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心と友

「ごめんね、みり」



あの後、皆と別れたみりと真司はまだその公園にいた。真司は慌てて頭を下げて謝る。突然のそれに彼女は多少驚きながらもやんわりと首を振った。



「ううん、私こそごめん」


「僕、わかってなかった。みりが来なくていいって、無理するなってことだったんだね。財津さんと話してやっとわかったよ」


「あ、そうだ! どうして財津先生と?」



彼は彰と共に現れた。接点がない二人が一緒なのはおかしい。けれど真司は苦笑して説明する。



「時条さんが、紹介してくれたんだ。みりのことを知るには、同じ状況の人と話すべきだって。あと、もう自分が協力はできないからって電話で」



真司がみりへの思いに気付くには彼女と同じ立場に話をすることが一番の近道。

けれど、それではどう考えて、どう気付けばいいのか結局はわからない。それならば、彼と同じ状況の人と話をすれば、少しはどう考えを巡らせればいいかわかるかもしれない。そう彼女は考えた。



「そっか。悪いことしたな、百合ちゃんには」


「そうだね。だけど、みり……いい友達できたな」


「うん」



久し振りに二人は心地よい空気に、穏やかな会話を交わしたのだった。






一方、百合はというと居心地悪そうに彰の自宅へ連行されていた。ぐしゃぐしゃになったメイクだけ落とさせてもらい今、すっぴんで彰の前を座っている。



「まぁったく、何考えてんだか」


「ごめん、だから……先に謝っただろ」


「はぁ……まぁいーけど。次からは少し落ち着いて行動しろよ」



何だかんだと彼は許してくれる。それが嬉しくて百合は表情を緩ませた。



「あ、そうだ。クリスマスは俺が変装してやるよ!」


「え! やだよ、普通でいてよ!」


「なぁんで。昔の族スタイルで」



それはそれで見てみたい気もするけど……。



「とにかく普通にかっこよくデートしたいんだってば!」


「じゃぁ、アンパンマン」


「なお悪いわ!」



一体彼のカッコいい基準というのはどういったものなのか疑いたくなってしまう。しかもどうアンパンマンに変装する気なのだろうか。

しかし、少し懐かしいこの掛け合いに百合は苦笑して、久し振りに安らかな夜を過ごした。






十二月に入り気温はますます下がる。白い息を吐きながら百合はいつもの時間にいつものペースで歩いた。すっかり不良に絡まれることがなくなり、有意義な学校生活を送っている。



考えてみれば、本当彰って何者なんだか。



彼の昔の地位はかなり強い。族というだけではなく、彰という名前だけで大抵の不良は逃げていく。実際彼女に不良の手が掛からなくなったのも彰のお陰だ。



不良活動してた時ですら彰なんて存在知らなかったのに。



「一体何者……」


「おっはよー! 百合ちゃん」



突然聞こえた声に思い切り肩を震わせて百合は振り向いた。その反応に逆に驚いて声をかけたみりも目を丸くする。

しばらく沈黙が続く。いつしかタイミングを計ったように二人同時に吹き出した。



「おはよう、みぃちゃん」


「うん。っつーか驚きすぎしょ! びっくりしたじゃん」


「あ、百合ちゃぁん! みぃ! おっはよー!」



今度は少し遠い所からの声に二人は呆れた顔でその主を見やる。朝だというのに無駄に元気な紫央里だ。いつの間にか彼女も次第に登校する時間が早くなっている。



「やぁっと三人そろったね」


「うん、お騒がせしました」


「あはは! でも、このお陰で私はやっと心からの友達ができたから…」


「心から……」



百合の言葉に紫央里は少し考えて、みりに視線を送る。何を言いたいのか彼女は理解したらしく、今度は百合に。流石に理解できず、二人を交互に見つめた。



「心の」


「友達で」




「「心友だね」」




綺麗なハモりで百合は微笑む。二人の手を握り、冷えた空気の中、暖かい手の温もりを感じながら、学校に向かったのだった。







はい、というわけで第三幕終了しました。次から最終幕に入ります。

いつもならここで予告ですが、全部できていない上に一応お楽しみ(?)ということで無しに致します。

次の話は来週の月曜から、同じく週三日のペースで頑張りたいと思います!

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