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新学期と文化祭

そして、夏は過ぎて。

始業式。



「おはよー百合ちゃん」


「おはよーみぃちゃん」



いつものように二人は早めに学校に着く。休みボケからか、みりは百合の横で眠たそうに欠伸を繰り返した。



「寝不足?」


「うん、余ってた宿題一気にやったから。やっぱり百合ちゃんみたいに早めに終わらせるべきだなぁ」



溜め息一つ。そんな彼女を微笑して見つめながらも、けれど百合は今他のことで頭がいっぱいだった。



二週間ぶりに会う……。

どうすればいいんだ?



こういったことの経験がない百合は、どう対応していいのか、わからない。しかも、彰とはあんな別れ方をしたのだ、平気な訳がない。

思わず小さく溜め息をつく。

そのまま時間は無情に過ぎて行き、始業式が終わり、大掃除が始まる。こういった時に限って担任が仕切る教室の掃除になる百合。



「ほら、時条さん! 手が止まってますよ!」



当たり前だが、彰はいつも通りだ。自分だけ意識していることが馬鹿らしくなった百合も次第にどうでもよくなっていく。



「時条さん! 男子が逃げました!」


「てめーで追い掛けろ! 馬鹿教師!」


「あぁ! ここに紙くずが!」


「そう思ったら手で拾えよっ!」



こうして他生徒に笑われながら二人のコントが繰り出される。

こうしてやっている間に無事(?)に一日は過ぎて、百合は家に帰った。



「先生さようならー」


「さようなら」



まだ日が高いうちに生徒は消えて行く。誰もいない廊下で彰は壁に体重を預けた。今日一日を思い浮かべて、自嘲する。



「戻れる……よな」



その呟きは確信というよりも、願い事ような微かなものだった。






「そうだなぁ、百合ちゃんみたいのは先生の前だけ女の子になるとか?」


「あ、“私”とか“でしょ”とか使って?」


「そうそう!」



お昼を一緒にしているみりと紫央里は真剣に百合のアプローチ方法を考えていた。実際、離れたのは彼女の意思なのでここまで本気に考えてもらうと心苦しい。



「あの、別にそこまでしなくてもいいよ? 私………先生を困らせたくないし」



次第に小さくなる声音に二人は黙る。何故かその顔は驚きのものだった。



「ゆ、百合ちゃんが………」


「私って………」



その驚きように百合は苦笑した。



「考えてみればあの海の時も私って言ってたよ!」


「あー! そうだ!」



新発見して二人はかなり嬉しそうだ。

確かに彰意外の前では俺を心掛けていた彼女。二年に上がってから彰以外にこの言葉を言ったのはあの時が初めてだった。



「にしても大人だなぁ、迷惑かけたくないなんて」



感心して紫央里は呟く。けれど、みりは少し浮かない顔で呟いた。



「でも、恋はわがままになった方がいいと思うよ?」



心配しているのか、すごく強く念を押される。百合はしかし、俯いて首を振る。



わがままなら、言った。


だけど、それは彰が優しいから。


だから…。



「百合ちゃん」



辛そうな表情をする百合を二人は見てることしかできなかった。彼女が何も言わないことには、二人には何かを言う資格はない。ただ、見守ることしかできないのだ。






それから二週間があっという間に過ぎて、時期は文化祭ムードへ突入した。



「じゃぁ、意見を出して下さい!」


「あ、ちなみに僕が出れるものなら大歓迎!」



冗談混じりに彰が言う。生徒は軽く笑ってそれを流す。次々と上がる出し物。

喫茶店、屋台物、お化け屋敷…、平凡で普通の考え。



「うーん、イマイチだなぁ」


「他に意見はないですか?」



一向に誰も手を上げない。



………、文化祭、出し物、彰が…出れるもの、非凡なもの……。



あまりこういったものの知識はない彼女だが、百合なりに悩んで、考えを膨らませていく。ふと、百合が何かを考えて手をあげる。それに気付いた委員長はすぐさま指名した。



「時条さん」


「できるかはわからないけど、カラオケ喫茶ってのはどうかな?」



聞き慣れないその出し物に、何となく生徒は決定してしまった。







ものすごく時期があった投稿になりました。この際だからこれからも時期を合わせて投稿してみようかな?っと、検討中です。

文化祭です。その行事が過ぎる頃が第二部終了になります。

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