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今日の話題:前置き

「ねぇ、晶。キス、してくれない?」


未来はそう言って、顔をこちらに向けてきた。

紅潮した頰、艶やかな唇が、俺の劣情を呼び起こす。


「……ごめん、もう我慢できない。」


俺は未来を押し倒した。

激しく上下する胸元、細くて今にも折れそうな手首。

そして柔らかな肢体。

全てが俺を魅了する。


「いいよ。私をめちゃくちゃにして……?」


そして、二人は……。



「……なあ、未来。いくつか質問があるんだが。」

「何?私の書いた小説(・・)に不満でもあるの?」


俺—水矢晶(みずやあきら)はごく普通の高校生だ。

特に取り柄もない平凡な男子だ。

だから、こういう(・・・・)モノに関しては人並みの感想しか出せない。


「まず、なぜ官能小説なのか、だ。」

「なぜって、書きたかったから?」


黒髪の美少女—明日葉未来あしたばみくはそう答える。


「次に、なぜ俺と未来が題材なのか、だ。」

「なぜって、そこにあったから?」


よくもまあ淡々と言えるなあ。

『そこにあったから』って登山家か何かか。


「そんなに私が気になるの?」

「ちょっ……、お前……。」


未来が俺を押し倒す。

ちょうど小説の中と真逆の構図だ。

いや、これ以上はもう……。

そう思った時だ。


「はよーッス……、ってうぇえ!?な、何してるんスか、センパイ方!?」


いい意味で雰囲気をぶち壊すのは俺的にはグッジョブだが、

それはそれとして空気嫁、いや空気読め。

わざわざ文章でしか通用しない表現方法を使っている時点でお察しだ。

金髪にヘッドフォンのコイツは呉朱音(くれあかね)。『サブ研』唯一の1年にして新入部員だ。


「別に、ただ小説の一部分を再現してただけよ。何か?」

「い、いえ……、で、でも、学生同士でそういうのは……。」

「晶は同意したわ。」


なぜこう無駄に争おうとするんだ。そしてしれっと俺を巻き込むな。

うん。ここはマジメに助けが欲しい。


「おっす。練習終わったから見に来たぜー。」

「あら、どうしたの?喧嘩はダメよ?」


ナイスタイミング。昴も明子先輩も完璧だ。

野球部のユニフォーム姿のコイツが長谷昴(はせすばる)で、亜麻色の巻き髪なのが高木明子(たかぎあきこ)先輩だ。


「いや、コレは喧嘩というかなんというかッスね……。」

「指導の一環のようなものです。」


二人とも慌てて誤魔化す。


「そう?ならいいけど。呉くんも明日葉くんも、そして水矢くんも、部活内での騒ぎはほどほどにね?」


先輩は偉大である。改めてそう感じた。


「では、全員いることですし、会議しましょうか。」


こうして、今日も部活が始まるのだった。

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