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夏休みと訪問

二年に上がって、初めて迎える夏休み。



「なのにどうしてそんなに不満そうなの?」



みりに不思議そうに聞かれて百合は困った。何が嫌なのか、理由ははっきりしているがそれを言葉にしてはいけないのだ。



「馬鹿、百合ちゃんは淋しいんだよ! 財津先生に会えないのが」


「あ、なるほど」



何も肯定していないはずなのに、それは既に公認され、納得された。



確かに、それはあるけど。

問題はそれじゃなくて…。



ちらりと教卓にいる彰を盗み見る。すると彼はその視線に気付いてウィンクを投げてきた。



さむっ!



額を押さえて溜め息をついた。



「じゃぁ、夏休みも遊ぼうね!」


「百合ちゃんもメールちょうだいよ!」


「うん、またね」



学校から出て、二人と別れる。終業式のため、まだ時間は昼前。

明るいこの時間に帰るのは少しもったいなくて、百合は一人喫茶店へと入って行った。



「ランチを」


「ランチを一つですね。少々お待ち下さい」



喫茶店であってもやはり昼時は混む。角の席で外の何気ない風景を眺めて、この前のことを思い出した。






「にしても、百合って結構可愛い性格してるんだね」



思いがけない言葉を言われて百合は目を丸くした。

首を傾げると幾分か意地悪な笑みを彰は浮かべて小声で言った。



「素直になると私って言うんだな」


「――――っ!」



瞬時に顔を赤くした。

その顔が面白いのか彰は笑みを深める。



「あれは、ちが……その」


「そうだなぁ、百合が俺と二人っきりの時ではその喋り方なら避けないであげるよ」


「えっ! ちょ、無理」


「無理とは言わせない」



直すと言ってしまった以上、彼女には拒否権はない。

泣く泣く了承し、家に向かう。



大丈夫。もうすぐ夏休みだから会うことも少ないし。

その間に練習を………。



「あ、これ持ってて」


「?」



家の前まで来た時彰はポケットから何かを取り出して百合に渡す。街灯で照らされたそれは見るからに家の鍵。



「週に一度は俺の家に顔出してね」


「な、何で!」


「会いたいから」


「〜〜〜〜っ」



すっかり彰のペースに飲まれ、百合は仕方なくその鍵を握り締めた。






そうだよ!

行かなきゃじゃん!



「しかも初日は今日だし」



がっくりと肩を落として悩む。週に一度は彰の前で話さなければならない。

それはかなり緊張することで、失敗もできない。



「お待たせしました。ランチになります」



前に置かれたご飯をとりあえずは食べようとフォークを握る。



もうこの際どうにでもなれだ!



諦めが早かった。






ピンポーン



合鍵を渡されたとしても勝手に入る訳にはいかない。一応インターフォンを押して待つ。

しかし、誰も出て来る気配はない。おそらくまだ学校から戻っていないのだろう。

仕方なく鍵を取り出して恐る恐る中に入った。

一人暮らしのアパートにしては広く、おそらく2LDKもあるだろう。

入っていくと十帖ほどあるリビングに出た。



「思ったよりも片付いてる」



でも、これは。



見る限りそこまで汚くはない部屋だが、棚や部屋の隅には適当に小物が積み重なっている。

おそらく、彼なりの片付けなのだろう。



「………」



勝手にやっても、怒んないよな…。



彼女は声を出して気合いを入れて、腕まくりをした。







第二部、ついに始まりました。やっと恋愛重視で行けます!

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