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戸惑いと友達

今日も彼女は学校に向かう。いつもと違う、スムーズ過ぎる登校。何も絡まれず、清々しい朝。

登校している生徒はまるっきり見当たらない。見えるとすれば小さい小学生くらいだ。



「あ、おはよう。百合ちゃん」


「!」



突然声を掛けられて、百合は肩を震わせた。振り返ればそこには昨日、いろいろと話を聞いてくれた彼女。



「おは、よ。みぃちゃん」



彼女の名前は天上みり。みぃがあだ名で、そう呼んでと昨日百合は押し切られた。

ぎこちない挨拶を交わして、二人は一緒に学校へ向かう。



「百合ちゃん意外と早く登校するんだね。昨日はびっくりしちゃった」


「あー、いつもなら不良に絡まれて遅れるから…」



いつもこの時間に出ていた。だから、同じ時間に着くはずなのに。

みりは少し目を細めて、笑った。



「大変だったね」



軽い一言。だけど、何か心に残るものが取れた気がした。

友達とはこういうものだろうか、と百合は微笑んだ。



「あ、みぃ! おはよ」


「しお! 何今日早いじゃん」



突然人が増える。知らない顔に百合は口を閉じた。しおと呼ばれた彼女は隣りにいた百合に視線を移して目を丸くする。



「あ、時条さん! この前はありがとね」



にっこりと笑われて百合は瞬きする。記憶を辿れば確かに彼女の顔には見覚えがあった。

真っ黒な長い髪を高い位置で一つに括って、少し細いが、綺麗な輪郭をした彼女。少し大人っぽく見えるが、話してみるとかなり子供っぽい性格だ。



「私だよ、この前廊下で助けてくれたでしょ?」


「あ!」


「何、あんたも助けてもらったの?」



みりは驚愕して声を上げた。

彼女は同じ学校の生徒に追い詰められているところを百合が助けた相手だ。

あの時ほとんど顔を見ずに通り過ぎただけだったため、思い出せなかったのだ。



「私、野原紫央里のはら しおり。しおって呼んで。百合ちゃん」



彼女達の環境の合わせ方に百合は目まいを起こす。今までこんなに女子と話すことがなかった彼女はこういう時どうしていいのかわからないのだ。



「あー、うん。よろしく」


「やっぱり、百合ちゃんて思ったよりも普通だよね! びっくりしちゃった」


「しお、あんた何気に失礼。あ、早くしないと時間なくなっちゃうね」



いつの間にか三人で登校することになり、簡単な話をしながら学校に着いた。



「こんなに早くから何かするの?」


「それが………あ、しお! ついでにあんたも手伝いな!」


「へっ?」



みりは無理やりに紫央里の腕を引いて、自分達の教室に引きずり込んだ。






職員室では、テストに向けて少し重苦しい雰囲気を醸し出していた。

彰は茶をすすりながら、周りの者の声に耳を傾けた。



「今回どこも範囲が広いから皆必死ですね」


「あ、特にあの子、時条はキツいでしょう」


「一年の時はかなり優秀だったんですけどね」



こんな会話で名前が上がってしまうくらい問題な生徒。けれど、彼等はそこまで彼女を怖がってはいない。



………元がいいからかな?



思わず笑んで彰は作業を再開する。






「みぃ! そこ違う!」


「え、嘘! ってか、しおも違う」


「マジ?」



いつの間にか三人でやり始めたが、何故か二人の方が必死になっているため、百合は瞬きをする。



「大丈夫?」


「「だめぇ!」」



見事なハモりに顔を緩ませる。

静かに笑っている彼女に二人は目を丸くして見た。



「笑った!」


「可愛いよ、百合ちゃん!」


「へ、な、何?」



突然の反応に百合は身構える。が、そんな行動は無意味で。



「今度からそうやって笑えば先生も少しは振り向いてくれるよ!」


「――――っ、だから違うんだってばぁ!」



周囲のことはお構いなしの百合の絶叫が教室に木霊した。







私にしてはかなり珍しく女友達がこの作品は出ました!しかも、結構重要キャラです。

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