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潜入と真実

見覚えのある姿に誰もが言葉を失った。

先ほどまでここにいたのは、新しく入った…知り合ったばかりの狩野朱理という人物だった。いや、だと思っていた。

人はこうも簡単に変装して誤魔化せるものなのか。彼等には理解できない。しかし、彼女…百合は今それを簡単にこなして、この場にいる。



「百合………」


「彰を取り返しに来ました。総一郎様」



にっこりと朱理口調で微笑んで、百合は彼の前に怯ます佇む。



「お前、何で……」


「あら、こんにちは…章様。この前はご忠告ありがとうございます。でもね、残念でしたね」



優しさを感じられるが、何処か闇を帯びたその笑みに章は眉を寄せた。



「私は……諦めが悪いんだよ」




「言いたいことはそれだけか?」




重い声が部屋に響いた。いつの間にか立ち上がっていた彼は百合を見下ろすようにして睨んでいる。

百合も同じくらい険しい顔で彼を睨んだ。



「言いたいことなら山ほどある。あんた、今まで自分の息子の言葉、まともに受け取ったことあるの? 聞こうと思ったことあるの?」



予想済みの彼女の言葉に総一郎は顔色一つ変えない。今さらそんなことを言っても何も変わらない。それは彰や章だけでなく、言っている百合自身も理解していた。



「私、ずっとすごい人なんだと思ってた」


「………?」


「お父さんが尊敬する、店の社長さん。こんなに美味しいものを作れる人ならちゃんと人の気持ちを理解している人だねって、私のお父さんが言ってたから」



死んでしまった父親。彼がいつもいつも彼女にお土産として買ってきたお菓子。それがここの店の者だった。

百合にとって無くしたくないこの味。だから、自分の父親が考えた案をダメ元で実行した。



「この味の優しさとか、美味しさがわかってるのに、どうして貴方は人の気持ちが理解できないの?」


「うるさい! そんなこと言いに来たのならさっさと帰れ! これ以上私に何か言うのならお前をあの学校から追い出すぞ!」


「な、何だと! どんな権利があってこいつの居場所を───」



掴みかかろうとした彰を章より早く百合が静止して、泣きそうな表情をしたまま総一郎に顔を向ける。



「やりたければ、やればいい。私は学校という場所に思い入れはないから」


「何だと? 我慢するな、お前にとってもう居場所はあそこだけだろう?」


「学校という場所はどこにでもあるでしょ? 追放されても怖くない。別に、関係ない。だって、私の居場所は、彰やみぃちゃんやしおちゃん達の……中にあるから」



百合は隣りに立つ彰の手を握る。震えている彼女のそれをそっと握り返すと、仄かに彼女の緊張がほぐれた。



「ねぇ、どうして本当のこと、言わないの? 彰だってそれ言えばもう少し考え方が変わるのに、それを利用して何とか社長について考えさせれるのに、どうして言わないの?」


「お前、何を知っている!」


「知ってるよ。だって、見てればわかるよ。お父さんと、同じだから」


「ふん、そんなもの脅しに使わなくても、こいつは私のものだ。好きに使うさ」



好き勝手言われ、ついに彰は我慢できなくなる。百合から手を離して、瞬時に総一郎の胸倉を掴んだ。予想できなかった状況に彼女は一瞬反応が遅れた。

腕が振り上げられたその瞬間、弾かれたように甲高い声が響いた。



「総一郎さんは─────ガンなの!!」



シンと当たりが静まる。振り上げられたままの腕はその状態で停止し、揺らしている瞳を総一郎に向けたまま、彰の思考は止まった。

静かに腕を下ろして、本人ではなく、百合の方を向いて確認する。



「それ、本当か?」


「見間違えるわけないよ。同じなんだ。お父さんと」



同じ薬、同じ咳、同じ症状…、もう一生思い出したくもない、その症状。

総一郎は深いため息をついて、彰の手を振り払った。



「余命、二年だ」



既に決まってしまった命の長さ。

状況が、くるくる変わる。







一週間ぶり………?です。

すみません、本当すみません。予定を大幅に無視してますね。


一応言い訳を…。

あるイベントのために漫画を懸命に描いていたため、文章を考えることもできませんでした。

おかげで入稿完了です!

あと設計の締切りもあって。

はい、言い訳みっともないですね。

では、頑張って早く終わらせたいです。そろそろクライマックスです!

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