表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/69

不安と照れ

流れのあるプールの方に移動すると二人は同時に百合の両腕を引っ張った。

危うく足を滑らしそうになったが、上手く態勢を保つ。



「どうして財津先生と話さなかったのよ?」


「そうだよ! もったいないじゃん!」



すごく真剣な表情に百合は瞬きを繰り返す。

次第に込み上げるものは堪えきれず、顔を崩していった。



「………っ、ふ、〜〜」


「ちょっと」


「何で笑ってるの!」



声を殺しながら笑う百合。もちろん、これには二人共無表情で怒りを表す。

百合はしばらく話すこともできずにただ笑う。



「だ、だって………。二人の顔、面白い」


「あー! 人がせっかく心配してるのに!」


「それはひどいでしょ!」



必死に謝りながらも未だに笑いが止まらない。



「ごめん、ありがと」



彼女のすっきりした笑顔に二人は何も言えなくなった。



話したかった。

それは本当だけど。



不安になる気持ちは尽きなくて、何も言えなかった。

だけど、心配してくれる人がいる。だから、不安は和らぐ。



「大丈夫、また話す機会あるしょ」


「そうだね! とりあえず遊ぼ!」



三人は気を取り直して遊びに出た。






「波のプールだ!」


「よし、行くぞ!」



とにかく二人は同じテンションで走り出す。体育会系でもあるのだろうか、身体をよく動かしていた。



「ごめん、ちょっと休んでから行くよ」


「「うん」」



百合は脇に設置されている椅子に腰を掛ける。

遠くで二人がはしゃいでいる様を微笑しながら見つめる。



「ねぇ、財津先生! 波のプールですよ! 行きましょ!」


「い、いえ。僕はここで休んでから行くんで先に行ってて下さい」



微かに聞こえたその声に思わず反応する。

けれど、顔は向けずに耳だけに神経を集中させた。



「じゃぁ、後で来て下さいね」



明らかに甘い声に百合は口を引きつらせた。

おそらく栗田先生は彰を狙っているのだろう。



見え見え。



そう思った瞬間、脇からあのナイスバディが通り、他の先生方も百合には気付かずに歩いて言った。

苦い表情でそれを見つめていると隣りに誰か座った。



「不細工だぞ、それ」


「!」



隣りから発せられた声は明らかに彰のもので、にまにまと笑いながら彼女を見ていた。



「な、何よ?」


「別に。ただ話がしたかっただけ」



純粋で直球過ぎる言葉に百合は顔を赤くした。最近わかったことだが、どうやら彼は正直者らしい。それが逆に居たたまれなくて、百合は彼に振り回されてばかりだった。



「別に私は…話したいわけじゃないし」



ふいと視線を外す。その反応が面白くなかったのか、彰は百合との距離をわざと縮める。



「ち、近い!」


「何怒ってるの?」



言葉など無視で更に彼は百合に近付く。百合の視界には友達と先生達が見える。と、いうことはあちら側もここは容易に見える位置なのだ。

こんな所を見られたらと考えると、百合は焦って叫ぶ。



「や、離れて」


「言ってくれなきゃ離れない」



じっと瞬きもしないで見つめられ、百合の体温は更に上昇する。こんな状況なのに心の奥底では嬉しがっている自分がいた。先ほど話せなかったのも関係しているが、百合は次第に自分の気持ちを把握しつつある。



「そ、そういうことは栗田先生とやって!」



必死になって出した言葉はそれで、これでは本心を言ったのと同じだ。しまったと思った時にはもう遅く、彰は身を引いて、抑揚ない声で言った。



「ふーん、栗田先生に迫っていいの?」


「ダメに決まってんだろ!」


「なら、最初からそう言おうね」



結局最後はハメられて、百合は苦い表情を再び作る。

にこにことご機嫌な彼に百合はムッとしてその顔をつねった。



「いててて」


「天罰!」



怒って立ち上がり、彼女は皆がいる方に歩き出した。早くこの場から離れたかったのだ。近くで話をしたいと思ったにも関らず、いざその場面になると、不安と照れで思うように顔が見れない。





「その水着似合ってるよ」





百合をわざわざ追い越していく彰。その擦れ違い様に呟かれた。

その背中を思わず見つめながらゆっくりと速度を落として二人の所に歩いた。百合の姿に気付いた二人はすごく驚いたように彼女の顔を覗いた。



「百合ちゃん?」


「顔赤いよ?」






いつも、狂わされる。







えっと、完全にギャグが姿を消していますね(笑)

すみません。とうぶんこんな調子で、もう一度復活するときはありますが、すぐにまた姿を消してしまいます。いきなりギャグは照れ屋に変身してしまったのです。

なぁんてね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>恋愛シリアス部門>「ふたつのピース」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