喧嘩と温もり
「………」
「………」
みりと紫央里は互いに顔を見合わせる。どうしていいのか、二人は悩んでいるのだ。クリスマスが過ぎて久し振りに会った三人だったが、百合が先ほどからずっと落ち込んでいるのだ。
「百合ちゃん?」
「ど、したの?」
恐る恐る問う。するとゆっくりと視線を二人に向けて暗いトーンで答えた。
「喧嘩した」
「「え?」」
「彰と…」
信じられない言葉にまた二人は顔を見合わせた。百合は何度目になるかわからない溜め息をついて顔を伏せる。もうその日が遠い過去のようにも思える。
「一体何で………あんなに仲良さそうだったのに」
「クリスマスに?」
紫央里の質問に微かに頷いて百合は目を細める。あの日の朝までは、幸せだった。それなのに一気に落ちた。
章に会い、現実を知り、不安になって、泣き付いて。そして…。
「一体どうしたんだよ?」
「ううん、ごめんね。急に………両親のこと思い出して」
今は、まだ言えない。
それらしいことを理由として百合は下手くそに笑った。あまり疑うほど下手な嘘ではなかったが、どこか違和感を覚えた彰は彼女の顔を自分の方に向けさせる。
「本当に? 何か隠してない?」
意外な攻めに百合は瞳を揺らした。思わず口を開きそうになったが、必死に飲み込んで視線だけ逸らす。
「隠してるのは、お互い様じゃん」
静かに紡がれたそれは部屋に異様に響いた。何を言われたのか一瞬理解できなかった彰はそのままの状態で硬直する。百合はまた泣きそうに顔を歪ませて更に絞り出したような声で続きを言った。
「家のこと、自分のこと、全部…全部、言わずに隠してるのは彰じゃん! なのに私だけ言わなきゃいけないなんて不公平! だから、言えない!」
その言葉を発した後、百合は気がついたように顔を上げた。案の定彰は引きつった顔をして、黙る。傷つけた、と百合は自分を責める。
言いたくないからと彼を傷つけて、だけど打ち明ければまた彼が傷つく。何を選んでも傷つくことは変わらない。
何やってんだろ、私。
その日まともに口をきくことはなく、時間が過ぎていった。
「はぁあ………」
「ちょ、元気出してよ! 好きな者同士ならよくあることだって!」
「そうそう! 仕方ないよ! 元々二人は仲良すぎたんじゃないかな?」
必死の慰めに百合は微笑して、頷いた。だけどやはり晴れることのないその表情に二人は顔を見合わせる。
みりはちょっと躊躇いながらも隣りに近付き肩に触れる。
「あのさ、やっぱり相手が年上だと、こっちが引け目を感じることが多いと思う」
「………うん」
「だけどね、気にしなくていいんだよ! 相手は私達の年齢を理解してるんだから、思いっきり自分らしく対応しよう?」
意外な言葉に百合はみりを見上げる。その表情は柔らかいものだが、決して冗談ではない。みりはそのまま百合の手を握って微笑む。
「私達も相手が大人だと知っていながら付き合った。だから、相手に大人の対応や意地を張らせてあげなきゃ! 恋人だから、そういうのも許し合えないと、ね」
「…………そういう、考えもあるんだね」
思わず笑みを零して百合はみりの肩に頭を乗せた。少しだけ軽くなった心はやはり親友という強い存在が近くにいてくれるから。
「皆、大好き」
感じる温もりは彼とは違うけど、確かに温かくて、胸を満たしてくれるその存在に感謝した。
ピンポーン
家のインターホンに彰は首を回した。来ないとわかっていても期待している自分がいる。そんなことに自嘲しながらモニターで来訪者を見やった。
「何の用だ?」
「だからさぁ、兄に対してその態度はないでしょう?」
モニターに映るのはやはり彼女でもなく、彼が今一番会いたくない章だった。
すみません、昨日更新できず。。。
来週は正月ということでおやすみにさせていただきます。
次回は一月五日に。では!よいお年を〜