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花火と疑問

焦った



百合は冷や汗をばれないように拭い、呼吸を落ち着かせる。未だに治まらない動悸に眩暈がしてくる。



「ほら、言ったでしょ?」


「うへ!」


「ばれないって」



自信満々の彰に百合は何とも言えない表情をする。

先程みりと紫央里が見た浴衣美人は、そう正真正銘百合本人。



「〜〜〜でも!」



声を上げる彼女を視線で制止する。隠し続けるにはどんな時でも百合の面影を出してはいけないのだ。



俺、何でこんなことしてんだろ。



ばれないように小さく溜め息をついて、百合は下を向く。



「………別に無理して来なくてもよかったんだよ」


「へ?」



そんな彼女を見兼ねて彰は言う。夏祭りを一緒に行くと提案したのは彼のわがままで、彼女が応える義理は本当はない。



「そんなことしたら、彰はまた離れるだろ?」



だけど、彼女はちゃんと気付いている。自ら彼から離れれば、自分に関わることはしなくなること。

特別を要求した彼女が、特別な行動を拒む訳にはいかないこと。



「よく、わかってる」


「当たり前。ほら、早く」



人込みの中彼女は話題を変えたくて彰を引っ張る。

けれど、上手く進めず、逆に人の流れに押された。



「こっち」



彼女の肩を自分の方へ寄せて彰は店とは違う方へ歩き出した。近過ぎるその体制に今度は違う意味で心臓が早鐘を打つ。次第に人が消えて、明りも少くなる。



「いいものが見えるよ」



にっこりと自分よりも子供らしい笑みを向ける彼に百合はつられて笑う。

川原の方へ行くと見なくなった人影がまた増える。土手に座り込むカップルを不思議そうに見ているとぼそりと耳打ちをした。



「今まで百合は夏祭りというものに縁がなさそうだから」


「わ、悪かったな! だけど、私だって――――」



言い返そうと口を開いた瞬間、空が明るくなる。刹那、周囲から歓喜の声が上がり、賑やかに。

赤、緑、青、黄…色とりどりの光とずれて聞こえる音。幻想的な空模様に百合は目をみはった。



「花火………」


「久しぶりでしょ?」


「うん」



火で起きる奇跡に見取れながら、百合は目を細めて考える。



昔は……見てたのに。



肩を震わせる彼女に彰は苦笑して頭を撫でてやる。



「百合はもっとわがままに生きるべきだよ」



静かに呟いた彼の言葉が頭に響いた。






でも、彰?

私は、最大のわがままを彰に言ったんだよ…。






透明な麦茶を見つめながら百合は悩む。氷が入っていたはずのそれは今はもう無くなり、冷たくもない。



「聞いてる? 百合ちゃん!」


「へ?!」


「だからぁーライバル登場だよ! 浴衣美人!」



ぎゃーぎゃー彼女の目の前で騒ぐみりと紫央里の言葉に思わず苦笑する。百合のライバルは百合。そんな話をされたら誰だってそうなるだろう。

しかし、そんなことを知る由もない二人はかなり焦っていた。



「あれ、あいつの従兄弟らし………」


「従兄弟でも結婚できるんだよ!」


「安心してちゃ駄目だって!」



そう啖呵を切りながら目の前にあるお菓子を口に頬張る。

勢いに押されて百合は何も言えない。



「百合ちゃんも先生の家に押し入るくらいしないと見込みないよ!」



ごめん、もうしてる。



「そうそう! 料理を作ってあげるとか!」



それもした。



「更に一緒にゲーム」



経験済み。



「「まぁ、そこまで言ったら恋人同然だけどね」」



同じタイミングで笑い出す二人につられて笑う。しかし、言葉の意味をすぐに理解して硬直。



あれ?

そういえば、彰との関係って………何?



今更ながらの疑問が浮かぶ。







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