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強さと怪我

いつからだろうか。

こうして不良に絡まれるようになったのは。



大振りされた拳を難なく避けながら、百合はふと思った。こういった時、どのように動けばいいのか、身体が感覚で覚えている。

ちなみに紫央里は後ろできゃーきゃーと喜んでいる。



「くそ! ちょこまかと!」


「本当、二人そろって弱いよ」



避けたついでに蹴る。

避けたついでに殴る。

けれど、やはりあまりダメージはなさそうだ。それも百合が女だからというのもあるのだろうが、人並み以上にこの男がうたれ強いのも原因だろう。



「はっ、所詮は女って、あいつ等が言ってたわけだ!」


「………」



ムカッときた。百合は避けることをやめていきなり男に突進する。意外な行動に男も目を瞠るが、突然のことで対処できない。



「うっさい! 人がそれなりに気にしてることを言うな!」


「いででででで」



しかし、彼女が繰り出した技は拳でも足でもなく、彼の頬を思い切りつねる行為だった。普通に闘うより、地味に痛い。



「百合ちゃん! すごいけど、まぬけ…」


「気にしないで!」



容赦なくつねり続けるが、男がいきなり抱き付いてきたことにより手を放してしまう。身動きが取れないのもそうだが、何より知らない男に抱きつかれるのはあまりいい気分ではない。



「な、ちょ、」


「捕まえた。これで避けれねーだろ」



腰や肩に手を回されて悪寒が走る。もがいてもやはり力では勝てず、泣きそうになった。



ここで泣いたら、終わりだ!



「放せ!」


「あ、そうだ! お前の男は何処にいる?」


「………知らない。俺に男なんかいねーよ!」



睨みで反撃して虚勢を張る。これは彰に迷惑をかけたくないためでもあるが、事実でもある。

しかし、そんなものが通用するわけもなく、男は彼女の腕を取り、軽く殴る。

体重が軽いため、それだけで後ろに飛ばされた。



「百合ちゃん!!」


「早く吐け! 俺はそいつも倒さなきゃいけないんだ」


「………、倒せないよ。お前なんかが、あいつを倒すなんて無理だ!」



口元についた血を拭いながら言った。目頭が熱くなる。けれど、必死に涙は抑える。



「あいつは、俺より強い」


「当たり前だ」



突然現れた声に三人共に驚愕する。理解する前に男の背後から彰が現れ、容赦なく蹴り倒した。



「………あ!」


「財津先生!」



二人の声など聞こえないかのように彰は男を足蹴にして、睨む。



「僕の生徒に手を出さないでもらえますか? できれば平和な日常を送りたいでしょう?」


「な、何言って……」


「俺は、昔ここで陣張ってた彰、なんだがな」



最後の言葉は小声で男に呟いた。

彰、という名前に聞き覚えがあったのか、男は面白いくらい顔を真っ青にして腰を抜かした。

もう、暴れないと判断した彰は元の教師の顔に戻って百合の方へ歩み寄った。



「大丈夫ですか? 時条さん」


「あ、はい」


「かっこいー! 先生! 結構強かったですね」


「これでも、昔は族に入ってたんですよ」


「?!」


「あはははは! そんなん、誰も信じないよ。ね、百合ちゃん」


「あ、うん」



シャレにならない彰の言葉に何故か百合がはらはらする。笑う紫央里にバレぬよう彰を軽く睨んだ。

しかし、彼はそれをスルーして、にっこりとあの笑顔を向けた。



「それよりも時条さん、顔が…」


「………! あ、先生ついでに手当てしてあげて下さい! 私今日当番なんで早く行かないとだし!」


「え! しおちゃん!」



百合が止めるのも聞かず勝手に紫央里は学校の方へ走って行く。

行き場のない手を降ろして、小さく息をついた。



「あの、」



口を開こうとした瞬間、勢いよく彼が百合の顎に手をかけて、顔を持ってかれた。教師の時とは違い、強く、くっきりとした瞳が彼女を見つめていた。



「あ、彰?」


「腫れてる。早く冷やした方がいいよ」



そう言って彰は彼女の腕を掴み、歩き出した。







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