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破壊魔ですが、救世主です。  作者: 羽山小夜
2/3

2 \(^o^)/




パァン

体が爆発を起こしたように、細胞が皮膚を突き破って弾け飛ぶ。血や、骨、内臓があたりにビチャビチャと撒き散らされ、視界が真っ赤に染まった。

痛い、そう思う暇さえ与えられないほど、一瞬の出来事で。痛み以上に血が沸騰するように身体が熱く、逆に体の芯は急激に冷やされていく。

意識を手放したくなる中、頭の中で響くのはシステムさんの声。


《転移失敗。生命エネルギーが著しく低下中。応急措置システム発動。問題を解析…。スキル『変質』を獲得。スキルを実行します》

あぁ、何か言ってる……意味わからんし、なんか真っ暗で寒い。これ死ぬな。あぁ、本当に……。




《マスター、起きてください》

ピクンッ

目を開ける。ん?目がある。


「うおぉ!生きてタァ!」

口がある。頭を動かして、体をマジマジと見つめる。そこには慣れ親しんだ高校の制服を着た体があった。

「体があるぅ!生きてる、私は生きてるゾォ!」

腹の奥から吐き出せる声。キョロキョロと辺りを見渡せば、広い草原が広がっていた。

《マスター、めっちゃ喜んでるやん。いやー、一時はどうなるかと思いましたわぁ》

…………いや、お前がどうした。

「あの、多分システムさんだよね?声同じだし…」

《せやで。あ、この喋り方ですかぁ?これな、マスターが『変質』っちゅう、スキル獲得したからこうなったんですよぉ》

変質?なんだそれ。……まぁ、いいや。そんなこもより。

「ここどこ?」

《μγo世界やけど…知りませんでしたぁ?》

「…うん、そうじゃなくて。なんか、周り、草原しか見えないんだけど。マジ、ここどこ?」

うん、やっぱ何度見ても草原だ。草しか生えていない。どんなに目を凝らしても、緑しかない。

《解。クレミー草原。昼の王国領に存在するμγo世界最大の草原》

なんか、口調が…いや、もう何も言わん。


クレミー草原。昼の王国。ど、こ、だ!!うー、考えても仕方ないよね。ここ異世界だし。……まぁ、手っ取り早く昼の王国?ってところ、目指そうか。

よし、そうと決まれば即行動。

私は歩き出す。

《マスター、ヤバイです。マスターのHPがあと3しかありません。やから、転けたりしたら、すぐ死にます》

し、死ぬぅ??

「あのー、HPって、よくゲームとかであるやつのこと!?」

《はい、つまり命の大きさと同義です》

それが、3しかないの?そんでもって、転けるだけで死ぬって……。

私は立ち止まる。

なんてこった、パンナコッタ、ヤバたんか!……フー、よし、落ち着け。ゆっくり、ゆっくりその場に座るんだ。

そう、その調子だ。

ジワジワと時間をかけて尻を地面に下ろしていく。

ブスッ

座るのを完了すると、微かな痛みが尻に走った。

ブス?

《マスター!!ヤバイヤバイヤバイ。HPが0.15です!あんたバカですか?!木の棒が尻に刺ささってますわぁ!》

うわぁーん。私が何をしたっていうんだ。前世か?前世が悪いのか?尻に棒刺さって死ぬなんて、絶対ヤダ。いや、今は何もせず、HP回復まで待つんだ。………うーん、HPって自動回復するのかな?するよな、しないと困る。私が死ぬ。

《マスター、HPが1まで回復しました》

やったね!よーし。その意気だ、頑張れ私のHP!


