表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/69

戻りたいと再び

暖かい温もり。

優しい香り。

力強い腕。


すべてが、なつかしい。






「や、」



ぞくぞくするそれに身をよじる。触れてはいけない、近付いてはいけない、そう警告してくる。

けれど、彼は一向に放してはくれない。



「戻りたいんだ」



耳元で懇願する。その言葉は、何よりも切ない響きで彼女に入る。



「元にじゃなくて、特別だったあの頃に」



生徒でも、教師でもない。

本当なら有り得ない、特別な関係。



もどりたい



それは、彰だけじゃなく、彼女も。



「何で、我慢してたこと…言うんだよ」



放すのは諦めたのか、涙を溜めた目を彰に向ける。

本当に最悪な事態が予想外にも起きてしまった。もう、彼女には止められない。



「そんなの、私も一緒だ」



はまり始めた、彼女の人生。それは、いくつかあるピースの中から一つだけ選んで…。

そして、姿を決めていく。



「私だって、離れたくない! 元に、戻りたかった」



絶対と言わないと決めたその言葉。紡いでしまった瞬間、彼女の目から止めどなく溢れて行く。



「ばか、彰のせいだ。言うつもり、なんて………なかったのに」



力無く言う。掠れた声には微かだが安堵の色が帯びていた。



「………百合、戻ろう。その関係に」



きつく、強く引き寄せられて、百合は小さく頷いてしまった。




そして、もう元には戻れない。






ひんやりとした風を頬に受けて、百合は帰路を歩く。綺麗に瞬く小さな光に目を奪われながら。

ほわほわと覚束ない足取りでゆっくりと歩き、帰宅した。

柔らかい冷たさを感じる床を踏み締めて、そのままその場に座る。



「…………嘘、みたい」



まだ実感がわかなかった。本当に元に戻ったのか理解できなかった。

けれど、身体に残る切なさも、温もりも、香りも、全て現実で。

百合は顔を真っ赤に染めた。咄嗟とはいえ思いがけない行動を取ってしまったからだ。



「は、恥ずい…」



でも、戻れた。

戻れて…よかった。



諦めていた存在が、また戻ってきた。だから、百合は気付かなかった。


彼女にとって一番重要な、二人の関係について。






「百合ちゃん! ちょっと待って」


「あれ? 今日は早いねしおちゃん」


「うん! ちょっとね。あれ?みぃは?」



いつもなら一緒に登校して来る彼女の姿が見えない。百合も少し気にかけていたが、首を振るしかできなかった。



「珍しい。寝坊かな?」


「さぁ? よくわかんない」



とりあえず学校に向かいながら二人は昨日の文化祭のことや今度のテストのこと等他愛ない会話をした。



「でね、今度服を買いに行きたいんだけど、一緒に行かない?」


「うん、いいけ………」



何か、感じたことのあるものを察して百合は紫央里の腕を引いて横にそれた。すると目の前で木刀が通り過ぎる。



「くそっ! 勘がいい奴め!」


「ごめん、こういう不意打ち慣れてるから。ってか、あんた誰?」



見覚えのない男に百合は眉を寄せた。最近はめっきり減ったと思っていたが、久し振りに百合に喧嘩を売りにきた不良が訪れたようだ。



「ふん、お前とお前の男に倒された奴の兄さ。可愛い弟の為に仕方なくお前をボコしにきた」



そう言われて見れば、二人のうち一人に髪型や目元が似ていた気がした。

百合は大きく溜め息をついて紫央里を後ろに追いやる。



「百合ちゃん男なんていたの!?」


「ちょ、しおちゃん、今それを突っ込むの何か間違ってるから!」



っと言っている間に男は襲いにかかる。それを反射で避けて難を逃れるが、どう見ても見逃してはくれなそうだった。







サブタイトルが……何かいいの浮かばないです(汗)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>恋愛シリアス部門>「ふたつのピース」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