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約束とお仕置

彰は今急いでいた。

飲み会の話を必死に断り、走って自分の家に向かう。



多分待ってるよな?



次第に見えてくる自分のアパートに目を凝らすとやはり電気がついていた。

来てくれていることに安心して少しだけ速さを緩める。






「考えてみれば、何でこいつの家に来なきゃいけないんだ?」



いや、あいつに教師と生徒の関係より上になりたいって言ったのは俺だけど。



そんなことを悶々と考えて百合はソファに腰掛ける。瞬間、ある香りが広がる。時に、感じたあの香り。今は傍にいないある人と同じ。

自分の部屋とは違う、安心するというより、逆に落ち着かないその香り。

百合は無意識に鼻をソファに押し付ける。



………抱き締められてるみたい。



がちゃ



「ごめん! 遅れたね!」



突然戻ってきた彰に驚いて顔をソファから離す。悪いことはしていないが、知られると恥ずかしい。

気付かれていないかすごく不安だったが、彰はそんなことよりも他の異変に気付いて首を傾げた。



「ってあれ?」



リビングに入った途端足を止める。朝この部屋を出た時と明らかに部屋の状態が違うからだ。



「もしかして、片付けた?」


「うん。暇だったから」



よく見てみれば片付いてるだけではなく、テーブルに料理まで用意されている。



「えっ! もしかして…」



彰は他の部屋も見て回る。どこも同じように綺麗にされていた。ベットの上にはちょこんと今日の洗濯物が綺麗にたたまれていた。



「〜〜〜ま、まさかたたんだ?」


「当たり前じゃん」


「きゃぁ! えっちぃ!」



ふざける彰を容赦なく一発パンチを入れて黙らせた。倒れた彰を引きずり、リビングに戻る。



「合鍵を渡したってことはいつでも家に入ってどこにいてもいいってことだろ? なら、ぐだぐだ言うな!」



椅子に座らせて百合は自分も向かいに座る。彰が帰る少し前にできた料理はかろうじてまだ温かい。



「食べよ?」


「あ、はい。いただきます」



あまり食材がなかったのに。



残っていた食材で作られたとは思えない美味しそうな料理に彰は口をつけた。時間が遅かったため、お腹は既に空の状態。そのため、この料理は本当に嬉しかった。



「うん、美味いよ。何て言うか…平凡な味」


「黙って食え!」



顔を少し赤く染めて、百合は食べる。確かに工夫のない平凡な味付けだ。



「なぁ、どうしてここに来なきゃいけないんだ?」


「だから、言ったでしょ? 俺が会いたいからって」


「だけど、生徒が教師の家行ってたら問題だろ」



もごもごと小さく呟く。彰は心配していることに微笑んで箸を置いた。



「だから百合は私服で来たんだ。偉い偉い」


「な、何か馬鹿してねぇか?」


「してないよ。それにこういったことを望んだのは、百合でしょ?」



いつの間にか百合のすぐ横に歩いてきた彼に彼女は何も言い返せない。



「俺は………別に」


「はい、お仕置き」



反論しようとした彼女を抱き締めて、彰は耳に息を吹き掛ける。

案の定、彼女は甲高い悲鳴を上げて身をよじる。



「ちょ、な、」


「俺って言ったから罰ゲーム。あと言葉遣いも可愛くない」


「はぁ? ば…、や…」



耳以外にも脇腹をくすぐられ、百合はジタバタともがく。

力の限り彰を押し返すが、微動だにしない。



「はい、自分のことは?」


「わ、わたし!」



叫べばやっと彰は彼女を解放した。もがいたせいか、百合の顔は真っ赤だ。



「ば、ばか!」


「約束やぶるからいけないんだよ。それとも俺が約束やぶっていいの?」


「だめ!」



間髪入れずに百合は言う。情けなく彰を見つめると彼は笑った。



「冗談だよ。可愛いなぁ百合は」


「………もう」



咄嗟に身体を後ろに寄せて彰から距離を取ろうとする百合。

だけど、未だに彼は手だけは離さない。



どうして?






触れている場所が…熱い。







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