私は待つ。それは気長に。真っ青な空を見上げて、待ち続ける。

システムさんからHPの経過報告を聞きながら、待ち続ける。


さらに待つこと約1時間。最新の報告では私の命…もといHPは20を過ぎた頃だ。………遅くね?とか、心の優しい私は思わない。でもさ、何も無いんだよ。目の前は緑、緑、緑、緑!正直ね………とっても。


ヒ、マ、ダ☆


「というわけで、システムさん。私とお話できる?あ、もちろん優先は私のHPだよ」

《どういうわけか分かりませんが……いいですよ。スキルの説明とか、しましょっかぁ?》

スキル…あー、あの変質?とかいうやつね。いや、それも気になるんだけど。一番疑問なのは…スキル獲得に至った出来事の方。いや、異世界だから多少、不思議なことがあるって分かるよ?むしろ、それを求めてるわけで。それにしても、おかしくないか?異世界きたら、突然、体が爆発で死にかけるって、異世界転移の法則に反してね?転生ならまだ、分かるけど…。

《HP24まで回復しました。あ、少し待ってくださいねぇ》

「うん」


ゆらゆら、三角座りで体を左右に揺らしながら、ポケ〜と、空を見上げる。

空が青い。それどころか、太陽までサンサンと降り注いでる。……元の世界とどう違うんだろ。なんかさ、異世界きたら、魔物とか襲ってくるもんじゃね?まぁ、今来られたら確実に私、死ぬけど。

まぁ、聞いてみないことには、ね。

《準備できましたぁ。スー、うん、いい香りぃ》

何の準備とか、お前今何してるとか、そういうことは聞かない。本題だ、本題!

「うん、システムさん。なんでこの世界来てすぐに、私爆発したの?」

《ブフッ!ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ…………黙秘します》

おい、お前何か吹き出したな。お前、システムだよな?システムなんだよな?…………と、そんなことより。

「システムぅ?どういうこと?」

何か絶対隠した、コイツ。

《………………》

「システムぅ?」

《……ウゥ。いやぁ、違うねん。なんて言うかぁ、こっちの誤作動っていうかぁ》

…コイツ人間らしくなったなぁ。なんか悪いことした政治家みたい。ヨシッ、マオちゃん、システムを問い詰めまーす。

「で。具体的に?」

語彙を強めて。ニッコリ笑顔を浮かべる。システムが私の顔を見てるのかは分からないけど、それなりに黒い笑顔になっているはずだ。

《イヤー、だって、鍵持ちが来るとか聞いてなかったし。なんか、監視者が焦らすしぃ……あ、コレ機密情報やった》

監視者?鍵持ち?よく分からん。分からんことはどんなに考えても、分からんのだから、今はパス。それで、話の要点を掴むと、つまり………

「システムの失態ってことだよね?」

ギクッ、そんな声がシステムから聞こえて来て、コイツのポンコツさに一抹の不安を覚える。それと同時にちょっとした悪戯心が燻る。ヨシッ、マオちゃん、システムを脅しまーす!

《分かりましたョォ。特例でスキルをもう1つ贈呈しますよぉ!》

「……………」

《な、何ですか?》

え、うん…なんか、ね。意気込んだ手前、こんなにアッサリ、ねぇ。それも、向こうからの提案で。

「いや…………1つだけ?私、痛かったなぁ。なんか、勝手にこの世界に来させられたし。異世界選択の時間も殆ど無かったなぁ」

システムを強請るマオちゃん。まぁ、これは駄目元なんだけど。いや、流石に、ねぇ〜。そこまで、システムもポンコツじゃないと思うのよ。

《分かりました。ふ、2つだけですよ。こ、これ以上は無理ですからね》

前言撤回。もっと搾り出そう。

「システムぅ。あー、まだ痛いなぁ」

前世はチンピラでもやってたのかしら、私。転移前は女子高生なのだけれども。

《ぐぅ〜、持ってけ泥棒!》

え、何そのノリ。

《で、何のスキルが欲しいのですか?》

う。考えてなかった。というか、選べるんダァ。

「何があるの?」

《何でも、望んだものを》

ハッ、とんだチートだぜ。

まぁ、有り難く受け取りますがね。


あー、うーん、でも改めて何が欲しいかと問われると…。いや〜ね〜、魔物、とか敵がいることが分かってるなら戦闘系選びますとも。それこそ“時間操作”とかね。

だけど、周りには草ばかり。最悪、昼の国?ってところも、草しか無かった場合、“料理スキル”とか、欲しいよね。草をどれだけ美味しくできるか、的な。食っていうのは、命の次に大事なものだと思うし。

