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最終話とこれから

思い出の日々を絵にした厚い本。最後のページに友達との言葉を残して、もう簡単には会えないことを受け止める。

今日で見納めの制服も、学校も、教師も十分に目に焼き付けて、彼等は名残惜しくも桜の下を通って帰って行った。



「そろそろ私達も帰ろうか」


「うん」


「あ、ちょっと待て。今日俺ん家来いよ」



他に誰もいないことを確かめて彰は小さく呟いた。話の意図が理解できなかったのか、二人とも不思議な表情で振り返った。



「百合が待ってるからさ」


その一言で満面に微笑む。今日一日、忘れたくても気になっていた彼女にやっと会えると、心から喜んで、三人も学校を後にした。






入った瞬間に広がる甘い香り。一気に食欲を訴える身体と葛藤しながらも、二人はその香りを作り出した本人に駆け寄った。



「久し振り!」


「百合ちゃぁん!」



元気よく抱き付いて来た二人を受け止めた百合はにっこりと微笑む。



「卒業、おめでとう」


「って、何このお菓子!」


「うっわー! すっご!」



テーブルに並べてあるのは見たこともない上品な作りの菓子。和菓子もあれば、洋菓子もあり、どちらとも言えないものまである。



「今まだ試作段階のお菓子達。ま、私なりに工夫してあるけど、流石にパティシエさんのようには上手くできないなぁ」


「考案役なんだっけ?」


「うん、作るほどの技術ないからね」



それでも入社して一年の彼女の地位としてはかなり上位の扱いだ。まだ新人に近いはずなのに、新作品の話は全部彼女を通される。

ありえないくらいハイスピードの昇進だ。



「にしても、まさかあそこに入るとは」


「お父さんが憧れてた店だし。それに知り合いっていうことで何とかならないか試してみただけだよ」



さらりと簡単に言ったが、それでも二、三週間は通い詰めて説得したのだ。



「そんなことより早く座って!」


「「うん!」」






散々騒ぎ、食べて、満足した二人が去った後、百合は片付けをしながら彰と会話する。



「やっぱり大変か?」


「もち、貴方のお兄さんは容赦ないしねー」


「仕事は慣れるまで三年かかるって言うしな」


「あー、本当かかりそう」



苦笑する百合に彰は後ろから抱き締めた。食器を洗う手を思わず止めて彼女は首を傾げた。

互いの温もりを感じて、心を落ち着かせる。ずっとこの時間が続けばいいと思うほど、心地よく穏やかな空間。



「本当に、手に入るなんて思わなかった」


「え?」


「俺が素を出せる相手と交わした約束を果たすために先生になったけど………また会えるなんてわからなかったし、会えたとしても教師を相手に好きになるなんて思わなかった」



遠い昔に交わされた約束。少女がそれを覚えてるなど彰は思っていなかった。けれど、それでも約束を果たしたくて、彼女に会いたくて勉強した。その想いが恋と気付かず。

再会したその瞬間にやっと彼は自分の気持ちに気付いた。気付いたけれど、彼女が彰を好きになるとは思えなかった。



「私も………恋人ができるなんて思わなかったよ。友達すらいなかったんだもん」



大切な人が増えた。確実に、それぞれに。

それは、互いに恋をしたから。互いを意識して、互いに変わっていったから。



「大好き…」



心に浮かんだ気持ちを素直に口にする。彰は煽られた気分となり、思わず彼女の首筋に唇をつけた。



「―――ひゃ、ちょっと!」


「後、二年。仕事が慣れたらさ」



彼女の抗議を無視して彼は真剣な眼差しで静かに呟いた。聞き逃してはいけない気がして百合は黙る。

互いに目を見つめて、ゆっくりと時間は流れる。



「財津の姓にならないか?」



大きく見開かれた彼女の瞳は次第に潤う。ポロポロと涙する百合に彰はキスをした。



「共働きなら、考えてあげるよ」


「………可愛くねーの」



笑って、見つめて、触れ合う。

ゆっくりと、自分達のやりたいことを見据えながら、間違えぬように歩いていく。






まだ、彼等の道のりは先が見えない。

全てはこれから、ひらいていくのだから。







えっと。終わりです。………何かいつもこんな感じですね。すみません。

本当次からはちゃんとした設定を組みか、ある程度終わらせてから投稿したいと思います。

こんな駄作ですが、評価・コメント下さると嬉しいです。

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