物の死体。深くヒビが入った地面にはただ砂が吹き荒れるのみ。



「俺たちの家族は王都と離れた、『チリスの町』で暮らしてたんだ。だけど、魔王のせいで...チリスは壊滅さ。畑作もできない。雨も降らない!みんな飢えで死ぬか、他の国に逃げて行ったさ!!」


少年は続けて話す。


「俺の家族だって、今はこのスラム街での生活。今だって...妹が…お偉いさんが良ければ俺ら国民はどうでもいいんだろ..!」


「そ、そんな訳あるかよ!(知らんけど)俺はついこの間、この国に就いたばかりなんだ。妹がどうしたんだ?事情を話してくれないか」


「就いたばかり...?戦争中に何で今...?ま、あんたの言う事なんか聞いてられないね。あんたの身ぐるみ全部剥いでやる。それか、薬草でもあるならやめてやるぜ。」


「薬草..?そういやさっき買ったな、記念に。...ははーん、妹に薬草が必要なんだろ?いいぜ、持ってきな。」


「えっ...!か、金持ちめ!何が狙いだ!」


「なんだよ、とりあえず嫌いなのやめろ!」

ぼこぼこぼこっ!


「ぁん?」













カイトは 宙に浮いている。









突然、背中に鈍い痛み!!



「がっっぁ"あ"あ"!!いっっっっってぇ"!」

状況を整理

しろ今

俺俺俺はどう

したんだ考え

て考えて浮いて落ちた背中痛い背中

から落ちた痛い痛い

痛い痛い!!!子供はっ

、さっきの子供は??

「おっおい!大丈夫かよ!返事しろって!」



「あ"ぁ...生きてたか、よがった、げほっ!げほっ!一体、何が..?」


「...機械魔兵(きかいまへい)が、王都のなかに..!バリアがなくなってる!」








機械魔兵。


ずんぐりむっくりで白くて一つ目の怪物。

バリアによって王都に侵入することのなかった怪物。ぱっと見は可愛げがありそうだが、ブローの親が殺されたのだ。油断が命取りになるだろう。

カイトはよろよろと立ち上がり、腰につけた剣を抜いた。


「これ...武器屋のおっちゃんからもらった薬草だ。持って逃げろ..!」


そうして薬草を少年に渡し、剣先を目の前の敵に向けた。少年は、動揺の色を隠せないまま逃げて行った。






「ゔあああ」


「うわっ吠えんな!さっきてめー何したんだ!」


怪物の右手の鋭い爪には土がついているので大方予想はつく。地面吹っ飛ばしたろ。


(いっ行くしかない!覚悟を決めろ!)


「うああああああ!」


カイトは怪物の元へ走り、そのまま剣を振り下ろした!




「ぐがあああ」

「えっ」


機械魔兵は正面から剣を受け、風船の様な身体はスッパリと切れた。



(なんだよこんなもんか!!これなら倒せるっ!)


とカイトが油断した瞬間、大きい切り口から紫色の液体が飛び散り、傷が治っていく。

真っ二つにきれたはずの一つ目から光が集まり剣を振りきった隙だらけのカイトに向けられる。

カイトの目の前が光りで包まれて、そして、




(し

ぬ。)












「カイトォ!バリアをだせ!!」

「...!バッッバリアーーー!!!」


瞬時に膜を目の前に強く念じる。すると青色の壁が前にゆらりとできた。轟音と眩い光に包まれる。

「うっぐぅううう!」



カイトは後方の建物に叩きつけられる。しかし、痛みは叩きつけられた衝撃だけで、ビームのようなものに痛みはなかった。どうやら青色の壁が守ってくれたようだ。しかし背中からぶつかる。