うーん、“瞬間移動”とか勝手が効きそうなものもいいよね〜。戦闘や移動手段としても使えるし。正直、周りに草しか無いところを見ると、昼の国?まで、かなりの距離あると思うもん。

で、ここで頭のいい私は“瞬間移動”と“時間操作“を掛け合わせて、“時空間操作”のスキルを取ろうと思うんだ。フフンッ、我ながら妙案だわぁ。

あとは……今、決める必要ないと思うの。つまり、保留!あとの2つは今後、色々なことが分かってきたら、決めよう。


《あのー、マスター?》

システムがしびれを切らしたように、話しかけてくる。

「おっと、待たせたね。スキルのことだけど、“時空間操作”をください!」

《了。スキル『時空間操作』を獲得。……あとの2つは、何ですかぁ?》

「保留!」

《了。スキル『保留』を獲得》

うん、うん……あぁん?いや、いや、いや、いや、チョッチ待ってぃ!なんやねん、“保留“って!えぇ!嘘ぉん!マジ?マジなの?!

《マスター、残りの1つは…?》

「保留…」

《かしこまりました(笑笑)》

おいっ!こ、こいつぅ。笑いやガッタァ。ムキィー!怒ったゾォ、すっごく怒ったゾォ!

「えぇい、スキル発動じゃい。時空間操作!昼の国まで瞬間移動じゃ!」

辺りに怒鳴り散らすように、スキル発動の宣言をする。

……………しかし、何も起こらない。

私の頭の中は“???”である。

《あの〜マスター。何か、勘違いをしていらっしゃる様ですが、スキル『時空間操作』で操れるのは、時間と空気だけですよ?》

はぇ?時間と…空気?

「ふぅあっ?!なっ?!はっぁ?!」

狼狽する私を嘲笑うかのように、否、嘲笑いながらシステムは残酷な報告を告げた。

《HP27。HP完全回復しました。––––––––––緊急報告!ヤバイヤバイヤバイヤバイ!なんか、レベル30000越えの魔物が猛スピードで、こっちに向かってる!》

さっ、三万!?……って、魔物もびっくりだけど、私のHP満タンで27なの?!



ゾクリッ


嫌な気配、もとい荒げた息のような音を聞き、ゆっくり後ろを振り返る。

「あ、あぁ、あ……」

情けない自分の声と、目の前にそびえ立つ魔物の涎が草に落ちる音が嫌に大きく聞こえた。

目の前が真っ暗になった感覚と共に、相手の力量を示すかのように頭の中にシステムの声が鳴り響いた。


《名称 :炎龍

LV : 34062

HP :50085/60000

MP :0/0

## :4000/4000

スキル :『炎砲』『停止』

称号 :『破滅を呼ぶモノ』》


け、桁が違う。私の異世界ライフ第一号の相手がドラゴンって……はぁ?!って感じだ。泣きそうにもなった。死にたくない。短い時間の間に何度も思った。恐怖のせいか、体が動かない。涙が止めどなく溢れ、今度こそ死を覚悟する。あぁ、何で今なんだ?いや、今だからこそなのか?走馬灯は流れなかった。ただ1つ、頭の中に、浮かぶもの。残念ながら家族や、友人のことじゃない。私の頭を駆け抜けたのは1つの疑問。


「なんで\(^o^)/がオワタになるのよぉ!」



マ「ねぇ、システムさんの変更ってできないの?」

シ「どうゆう意味や?わい、プライベートでは本気で怒るで?」

マ「後書き内の会話は残業です。敬語でお願いします」

シ「マスター、残業手当は出ますか?」

マ「いいえ。年中無休で、報酬無しです」

シ「とんだ、ブラック企業やわ!(泣)」


会話終了

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