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憧れと嘘

「あー! 何で言っちゃうんですか!」


「うるさい! お前の助けなんか…いらないっ!」



睨み付ける彼女の顔を淋しそうに見つめて、彰は思わず口を閉じた。



「お前が、時条百合か…」



不良の男達は顔にシワを寄せて百合の元へ歩いてくる。

彼女は怯えることなく彼等を見返す。



「お前………」



すっと手が上げられる。反射的に百合は身構えて、身体に力を入れた。



「苦労してたんだなぁ」



上げられた手は彼女の肩に置かれ、男の顔は哀しそうだった。

百合は目を点にして、何も言えないでいる。



「時条百合がそんな奴なんて知らなかったぜ」


「悪かったな」


「俺達はてっきりただでかい面した女かと」


「これからは気をつけるから、じゃぁな」



彼等は自ら妙な納得をして、帰っていく。もう、何を言っても意味がないと悟り、百合は止めもしなかった。



「いやぁ、よかったですね!」


「おい……何で俺を助けた?」



胸倉を掴もうと手を延ばした。しかし、彰は彼女の手をあっさりと受け止めて、いつものひょうひょうとした顔を向けている。



「そんなの、わかりきったことですよ」


「先生だからか?」


「それも、あります」



彰は少し視線を外す。いつもよりも重い雰囲気を醸し出す彼に百合は手を下ろした。



「憧れだから。百合さんは、僕の憧れだったんです」


「?」


「学校が嫌いでも、両親が側にいなくても、学校に行こうと頑張る…百合さんがすごいと思ったんです」



予想にもしなかった言葉に百合は目を見開く。



憧れ…?


すごい…?


何が?



「知らないでしょう? 僕が昔は貴方以上に荒れた不良だったなんて」


「えっ!?」



彰は苦笑して、百合にちゃんと視線を合わせた。

今までにないとても真剣な瞳。まっすぐに彼女を捕らえて、否定できない空気。



「なぁんて、嘘でぇす!」


「―――……っ!」


「本気にしました?」



いつものふざけた表情に戻して、彰は笑いながら校舎の中に帰っていく。

その瞬間、学校中に四時間目の五分前を知らせるチャイムが鳴り響いた。




「あんのくそ教師ぃ!」




そう叫ぶのも仕方ない。






翌日。



なぁんか、今日早く着いた。



いつもかなりギリギリに着く百合は珍しく教室に一番乗りで入った。

違和感を覚えて教室から出ようとしたら、その前に二番手が教室に入ってきた。



「あ、時条さん」



見覚えのない女生徒。同じクラスなのだから知られていてもおかしくはないが、いかにも用事があるような表情をしていたため、百合は眉を寄せた。女生徒が百合に近づくことはほとんどないのだ。



「あの、昨日助けてくれて…ありがとう」


「あぁ」



昨日、百合を探していた不良達に絡まれていた女生徒だった。丸く、目元がパッチリとし、丸い輪郭に小柄な身体が印象的で、髪には少しばかり茶がかかっていた。本当に大人しく生きてきた女の子のイメージそのものだ。



「悪いな、俺のせいで…。怪我とかしなかった?」



やわらかく声をかけられて、彼女は顔を赤くして頷いた。



「よかった」


「あ、時条さん。最近よく学校に来るけど、もしかして財津先生のせい?」


「ち、ちが……!」



否定しようとした言葉は途中で止まり、百合は思案した。

今日、早く学校に着いた訳は…。



そうだ、不良が絡んで来なかった。



思わぬことで本当に彰に感謝しなければならないことが起きた。

それに、彼は…。



「時条さん?」


「………なぁ、先生が喜ぶことって、何だと思う?」



意味深な問いに彼女は頬を赤らめた。百合は勘違いされた内容をすぐに読み取って声を荒げる。



「違うからな! そういったイヤらしいものじゃなくて…」


「………あ、そうだね。時条さんの場合はやっぱり、勉強じゃないかな?」



にっこりと彼女が述べた内容はかなり百合にとってキツい内容だった。







すこぉしずつ進展=シリアス

この方程式でこの話は成り立っています(汗)

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