「っ!ま"た背中っ!」


「よくやった!あとは任せろ!」

「ブロー!!」


空中から飛んで来たブロー。


怪物に向けて両手を出す。

キッと怪物を睨むと背後に大きく緑色の魔法陣が現れる。


緑風(りょくふう)、エレメント・フォース!!」


魔法陣が光り、両手からは緑色の風が渦となって怪物に向かっていく。渦に包まれた機械魔兵は、風の勢いに耐えられず、やがて破裂した。








「助かったぜ。死んじゃうかと思った。割と本気で。」


「落ち着いてる場合じゃないぞクロサキ。わかってると思うがバリアがまた解除された。ブラッディがまた倒れたんだ。機械魔兵達がちょうどお前が出くわした奴を筆頭にどんどんでてきてる。この辺にうじゃうじゃいるぜ。後からじーさんも来るから、持ちこたえるぞ、クロサキ。」


「なにもできないんですけど」


「そうだな、機械魔兵にもいろんな種類がいる。俺が倒したのはよく現れる『type(タイプ)A型』だ。お前に任せた。俺はどデカイtypeC型をやる。」


そう言ってブローは上を指した。


「どデカイって...うわデカッ!」


およそ20mの機械魔兵がずずん、ずずん、とゆっくり進んでいた。

「A型はこの辺に5体ぐらいだろうな。これやるよ。魔力開放の実だ。」ブリブリの実だ。










「やっぱ、この実食うと力でるな。えーと、確か『typeA型は中心に核』ね。目を狙えばいいって事か」


「「「「「ゔあ"ー」」」」」


(う...集中しろ俺。強めのエネルギー弾を目に撃てば、一発キルだ。」


手のひらを機械魔兵の目へ向けて、光の弾をイメージし始めた。練習の成果か、エネルギー弾の作るスピードは速くなっている。

(今だ!)








10発撃ってやっとこさ5体を倒した。


(つ...疲れた。国民のみんなは大丈夫なのか。しかし、慣れれば案外簡単に倒せちゃったな..。)


「どうやら、心に余裕ができたようですな。カイト様。」


「うぉうキンライさん!」


「バリア内の敵は全て片付けました。後は、住民に状況を説明して城に戻りましょう。」


「あ、ああ。ブラッディは?大丈夫なのか?」


「ええ、今はブローが側に付いてます。問題無いでしょう。」



改めて周りのスラム街を見て、カイトは当然の疑問をキンライに投げかける。



「...なあ、俺らの魔王は、何をしたんだ?」




「...『ソニット・オルビット』、28代目魔王の彼の名前です。彼はアズフィルアの王都以外の土地のエネルギーを吸収し、王都にそれを使っているのです。難民が多く、死者も多いですが、ウォーリアムは潤い続けています。...わかっています。なぜ、こんなことをしているか、ですね」


「......死人が出てるのはキンライはいいのか?」


「事実、サンライト国に対抗するにはこの方法しかないのです。今、また魔王がいなくなってしまったり、力の無い魔王であればサンライト国だけでなく、他の2国からも攻め入れられるでしょう。悔しいですが、こうするしかないのです。...カイト様、傷が多く見られます。明日にはブラッディが回復してるでしょう。傷を癒しに行くのも良いと思いますぞ。」


「...あぁ、そうだな。」





カイトの初の戦闘、それに連れて浮き彫りになったこの国の問題。その晩、カイトはやり場のない気持ちのせいで良く眠ることはできなかった。







それから一週間後...

「クロサキ、『スペードの証』を授ける。一週間前のあの日、機械魔兵の存在にいち早く気づき、5体の討伐、さらに子供を助けた。...この功績は認めざるを得ない。これからも国の為に力を尽くせ。以上だ。」






「おめでとうカイト。これで正式に四天王の力を手に入れた。」


「ありがと、ブロー。あんまり実感ないけどな...」


「そんなものさ。力の使い方はブラッディに聞くといい。じゃあな。」


「...なあ、ブロー。お前はこの国についてどう思う?正しい事をしてると思うか?」


「...愚問だな。」

一言だけ残して、ブロー・シェイトは歩いて行った。



カイトは薬草を渡した少年のことを、忘れずにいた。

あの日から少しずつカイトはこの世界、『ミリネア』について考えるようになった。


書きたいとこまで書きました。

言うなれば機械魔兵編が終わりました

次話からはちょっとほのぼのしたのとかキャラ掘り下げたの書こうかなと思ってまーーーーー

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