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ゲームと夏祭り

百合は悩んでいた。

彼女が今いるのは彰の家の前。中は既に明かりがついてあるのだが、だからこそ彼女は悩んでいた。



この前はいなかったから入れたけど。



中にいるとわかると躊躇してしまう。

インターフォンを押すか押さないかで止まって百合は扉を睨んでいた。



いざ!



押そうとした瞬間、扉が突然開き、角が見事額にぶつかる。



「わー! 大丈夫?」


「大丈夫なわけねーだろ! こんちくしょう!」



入るのを迷っていた自分が恥ずかしくなり、親父も既に言わない言葉をごまかしとして吐き捨てて百合は上がった。



「何してたの?あんなとこで」


「べべべべ、別に」



時刻は夕方の五時。夏だからまだ昼のように明るい。

けれど、日当たりの問題からか、室内は少し暗く、照明がついていた。



「ねぇ、百合」


「何だよ?」


「ゲームしよう!」



突然に提案され、更に文句を言う前にテレビの前に座らせられ、コントローラーを握らされた。



「な、何勝手に! しかもWiiだし! ハンドルだし!」


「さぁ、やるよ! マリオカート!」


「マリオかよっ!」



何だかんだと流れでゲームをすることになり、あまりゲームなどしたことない百合は意外な面白さにいつの間にか真剣に勝負し始める。



「あー!」


「やめっ!」


「ほわぁー!」



かなりうるさい。

そして…。



「わぁい! 三戦三勝」


「くそ、手加減しろよ」



やはり持ち主には勝てないのか、彰に全敗し地味にショックを受けている百合に思わずクスクスと笑った。



「じゃぁ、百合。来週の夏祭り、一緒に行こうね!」


「わかったよ………」



投げやりに返事をして、百合は溜め息をついた。

しばらくの間、その後。



「はぁ?! な、何いきなり言ってんだよ!」


「だって百合負けたでしょ?」


「“でしょ?”じゃねぇ! そんな賭けした覚えはない! 大体教師と生徒が二人で行ける行事じゃないだろ!」



可愛らしく言われた無茶な相談にノリで可愛らしくを真似して突っ込みを入れ、最後は叫んでいた。



「だぁいじょうぶ! 百合が変装すれば!」


「はぁあぁあ?」






そして月日は流れて。



「なぁ、本当に行くのか?」


「違うでしょ? 言葉遣いが!」


「………、本当に行くの?」


「はい、行きますよ」



軽く答える彼に少しだけ殺意が芽生えたことは、仕方ないことだろう。



「でも、ばれ」


「ばらせないよ」



彼女の言葉を遮って彰は微笑む。それがとても意地悪く、企んだ表情だったから、百合は何も言えなかった。



「じゃぁ、行こうか」


「え、でもまだ祭りの時間じゃ………」



彰に連れてかれて百合は共にその場を後にした。






「百合ちゃん来れなくて残念だよね」


「うん、まぁ仕方ないよ。それより、早く行こう!」



みりと紫央里は二人で浴衣を着て祭りに向かう。

既にその場所は警備が入り、車の通行を止めていた。暗い夜の中、そこだけ異様に明るく祭り独特の臭いと賑やかさを醸し出していた。



「うわぁ、本当賑やか! さぁ、楽しもう!」


「しお、あんまり飛ばし過ぎないでね」



いつも紫央里の制止役はみりで、時には二人共にはっちゃける。

それこそが高校生。



「いいじゃん、こんな時くらい」


「あ」


「あ?」



みりのすっ頓狂な声に紫央里も振り返る。その視線の先には見覚えのある人物。



「財津先生!」


「こんにちは!」



知り合いがいたら話し掛ける。それが祭りの常識のように躊躇うことなく二人は彼に駆け寄った。



「あ、こんにちは」


「あれ、その人は?」



隣りには黒髪の浴衣美人。落ち着いた表情に大人の空気を漂わせている。見覚えのない彼女に二人は首を傾げた。

祭、浴衣、男女一組。この組み合わせで想像することは一つしか考えられない。



「あぁ、ちょっとした友達ですよ」


「今晩は、二人共可愛いね」



にっこりと綺麗な笑顔に思わず二人は顔を赤くした。



「じゃぁ、またね」


「「は、はい」」



人込みの中に消えていく様子を茫然と見つめて、みりと紫央里は小さく呟いた。



「ヤバいよ…百合ちゃん」


「強敵だ」







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