1/48
プロローグ
――――異世界に憧れていた。
平凡な主人公たちが輝いている、あの異世界に。
そこに行けばなんの個性のない自分も変わる事が出来るんじゃないかって。
そうやって都合のいい異世界に、勝手に夢を描いていた。絶対に行けない理想郷を望んでいた。
『異世界へようこそ、勇者様』
その言葉から全ては始まった。
ライトノベルなんかの異世界じゃあない、そこには確かに人が暮らしていて、生活があったんだ。
俺が思い描いていた理想郷とは程遠い世界。
死が身近にあって、生を乞う厳しい世界。
だからこそ、俺がここまで来たのも、別に異世界をエンジョイしたかったからじゃないんだ。
全ては、そう...
「俺の見た世界で唯一救われなかった、『あの子』を救う為だったんだ。」
白髪の青年は、そう言った。
不定期更新の予定です。よろしくお願いします